フルラインナップ化に頼らなければ
自動車メーカーは生き残れないのか?
ユーザー側としては、好きな車、用途に合った車、勧められた車、予算内の車などと車種を選ぶ際の基準はバラバラだ。
例えば5人家族の場合は必然的に1BOXのファミリーカーや少し窮屈だがセダンといった選択になってくるだろう。もちろん、そんな中で2シーターの車を選択するお父さんはいないと思う(セカンドカーの場合は除くが……)。
私自身、「車が欲しい!」と熱望したことは少ないので、基準とするには足らないが、ユーザーそれぞれが抱える状況によって基準は上記の通り様々であろう。
では供給側、つまり自動車メーカー側はどう考えて現在のラインナップを揃えているのだろうか?同一メーカー、同一車種でもグレードも分かれたりと選びたい放題だ。某社の1BOX 車に至っては同一フレーム、同一外装で顔周りと内装を変えた、というだけで違う名称にしてくる。裏読みすれば、豊富なラインナップが無ければユーザーを呼び込めないとも取れてしまう。これは車販店というよりもメーカー側の問題である。
欧州のメーカーと日本のメーカーの戦略は異なるので、必ずしも某ドイツメーカーの戦略が正しい訳ではないが、両者を比較して考えると非常に分かり安い。
ブランドイメージが崇高だからこそ、ユーザーはそこに惚れ込んで購入する、という傾向にある。それがゆくゆくは信頼となり、実績を積み、現在の地位を確立しているのだろう(しかしながら現在は徐々にフルラインナップ化をしてきているのだが)。
しかるに、現在の日本のメーカーはデザインや安全性、機能などといった小手先の戦略でブランドイメージを下げてしまっていると感じる。一昔前は「このメーカーはOO」、「このメーカーらしいOO」のようなアイデンティティがあったはずだ。だからこそ、「伝統のOO」、「威信を掛けたOO」のようなメーカーのプライドを全面に押し出した車を是非出して欲しいと常に思っている。
ユーザー側が漫然と選ばされるフルラインナップと、ユーザー各々の琴線に触れる、一点買いしたくなる車とは違うと思う。売れる車の方向性が分からないから色々な車を自社ブランドで出してみるというのは、そのブランドを盾に売っているだけであり、その車を売っていることにはならない。
いかにユーザーを飽きさせないかを考えて、1年に何度新車を出して(モデルチェンジをして)、あの手この手で繋ぎとめようとも見えてしまう。これではブランドイメージにブレが生じ、自分で自分の首を絞めてしまっていることになる。
しかし一番の問題はそれに気付かない自動車ユーザーがとても多いことだ。とはいえ、車販店としては自動車を売らなくてはならない、どんなユーザーであろうとも、どんなニーズであろうとも売らなくてはならないのだ。
魅力的な車がないから車離れが起きているのであり、魅力的な業界でないから人員が不足するのである。自動車を売るのに今は良い時代なのだろうか、悪い時代なのだろうか……?