Q,事業承継について教えて!
当社ではあと5 年後くらいを目途に事業承継を考えています。最近、相続税のルールが変わると聞いた
のですが、何か注意した方がよいことはありますか?
A、今回(2015 年以降)の税制改正はとても大きな変化です。手続きを行う税理士業界では「相続バブル」がくるぞと期待されています。以下の説明によって確認してください。
ひとくちに事業承継といっても経営の承継と事業資産の承継と二つに分かれています。
(Ⅰ)経営の承継
経営の全般のノウハウ、組織、取引先、顧客、財務上のポイント、負債
(Ⅱ)事業資産の承継
自社の株式、社長が会社に貸している敷地、会社への貸付
*これ以外に自宅、有価証券、第三者へ貸している土地などの個人資産もあります。
ご質問の内容はこのうち(Ⅱ)事業資産の承継に深く関わってきます。被相続人(亡くなる側)の財産評価額に対し税金がかかり、実際に支払うのは相続人(受け継ぐ側)です。
今回の相続税改正は「財産評価額の算定方法が有利」になったのと「基礎控除の40%減額という不利」になるものと二つの側面を持ちます。
(イ) 算定方法は減税 「小規模宅地などの特例」が緩和
A: 自宅の敷地の評価( 上限330 ㎡ 約100 坪)=路線価×面積 ×20%(80%減)
B: 商売用の土地 ( 上限400 ㎡ 約120 坪)=路線価×面積 ×20%(80%減)
これまではA かB の片方しか選択できなかったのですが、両方を選択できるようになります。これにより財産評価額全体における土地部分の評価は幾分下がるでしょう。
*A の評価は2014 年12 月31 日までは上限240 ㎡
(ロ) 基礎控除の減額は増税
現 状 基礎控除5,000 万円+(相続人ひとりあたり1000 万× 人数)
2015 年 基礎控除3,000 万円+(相続人ひとりあたり600 万× 人数)
結局どちらの効果が大きいのかということになりますが、一般にこれまで相続税とは無縁だと考えていた人も対象となりそうです。その数はこれまでの1.5 倍から2 倍と予想されています。いずれにせよ、財産評価額がどれくらいになるかは事業用資産の棚卸し作業から始めなくてはなりません。早い段階での専門家のアドバイスを求めた方がよいでしょう。
原田 博実(はらだ ひろみ)株式会社エフアンドエム
取締役 (JASDAQ4771)
MBA 経営学修士/関西学院大学大学院 経営戦略研究科 修了
関西学院大学特定プロジェクトビジネスマイニングセンター
客員研究員(2007 年~ 2011 年)
主な著書 「スバルだより」(富士重工/ 2011 年より連載)
「整備戦略 経営特集号」(日刊自動車新聞社)
「財務諸表” 寝かせ読み” 速読法」(アスキー新書/ 2010 年)
「“クルマ屋” 経営塾」(日刊自動車新聞社/ 2011 年)