K 社は2代目(息子)が主導で事業継承の準備を行い、さらに事業継承後、着実に業績を伸ばされた会社である。前ページまでは事業継承までのステップをお伝えしたが、継承後のポイントについてお伝えしたい。
後継者は自身の番頭づくりが最も重要
K 社の後継者は自社の社長に就任する際に親族(弟・従兄弟)に各部門のトップを任せている。当時のことを2 代目は、「創業者(先代)と違って、自分はスーパーマンではない。販売・整備・鈑金それぞれでトップを張れる力はないから、親族(番頭)に現場を任せることで、自分自身の力不足分を補ったことで上手くバランスが取れた」と言う。
近親者でなければならないことではないが、安心して任せられる人(部署)があるだけでも、新米経営者としての安心感は違うのだという。
古参社員とは決して争わずに巻き込むことを意識する
K 社の後継者は社長就任後、多くの会社で起きる、新社長と古参社員(先代の番頭たち)との争いを生まないことも意識していた。当然、(前号記述の通り)継承前から味方になってもらう関係作りをしていたからもあるが、社長に就任したからといって創業社長のように、完全なトップダウンでは、上手くいかない。後継者は自身が考える施策の理由を明確にしていなければならない。そしてその理由・計画を納得してもらうことが必要だという。納得をしてもらえるまで、情報を与え続け、必要であれば一緒に外部セミナーや勉強会にも参加してもらっていた。そして、納得してもらい、「やる」と決まったら全員で動けるように協力してもらっていた。当然、全員が必ず味方になるわけではないが、後継者こそ継承後しばらくは忍耐が必要であり、成長させてくれるいい時期だという。
継承後の先代の役目は会社と社長の監督役
K 社の先代は、事業継承後、外部の活動などは全くしなかったため、毎日のように出社していた。そこで、後継者は先代に現場を見て回ってもらい、そこで気づいたことを報告、アドバイスしてもらっていた。その際のルールは、「どのような意見であっても絶対に現場に直接言わず、社長(後継者)に伝えてもらうこと」だそうだ。そして、そのアドバイスを参考にしながら経営するも、現場には後継者が経営者になっているという印象を与えていた。これは先代にも意識が必要なことであり、協力してもらわなければ上手くいかないだろう。
後継者はどのようなことでも、成果を出さなければならない
K 社が事業継承後、後継者が初めに出した成果は「新卒採用」である。それまでは、ハローワークから数名採用できれば良い方だったものを、多少投資がかかっても説明会に100人規模の集客をし、30 名以上面接をする実績を作った。その新卒採用の仕組みも成果の一つである。先代のカリスマ性を持っても、仕組み化は難しい。だからこそ採用を仕組み化したことで、即時業績に直結するものではないが、社長として認められるきっかけになったという。成果の中身は何でも、会社にとって良いことであれば、仕組み化も立派な成果だろ
う。
次ページは、K 社の事業継承を成功に導くために後継者が意識してきたポイントをお伝えする。