故障診断整備のススメ

スキャンツール診断結果の活用方法

自動車整備工場における故障診断整備のススメ

診断結果の活用法について考える

「故障診断整備のススメ」を毎月欠かさずチェックしている読者なら積極的にスキャンツールを活用していると思います。しかし、ほとんどのメカニックは故障コードの呼び出しと消去のみを使っているのではないでしょうか? スキャンツールは車両の故障箇所を探る為になくてはならないものになってきている中で、上記の使い方だけでは使いきっているとはいえません。

スキャンツールの機能

最近のスキャンツールには様々な機能が追加されています。

① 故障コードの呼び出し
② 故障箇所の推測
③ 他の箇所との関連性
④ アクティブテストや実測値での確認作業
⑤ 基準値と比較するための測定作業

こういった流れで修理を進めていくのがスキャンツールの使い方としてスタンダードな使い方です。特に各メーカーが謳っている追加機能を是非活用して頂きたいのです。これは診断結果のカルテのようなものです。メーカーにより名称は様々ですが、お客さま対応時における重要な役割を持ってきます。健康診断さながらに車両の診断結果を印刷してユーザーにアピール出来る点はとても分かり易く、説得力があります。

スキャンツールの存在は最早、なくてはならないものです。その中で、単純な作業だけではなく、一手間加えた作業をすることで、自社の信頼度を上げていくことが出来ると言えます。手間を惜しむばかりでは、顧客との繋がりは軽薄になってしまいます。実装された機能を使いきってこそ、真のメカニックと言えるのです。

最新車両の入庫状況は?

一般ユーザーに対してスキャンツールや先進的な工具を見せても使い方は分からないと思います。なぜならドライバーとレンチ、原始的な整備工具で車両を整備していると思っているユーザーがいまだに多いからです。私が見る限り、新しい車やハイブリッドカーが入庫しない理由はここにもあると考えています。ディーラーの設備同等とまでは言わないにしても、それに見合う、遜色のない装備を駆使しているイメージを持たせることも必要なのです。然るにハイブリッドカーのメカニズムが分からなければ、触るのも躊躇する十分な理由になってしまいます。自社の入庫状況を見てハイブリッドカーの入庫状況を見てみれば食わず嫌いしているのか分かる筈です。
仮にハイブリッドカーが入庫していなかったとしてもこれから勉強していけば、よいだけのことです。

技術的な勉強も大事だが…

まず、基本的な使い方以前の問題が一つあります。それはユーザーから信頼されること、これを考えていかなくてはなりません。ユーザーの視点になってみれば分かると思いますが、プリウス、アクアなどにみるハイブリッドカーのユーザーはハイブリッドシステムや制御、構造などはほとんど知りません。しかし、自分の車は最先端の技術が使われていて、環境にも寄与している自負はあるのです。最先端の技術=メーカーの技術の結晶という方程式が成り立つことが分かると思います。
メーカーの技術の結晶ということは「ハイブリッドカー=町工場では直せない」という思考に結びつきはしないでしょうか?

これは仮定の話ですが、大多数のユーザーが新車を手に入れるのはディーラーが多いはず。特にハイブリッドカーとなると尚更です。更にプリウスのディーラー回帰率は90%を超えます。このような状況を打破するには地道に信頼を上げてゆくしかありません。当たり前のようにハイブリッドカーを扱っているアピールも必要であり、新車販売とまでは行かなくとも、車検の受注を取るまでは持っていきたいところです。

信頼関係の架け橋に診断結果

ユーザーとの信頼関係は確かな技術や対応といった点に集約されます。少なくともニーズがあって自社へ来店されているのは間違いありません。何も用がないのに来店して頂けるというのは、素晴らしい信頼関係が構築されている証拠です。

常連さんであればよいのですが、一見さんなどは信頼関係を構築するのに時間がかかります。好印象を与えるべく診断結果を渡すのはいかがでしょうか?

新規のユーザーは「この会社大丈夫かな?」と口に出さなくとも自社を査定しています。そんな査定に対してしっかりと対応するのに診断結果を活用して頂きたいのです。出来ればスキャンツールを車に繋げて作業を見せるようにするのもよいでしょう。

見せて、教えて、理解させる

診断結果を見てもユーザーは何がなんだか分からないと思います。しかし、そこからがメカニックの腕の見せ所です。難しい単語でまくし立てて、有無をいわせないで入庫に繋ぐのは大昔のやり方です。現代はスマートに分かり易く噛み砕いて説明しなくてはいけません。安心させるためにもコンピューターを利用している旨を伝え、診断結果を見せて、正常な状態と現在の状態との差を見せることが肝要です。以前にも紹介しましたが、正常な状態を知るためにも入庫の際に、必ずスキャンツールを繋ぐ習慣をつける必要もあります。

勘や経験ではなく、コンピューターで診断しているというのは、大きな説得力になります。車の異常を体の異常に置き換えるのが分かり易いかもしれません。

スキャンツールレポート

スキャンツールを沢山使う

使えば使うほど分かってくるのが道具というものです。初めて手にしたスマートフォンは使いこなせていなかったかも知れませんが、最近はどうでしょうか? 結構使えていませんか? スキャンツールもそんなものです。そして使えば使うほど、簡易的なものではダメだということに気づくと思います。

安価なもので満足しているということは高度な仕事をしていないことの現れでもあります。ランプを消せればよい、という考え方を捨てて下さい。車検の際は必ずスキャンツールで総合診断をして、結果を紙に出してユーザーに説明することを実施して頂きたい。次の車検の入庫率が変わってきます。それこそが生き残る第一歩といえます!

監 修:ボッシュ株式会社 長土居大介

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