質問
求人をかけたところ、能力的に不安を感じる人材しか応募がなかった。とはいえ猫の手も借りたい状況なので一応採用したが、試用期間中の働きぶりで本採用か否かを判断するつもりだ。試用期間中でも解雇は可能なのだろうか?
回答
試用期間とは、その名の通り「お試しの雇用期間」ということで、本採用となる前で、通常の雇用期間とは違ったルールが適用される場合があります。中小企業等では、試用期間と本採用後の給与が異なる場合もあります。そして、世間的には試用期間中であれば、社員の処遇に関して会社が自由な裁量で本採用拒否ができると思われがちですが、思われているほど会社が好き勝手にできるわけではありません。
最近では、「新人を採用したのですが、マナーも悪く、期待したほどではないので、何とかなりませんか?」というようなご相談も多いのです。試用期間中であっても、極端な能力不足や度重なる無断欠勤など、正当事由(理由または原因となっている事実)がなければ解雇することが許されません。
試用期間中は、その「正当事由」の範囲や程度が本採用後より、緩やかに判断されるということです。もちろん、社長の気分や相性で解雇するというのは、試用期間中であっても許されないことです。
なお、試用期間中の解雇に正当事由が存在する場合であっても、会社は雇用開始後14日以降に解雇する場合は本採用後の解雇と同様30日前の解雇予告、または30日分の解雇予告手当を支払わなければなりません。
試用期間中の解雇についての裁判がありますので、みてみましょう。
<まぐまぐ事件>
東京地裁 平成28年9月21日
試用期間中の6 ヵ月、上司の指導や指示に従わず、また取引先に配慮に欠いた言動に取引先は困惑し問題が発生してしまった。独断行動等で、顧客、社内に混乱を生じさてしまったため、上司から再度の指導や指示があったが社員の行動に変化はなかった。やむなく退職勧奨を行い、自宅待機を命じた。会社側は就業規則の条項に基づき、この社員は技能、資質、勤務態度等が(中略)劣り、継続して雇用することが困難であり、また改善の見込みも無いと判断。試用期間中に解雇を行った。しかし解雇に納得がいかない社員は解雇の無効を主張して裁判を起こし、さらに解雇後の未払い賃金104万円等の支払いを求めた。
裁判所の判断
裁判では会社の判断には客観的、合理的理由があり、社会通念上相当と認められるとし、解雇は認められた