整備工場でエアコンフィルタを販売するときの注意点

今年の春は、花粉症シーズンに加え、大気汚染物質の問題で、エアコンフィルタ交換が増えたという整備工場も多いだろう。
その場合、どのようにお客さまには説明しているだろうか?

テレビなどで“PM2.5”※というワードが一人歩きして、かなり神経質になっているユーザーもいると思うが、必要以上のアナウンスはかえって逆効果になることがある。
例えば、「このフィルタならPM2.5を完全に除去します」といった場合、PM2.5 とは、2.5μm以下の全ての粒子を指すことから、エアコンフィルタでの完璧な除去は困難であり、悪戯に不安を煽る結果になってしまうこともある。

カーエアコンに求められる“快適性” と“安全性”

まず、はっきりさせておきたいのはエアコンの役割には空調性能を最大限に発揮すること(快適性)、またフロントガラスの曇りの除去を行うこと(安全性確保)が求められる。つまり通気性が最も重要になるということだ。そのため、フィルタを装着しても最大限、この通気性を確保しなければならない。その上で、除塵性能を有するため、非常に小さな粒子を除去するにはより細かい目のフィルタが必要となり、目詰まりが起きやすく、通気性が損なわれる。そのため、除塵性能をことさらにうたうフィルタは通気性能に問題がある可能性もある。

通気性能・除塵性能のバランスが重要

最近のエアコンフィルタは、非常に性能が向上しており、花粉やホコリ、アレル物質、ディーゼル粉塵等の侵入を外気から防ぐ。
また、下図のように濾過率60%のエアコンフィルタであれば、カーエアコンを内気循環で約5 分稼働することで2.5μm 粒子(注=PM2.5 ではない)の除去がほぼ可能であるため、そこまで室内環境に神経質になる必要はない。

正しい知識でエアコンフィルタ交換の啓蒙を

ここまで説明した通り、“PM2.5”という言葉に振り回されることなく、きちんとした知識でエアコンの性能維持を目的に、フィルタの定期的な交換は薦めるべきであろう。案外ユーザーの中にはクルマにエアコンフィルタが付いていることすらも知らない人が多いのである。こうしたユーザーに対しては、エアコンフィルタの役割を理解して、車内空気環境の維持に役立つことをきちんと説明し、ユーザーの不安を取り除いた上で、整備工場でもエアコンフィルタの交換につなげてもらいたい。

※PM2.5とは、大気中に浮遊している2.5μm(1μm は1mm の千分の1)以下の小さな粒子のことで、従来から環境基準を定めて対策を進めてきた浮遊粒子状物質(SPM:10μm以下の粒子)よりも小さな粒子。PM2.5は非常に小さいため(髪の毛の太さの1/30 程度)、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸系への影響に加え、循環器系への影響が心配されている(環境省HPより)。

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