自動運転革命 自動運転が業界を変える FILE.04 自動運転は段階的導入で広まる

完全自動運転の導入のために、筆者が必要と考える一つ目の要素は、「完全自動運転技術の段階的導入」である。自動運転と聞いて、一般的に思い浮かべるイメージは、人の代わりに運転してくれるロボットのようなものだろう。あたかもタクシーの運転手に行き先を伝えるように、カーナビゲーションのような行き先指定画面を操作すれば、どこにでも連れて行ってくれるようなイメージではないだろうか。しかしながら、このようなイメージに近い自動運転システムを実現するには、大変厳しいハードルを乗り越えなくてはならない。それは、人間の認識能力を超える必要があるということである。

現在の自動車交通においては、基本的に人間が運転しているわけだが、その事故件数は2017年の国内統計で472,069件存在する。人間の認識能力ですら全国でこれだけの事故が起きてしまうのだ。これが自動運転システムに置き換われば、果たして事故件数はゼロになるのだろうか? 残念ながら、現在の自動運転システムは人間と同様に全国どこでも運転できるような条件においては、人間の認識能力を超えて、事故件数をゼロに近づけるには程遠い状況だ。近年のコンピュータの処理性能の向上やセンサーの高性能化、そして人工知能研究の発展によって、ここ数年で自動運転の認識能力は確実に高くなっている。しかし、人間と同じ条件で、認識能力を超えることはできない。

 

運用条件の限定化で実現へのハードルが下がる
ここで、「人間と同じ条件で」と述べているのは、条件を変えれば、人間よりも認識能力を超えることができる可能性があるためである。すなわち、自動運転は運用条件を限定化することで、実現までのハードルを下げることができるのだ。例えば、日本全国の信号は20万基以上あると言われているが、これらすべてを正しく認識するのは、人間でも見落としや見間違いが発生するような難しい問題である。しかし、例えば走行する範囲を限定化したらどうだろうか?

例えば、地方の駅と病院を結ぶ路線を対象とした自動運転を導入するとして、その間を結ぶ信号は、おそらく数基から十数基だろう。これらだけを正しく認識することは、人間でも日本全国の信号を認識するよりも自信を持てるように、自動運転システムにとっても簡単な問題になる。

つまり、自動運転技術は運用範囲などの条件を限定化して、段階的にその範囲を拡大していくアプローチを取ることで、ずっと導入が現実的になってくるのである。次回も、引き続きこの話題を深掘りしたい。

 

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