全国の有力自動車整備工場が集まり、現在の自動車整備業界の勝ち残り策を研究、発表するMSC経営戦略会議(小川利明議長)は、去る9月3日、4日の2日間、後継者育成を目的とした、第8回後継者を担う会を開催した。初日は㈱エフアンドエムの原田博実取締役を講師に、「後継者育成研修 実践的財務研修カリキュラムPart3」を開催、2日目は会員企業であるケンエイ車輌工業、雲然自動車工場、北多摩自動車協業組合を見学した。
実践的財務研修カリキュラム③
株式会社エフアンドエム
取締役 原田 博実氏
2015年から引き上げになる税金が2つあります。その1つである消費税は2014年、2015 年の二段階で、2015 年から引き上げになるのが相続税です。よく消費税の話はどこでもしていると思いますけれども、意外と盲点なのが相続税です。
納税者が2倍に増えると言われています。
現在は亡くなった方100人に対して、相続税が発生するのは2人、2%と言われています。これが4人に増えるのです。なぜかというと、財産評価額から基礎控除を引いた残りの正味財産額に相続税がかかるのですが、この基礎控除が40%縮小されるからです。基礎控除が減った分、正味財産額が増えるので、税率も高くなるし、税金の総額も増えるのです。
今までは、この基礎控除の中で収まる財産を持っていた人が多かったので、100人中2人だったのが、基礎控除が小さくなることで、基礎控除で収まりきれなくなって税金が増える。その増える方がだいたい2人と見込まれているので、100人中4人になるのです。
相続税は、ほとんどが土地の問題です。
そうすると、土地で何か減税できないかを考えると、相続税は小規模宅地等の特例というものがあります。まず、自宅です。自宅は100 坪(現行は80 坪)までは2割の評価が認められます。例えば1億円の土地でも2,000万円の評価でいいですよという具合です。
もう一つが、社長が個人で持っている会社の敷地です。これも2割の評価が認められているのですが、評価の対象が120坪までとなっています。
会社名義で土地を持っていて、それを仕事に使っていれば、その土地の価格が株価に代えられます。この場合は株価対策に集中できるのですが、そういう整備工場さんは半分もなくて、半分以上の整備工場さんで多いのは土地は個人持ちという所です。
そうすると、例えば市街地で商店をやっている会社に比べて、整備工場さんは広い土地をお持ちな傾向があり、この特例を使ってもほとんど使えません。使ったとしても、超過する分がほとんどです。結果的に、今回の増税の対象になりやすいのです。
相続税は本来、事業承継とは別の話なのですが、事業承継に絡んでくるとごちゃごちゃになります。会社を継いでも、親父さんがご健在なら、相続税は関係ありません。時期が後ろにずれるだけです。
相続は会社に有利になるようにするとしたら10年はかかります。よく言われることに、「相続税はヒットとフォアボールしかない」というものがあります。「ホームランがあったら、それは絶対に脱税だ」とも言われています。だからコツコツ積み上げていくしかないのです。
結局、相続というのは「もらう」ことに当たるので、「もらう」ということは得をするのとイコールなので税金がかかるのです。土地にせよ株式にせよ買う分には税金がかかりません。
しかし、買うにはお金が必要ですので、お金を持っていなければ借りるしかありません。その資金を貸す事業承継ローンも生活金融公庫などにもありますが、ほとんど知られていないので、ほとんど使われていません。