自動車整備故障診断整備のススメ
せいび界2015年1月号
今年はスキャンツールを使いこなす!
新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。さて、今年もスキャンツールや故障診断について深掘りしていければと考えている本連載ですが、新年にあたり、今後の自動車整備について考え、今一度スキャンツールの有用性を紐解いてみようと思います。
最新のクルマ事情
最近のクルマと聞いて思い浮かべるのは、やはりハイブリッド車や電気自動車、クリーンディーゼル車、多岐に渡ります。このほど、トヨタから販売することとなったミライは水素自動車です。最新の技術から設計思考、そして先端技術を惜しみなく投入された、未来を見据えたクルマです。今後の主流となるであろう車は、燃費も良く環境にやさしい、そして自動ブレーキや安全性にも特化したハイテク装備が満載です。同じようにオイルやタイヤ、ブレーキパットなど長寿命で高性能な消耗品も多く、技術革新のスピードは速くなっています。
最新技術の根底にあるもの
では、その技術革新の根底にあるものは何でしょうか? 進み過ぎた科学は魔法と変わらないなどと昔のSF作家は言いましたが、まさに魔法のような技術、コンピューター技術の進化こそが根底にあり、それらの進化が現在の社会を構成しているといっても過言ではありません。スマートフォンしかり、家電はもちろんクルマもしかりで、アナログからデジタルに進化しています。そしてそれらはコンピューターで制御されており、いまやコンピューターに支えられている社会と言ってもいいと思います。
この技術の革新は今後も続くことが容易に予想されます。クルマ以外であったとしても更なる進化が見込まれます。FCVが標準のものとなる、レシプロエンジンが無くなる、人間の想像力に限りが無い以上は進化を続けます。
自動車整備についてもコンピューター制御は避けて通れません。エンジンに始まりABS、エアバッグ、ミッションやエアコンなどは全てコンピューターで制御されています。ではそのコンピューターをどうやって管理するか? コンピューターはコンピューターとしか会話が出来ません。もうお分かりですね、つまり、スキャンツールがないと高度化した整備事情に対応できないまま淘汰されてしまうのです。
新年早々危機感を持っていただき、長年培ってきた技術や経験、勘も大切ですが、コンピューター診断の勉強も今年はチャレンジしていただきたいと思います。
より深みを得るために資格の取得や勉強、そしてスキャンツールの導入を
8月号に掲載した北海道のメカニック(スキャンツールを使いこなす)や55歳で1級整備士資格を取得するなど、日本のメカニックの中には様々な方がいらっしゃいます。彼らに共通することはメカニックという仕事に誇りを持ち、生き残る道を見出しているということです。
メカニックとして生き残る道はやはり先端技術を使い切る点にあります。コンピューター診断、電子制御と聞くだけ尻込みなどせず、難しく考えずにチャレンジ精神を持って臨んでいただきたいと思います。1級を取れとは言いませんが、まず、スキャンツールを持っていない工場はスキャンツールを導入してください。コードリーダーは不可です。きちんとしたスキャンツールにしましょう。
スキャンツールを持っている工場は故障コードの呼び出しと消去だけではなく、色々な使い方にチャレンジしてください。(数値を見て想像力を働かせる)
様々な車両に接続して実測値、ライブデータで状況を確認してみてください。取り急ぎはO2センサーなどを見てみるのもいいと思います。今のうちに慣れておかなくては、先述の通り今後の整備需要に耐えられなくなってしまいます。
調子が良いからこそ診断する
スキャンツールを使う時はどんな時になるのでしょうか? よく、ランプが点灯した時、調子が悪い時にだけ繋ぐという話を聞きますが、実際は入庫=診断というぐらいのスパンで行うべきだと一部のメーカーは言います。一番いいのは調子が良い状態を見ることです。人間でも健康な状態を把握しておくことがバロメーターになり、それが平均値になります。良い状態が分かっていて、そこからどのように悪くなっているのかが見えてくる筈です。
丁度、筆者もこの原稿を書いている時に、左の背中に痛みを感じました。
普通は感じない痛みです。平均値からずれており、体に異常があるから、信号が左の背中の痛みとして現れました。症状としては肋間神経痛でした。医者に行き鎮痛剤を貰いました。「ひどくなる前の前兆があったでしょう!」と医者に怒られました。
残念ながら人間にはOBD2は付いていませんが、車にはあります。状態が良い時こそ繋いで知ることが必要です。これが故障診断というものです。そのためのスキャンツールです。人体よりもクルマは複雑ではありません。OBDを繋ぎ予防することで事故や故障を未然に防げます。
トルクレンチと一緒
整備をする際に必要になるトルクレンチですが、これは工具ではありません。
正確には計測器です。規定のトルクで締めているかを確認するための計測器であり、それをメカニックは工具として使っているだけです。スキャンツールも同じです。故障の元を直すのはメカニックです。故障の原因を診断するのがスキャンツールの役目です。
診断なくして整備無し
『故障の原因探求には必ず勘が必である。この勘というのは理論的にづけされた想像力である。想像は誰でも出来る。これに理論的な裏づけつけるとなるとそのシステムを理解数値で判断する必要がある』
このような言葉を残したメカニックいました。電子制御であろうが機械御であろうが、アナログであろうが、ジタルであろうが上記の言葉は共通あるといえます。勘だけでも駄目、勘無ければ無駄がある、裏づけが無はどちらも破綻してしまいます。センーの作動を数値で表す作業が計測作であり、この作業なくしてエレクトロクス装置の判断はありえません。つスキャンツールを使わずにエレクトロクス装置の診断はありえないのです。
昨今のクルマはどんなクルマです機械と電子制御の塊ですよね? どうて整備をするのですか? 整備をするに必要なのはスキャンツールですよ是非、今年はスキャンツールを導活用して、今後の生き残り対策としてれていただきたいと切に願います。
監 修:ボッシュ株式会社 長土居大介