車検で食っていけ

自動車整備故障診断整備のススメ

せいび界2014年11月号

車検無しでどうやってくっていくのか?

自動車整備工場にとって『車検』というのは生命線と言われ続けている。初回を除いて毎年ないし2年に1回必ずやってくる、いわば法に守られているビジネスであるからだ。しかし、今やライバルがひしめいており、消耗戦になりつつある車検ビジネスに飛び込むのではなく、今こそ、メンテンスで生きていかなくてはいけないのではないだろうか?

メンテナンス自体が高度化しており、コンピューター制御、CANシステムなど、非常に難易度が高い作業が求められている。そういった場合に必要なのがスキャンツール、というのは最早、本連載では嫌というほど書いてきた。
しかし、ここで立ち戻って欲しいのが理屈や仕組みの部分である。実はコンピューター制御になって『難しい』と感じるその殆どがスキャンツールのことを理解していないからであり、知らないから、難しいと感じているのだ。確かに知らないものは難しい、しかし、知ってしまえばこれほど心強い味方はいないと、活用している工場はみな声を揃える。

スキャンツールをうまく活用すれば日常的な点検から修理、ユーザーへの提案にも裏付けが出来るのだ。実際は約63%の自動車整備工場が車検を軸にした経営から脱出したいという声が自動車整備白書にも出ている。

スキャンツールをうまく活用することがメンテンスの幅を広げ、車検収益以外で自動車整備工場に還元することが出来る。スキャンツールを使いきるためにも必要になるのが自動車整備の基本である。

整備の基本を今一度考える

スキャンツールは故障診断が出来るだけであって、修理をするのは自動車整備士である。以前にも例として挙げたがチェックランプが点灯して、スキャンツールを繋いだ結果、O2センサー断線でO2センサーを交換するというケースが多いと思うが、O2センサーの信号をチェックするというメカニックは非常に少ない。10年ぐらい前の車ではO2センサーが信号を出さなくてもエラーは入力されず、信号をチェックしなければ良否判断は出来ない。ということはどんなに高価で高性能なスキャンツール持っていても、使う側がこのことを理解していなければ宝の持ち腐れになるのである。前回までは理論空燃比についてであったが、今回は燃焼のメインであるプラグを例に挙げてみようと思う。

スパークプラグについて考える

スパークプラグの不具合というものに直面したメカニックは少なくないと思う。プラグは消耗品であり、随時交換が必要だ。ところで、中心電極と接地電極、どちらから火花が出ているかはご存知だろうか?
中心電極から接地電極に飛んでいると思っている方が殆どであろう。実はその逆で接地電極から中心電極に飛んでいるのである。その証拠に摩耗するのは中心電極である。

たとえば適当にプラグを取り付けたら効率も悪くなるし、燃焼効率も下がる。もちろん燃費も下がるので、プラグひとつにしても十分な点検が必要であることが分かる。長寿命プラグや長寿命エンジンオイルなど、消耗品の寿命が長くなっている。いいことではあるが、エンジンに於けるダメージ蓄積は決して侮ることは出来ない。プラグの点検で1本500円~ 3,000円強のプラグが存在するので、状態の確認で整備売上のアップも考えられる。お客さまへの説明で高価なプラグが販売できるチャンスを逃しているかもしれない。

話を戻すが、プラグに不具合が出ていた場合、スキャンツールではどのような故障コードが出るだろうか?実は失火とイグニッションコイルの不具合でしか故障コードを拾わないのだ。つまり、少し乱暴に言えば、車の調子が悪い時にプラグを見るという行為に至らなければ、電極の状態は分からない。ふた昔前の車ならまず、プラグを見てギャップを見てなどと、ローカルな整備手順であったかもしれないが、現在は違う。

プラグの火花が飛んでいるかをプラグコードに刺した状態でフレームに接地電極を付けて火花が飛んでいるかチェックした経験が筆者にもあるが、あまり意味の無い点検である。エンジン内と気圧が全く違うので、火花が飛んで当たり前だ。

確かに火花が飛ばなければ、他に原因があるので一概に意味が無いとはいえないが、実際はそれで点火系の点検を終わらせてしまった。ここ最近の車であればなおさらである。本来であればスキャンツール同様にオシロスコープを使って点火指示信号・点火確定信号を拾わないと正確性が期せない。車の信号は、1,000分の1の世界で行き来しているので、ハンドツール程度では正確な数字や症状などは確認できない。

原因を考える

なぜそうなる、なぜ故障するという根本的な部分に焦点を当てなければ、自動車整備ではなく修理になってしまう。本物のメカニックとは故障が起きないように、お客さまの車をマネージメントできる人材でなければならない。

そこで自動車整備の根本にある、自動車整備知識を向上させるのに『ボッシュ自動車ハンドブック』が最適である。自動車の基本理論から部品の理屈まで幅広く掲載されており、自動車整備士必携の書籍だ。自動車を構成する部品はサイズ差があったとしても約1,000点あと言われている。機能部品なら構造理解しなければ整備は出来ないが昨の自動車は、スキャンツールを繋げばる程度の故障箇所は診断が可能だ。

しかし、スキャンツールを使いこなすために整備の基本を知っていなければ、お客さまに納得してもらえないのではいだろうか。「○○が壊れていたのでしました」と言われても今やユーザーインターネットなどを使って賢くないるため、生半可な説明では逆に付込まれてしまうことも。はっきり言しまえば人の弱みに付け込んだ商売いうのは出来なくなっている。

自動車整備士の中には口下手な人もいるが1から10まで全部を説明できるが理想である。もちろん全てをお客に説明する必要は無いかもしれない理屈が分かって整備をするのと、た単に交換するのとでは、どちらが優なメカニックといえるだろうか。今一ご自身の知識と向き合っていただき化する自動車整備に対応していただればと思う。

監 修:ボッシュ株式会社 長土居大介

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