後継者かく語りき
今から40~50年前の日本のモータリゼーションに合わせて創業した専業整備工場は、そろそろ2代目あるいは3代目にバトンタッチの時期を迎えている。
決して楽ではないこの時代に会社を担っていく後継者は今、何を考え、何を成そうとしているのか?
会社が変わることも不変のニーズを
見出すことも大事
株式会社倉嶋自動車商会 (静岡県焼津市)
漁港で有名な静岡県焼津市は東名高速焼津ICのほど近くに今回おじゃました㈱倉嶋自動車商会(=車検センター静岡 倉嶋伸康社長)はある。
先代社長が昭和22年に自動車整備を本業として創業し、現社長は仕事の幅を広げるため、近くを東名高速が走ることもあってJAFの指定工場となったり、車販に力を入れるべくマツダオートザム焼津をオープンさせるなど、積極的な経営を行っている。
今回お話を伺った、常務取締役の倉嶋雅義さんは3代目に当たる。整備工場一家に生まれながら、大胆にも「今でもクルマがそんなに好きという訳ではない」と言ってしまうところがタダ者ではない。とはいえ、経営者としての視点を持っている点は流石であり、会社の行く末を見据えて既に新規事業をスタートさせている。
「こちらに入社するまで主に鈑金塗装の修行をしてきました。そうした経験を重ねる傍ら、祖父が整備を柱に創業し、父が新しい分野として車販を始めたことを振り返る機会がありました。世の中は変わっていくものなのに、よくも悪くも新しいことにチャレンジしてこなかった会社だと思っていましたが、実は節目節目で新しいことにチャレンジしていたのだということに気づき、自分も何か新しいことに取り組むべきなのではないかと始めたのが鈑金塗装(BS-Techno Yaizu)です。オートザム焼津のリニューアルを機に、工場を併設しました」と変革の第一歩について語る倉嶋常務取締役。単にお客さまのクルマを直すだけでなく、ダメージのある中古車に加修をして販売することも視野に入れている。
倉嶋常務が新しいチャレンジの中でも鈑金塗装を始めたのには、最近のHVやEVなど壊れにくく、整備に高い技術力が求められるクルマが今後普及したとしても、事故は必ず付いて回る=一定の需要は必ずあるという分析が伴ってのことである。
倉嶋常務は間もなく40歳を迎える。そろそろ事業承継の話でも?と話を向けると、「明言された訳ではないですけれども、JCAの勉強会はもちろん、加盟しているアップル車検の会合などにも出席させてもらっています。これも引き継ぎに向けて勉強してこいという表れだと思います。色々な情報を仕入れていますので、そろそろ形にしたいと考えています」と、意気込みは十分だった。
さらなる活躍に期待したい。