事業継承を成功させている企業の施策について、前ページは「新卒採用」についてお伝えしたが、今回は事業継承が成功している企業が実践しているもう一つの施策「評価制度」についてお伝えしたい。
二代目(後継者)と創業者(先代)は違う
社員30 名以上の企業で事業継承が成功している企業のほとんどが評価制度を導入している。採用も二代目中心にするべきと前回お伝えしているが、評価制度に関しても同じく、二代目が中心に作るべきである。
創業者は従来の自動車販売・整備業によくある「社長の一存(えんぴつ舐め)評価」でも問題が起きづらい。
理由は創業オーナーという圧倒的なカリスマ性が発生し、社員に納得されているからである。想いと行動スピードが早い創業者には評価の仕組みが必要ないとも言える。
しかし、後継者はそうもいかない。それは親族でも他人でも後継者には絶対的に納得してもらえる材料が無いからである。どんなにトップ営業や技術者でも心からベテラン社員に納得されないのである。社員との関係性ではスタートラインが違うということをご理解頂かなければならない。
創業者の想いを知り、肯定することが二代目の初めの役割
事業継承のためには、創業者の想い・理念・行動指針などは二代目自信が上手に踏襲しなければならない。しかし、全て文面化していない企業は二代目自身がヒアリングする必要がある。1 対1でそのようなテーマの話をすることは、気持ちの面で難しいとは思うが、「評価制度」のために聞くことでビジネス要素を盛り込んで聞いて頂ければ難しくはないだろう。
しかしこの点が最も事業継承にとって大事なことである。創業者から事業を引き継ぐ時に、すぐに後継者のカラーを出し過ぎてはいけないが、それ以上に創業者の想いや大切にしていることを知らないことは致命傷となりかねない。創業者を知り、肯定することが二代目の第一条件なのである。二代目が最大の理解者となることがスムーズな事業継承へと導くのである。そしてこれが評価の仕組みへとつながるのである。
公平な仕組みをつくることで、二代目のカラーが出せる
評価制度作成は、先代の想いを文面化し、自身の想いも盛り込み作成することで、会社の重要な評価軸が完成する。そして各社で必要な実績やスキルの評価軸も文面化し、それらを元に評価していくのである。それらの指標が社員に共有され、平等に評価されることが理解されれば、「二代目が勝手に給与を決めている」という状況は生まれない。不満が出づらい状況になれば事業の上でも二代目のやり方ややりたいことを少しずつ出しても、社員も理解してくれる。また、評価軸がしっかり作り上げることで、役職者(店長・工場長)の教
育も出来るようになるのである。
採用とともに、二代目はしっかりと評価制度に向き合い、時間をかけつくり上げることが重要である。
次ページもまた、事業継承に関する事例をお伝えしたいと思う。