自動車整備工場における故障診断整備のススメ
自動車電気の基本④
回路を見分けてピンポイントで攻略する
配線図を理解する
ここ4ヶ月ほど電気周りに関する事例を取り上げてきた。先月の最後で読者の皆様に出題した問題を覚えているだろうか。「エンジン関連の配線図よりエアマスセンサーの故障コードを呼び出し、供給電圧、信号電圧を何番で測定すればよいか。また、信号はECUの何番に入力されているか」という問題であった(右ページ画像参照)。画像上にある30番の配線は常時、+12V、15番はイグニッションONで、+12V、一番下の31番はアースとなる。
さて、エアマスセンサーの場所だが、右下の回路名称を確認すれば、B8.2がエアマスメーターであり、真中にあるA1.1がエンジンコントロールユニットということが分かると思う。問題の供給電圧は何番に入力されているか、信号電圧はエアマス側の何番からECUの何番に入力されているかを確認することになる。まず、供給電圧はK1.1がメインリレーであることからエアマスの1番端子に+が入力されていて、B4.4クランク角センサー・B4.7カム角センサーを共用している。同時に-はECUの27番からエアマスの2番に入っている。よってマルチメーターを使って1番と2番の電圧が12VであればOKである。
次に信号電圧だが、エアマスの3番とECUの26番であり、よってECU側の26・27番で測定すれば、信号と回路を同時に点検出来る。基準値が必要)ちなみにB3.1は吸気温センサーなので、4番と5番は関係なし。
<読者からの回答>
① B8.2中で、供給電圧がエアマスメーターの1とアース2間で測定。信号電圧は3と2の間で測定。信号はECUの26番に入力される(岐阜県整備工場・栃木県整備工場・北海道部品商・茨城県整備工場など回答)。
② エアマス(B8.2)内のセンサー4番が25番に伸びているので、25番と直ぐ横の27番の入力を確認する(島根県整備工場)。
大体がこのような回答が多かった。①番の方は見事正解である。皆さんの回答は如何だっただろうか?
暗記は必要ないが、慣れは必要である
何処に何があるかが分かれば、自ずと回答は見えてくると思う。タネ明かしをしてしまえば簡単なのである。配線図の全ての番号や記号を理解する必要はない。必要に応じて配線図を開く癖を付ければよい。国産車の配線図は名称が配線図に明記されている。分かり易いかも知れないが、見にくい欠点もある。
FAINESなどで国産車の配線図を見てみれば分かると思う。欧州車のように、必要な情報のみが掲載されている方が分かり易いこともあるので、見比べてみていただきたい。トヨタなどはコンピューターの端子図についても非常に分かり易く、ワイヤーカラーコードについて国産車用の多くはカラーで印刷すれば分かるようになっている。右ページにある略語や端子コードなども回路図を見慣れれば自ずと覚えてくるだろう。
苦手意識を克服して入庫に繋げる
さて4回に亘って電気知識について解説してきたが、理論上言っていることは理解できたと思う。今回の問題に関しても、少し考えれば直ぐに分かることだと思う。回路を見分けて、ピンポイントで点検すれば原因究明も簡単になる。
プロメカニックとして、正確な診断をして分かりやすくユーザーに説明し、更なる入庫に繋げていただきたい。