安易に保証人となり、予想外の損失を被ることの無いよう、今回の債権法改正に先立ち平成16年に民法の規定が一部改正されています。この改正で、 ①保証契約は書面で締結しなければ無効とされ、 ②金銭の借入などを主債務とする根保証(保証契約時点でどの債務を保証するのか特定しないタイプの保証)を個人が締結する場合、極度額(保証する上限額)を定めなければ無効になるとされました。今回の債権法改正では、一層の保証人保護が図られています。
公正証書による意思確認
事業のための借入については借入金額が高額となりがちです。保証人の想定を超えた額まで保証債務が膨らんでしまう事態を避けるため、事業のために負担した貸金等の債務について、個人が保証する際には、保証契約の締結前1か月以内に、公証役場において、保証人となる意思を確認するための厳格な手続をとらなければならなくなりました。事業用ではない個人的な借入に際して保証人をつける際にはこのような手続は不要です。
また、事業用の借入であっても、会社の実態をよく知る会社の取締役が保証人となる場合など、「経営者保証」に該当する場合には公正証書は不要です。会社の議決権の過半数を保有する株主、個人事業主の配偶者で現に事業に従事している者等が保証人となる場合も、経営者保証にあたり、公正証書は不要です。
金銭の借入以外の根保証も、極度額の定めが必要に
平成16年の改正で、金銭の借入等を主債務とする根保証について、極度額を定めなければならなくなりましたが、今回の改正では「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」を、個人が締結する場合、極度額を定めなければならなくなりました。家を借りる際に、保証人を要求させるケースがありますが、このような契約についても、今後、(これまでのように)極度額を定めなければ保証契約が無効となります。
情報提供義務
「事業のために負担する債務」を主たる債務とする保証契約を個人が締結する場合、主債務者が保証人に対して、財産及び収支の状況、主債務以外に負担している債務の有無等について情報提供しなければならないとされました。そして、それらの情報提供がなされていないことや、保証人が誤認していることを債権者が知っている場合や知ることができた場合、保証人は保証契約を取り消すことができることになりました。
また、事業上の債務についての保証であるか否かを問わず、保証人から照会があった場合、債権者は、主債務者の債務不履行の有無等について回答しなければならない旨の規定が新設され、さらに、債務者が弁済を怠り、期限の利益を喪失(分割金の支払を滞納したため分割払ではなく、一括請求される)した場合、債権者は2か月以内に保証人にその旨を通知する義務を負い、この通知を怠った場合、債権者は、期限の利益を喪失した日から通知を現にするまでに生じた遅延損害金に係る保証債務の履行を請求することができないとされました。
保証に関する規定は大きく変更されているため、2020年4月以降に保証契約を締結する際には注意が必要です。