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中澤雄仁弁護士の法務相談室 法律が改正されて遺言書が書きやすくなったそうだが、どのように変わったのか?

自筆証書遺言の作成方法に関する民法の改正
相続税の大幅な増税などが契機となり、相続税対策のため、遺言の作成等についての関心が高まっているような印象を受ける。老後や死後に家族に迷惑をかけぬよう、遺言やエンディングノートを作成したり、生前から私物の整理を行ったり、お墓や葬儀の準備をする等の活動について、終活(しゅうかつ)という言葉も生まれ活況である。
自筆証書遺言についての使い勝手の悪さを解消するため、先日(平成30年7月)、遺言書の書き方について定めている民法の一部が改正され、遺言の目録類について自筆以外でもよくなった。

現行の法制度下での遺言
遺言の方式は民法に定められており、方式違反の遺言は無効である。民法には複数の遺言の方式が定められているが、よく利用されるのは自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類である。公正証書遺言は、公証人に作成してもらう遺言である。公証人に文章を作成してもらうため、遺言が無効とされるリスクが少なく、遺言者自身が自ら文章を書かなくてもよい、というメリットがある。反面、公証人に遺言の作成を依頼するための費用(遺産が1億の場合43,000円程度)が掛かり、また、公証人と遺言書作成の日程等を調整し、基本的には公証人役場まで出向く必要がある(追加料金を支払えば公証人に出張してもらうことも可能ではある)ので、手軽に作成できるものではない。

自筆証書遺言は、遺言者が一人で作成でき、作成費用もかからない。もっとも、全文を自筆で記載しなければならず、作成日付を記載し忘れたり、印鑑の押し忘れといった理由で無効となる。全文を自筆で記載しなければならないため、例えば、複数の預貯金や不動産を保有している遺言者が、複数の子に遺産を残す場合、○県○市○○番所在の不動産と○○銀行○支店の口座番号○○の預金を長男に、○県○市△△番所在の不動産は二男に相続させる、というように誰にどの不動産や預貯金を相続させるのか分かるよう、財産を特定する必要があった。財産を特定するための情報を遺言書に正確に手書きしなければならず、体力や判断能力が弱っている遺言者には酷な場合が多かった。

改正の内容
今回の改正の結果、遺言書に添付する「目録」についてはパソコン等で作成しても良くなった。そのため、例えば、遺言の本文では、「別紙目録1の不動産及び別紙目録5~10の預金を長男に相続させる」と手書きし、パソコンで作成した目録に、不動産等を特定するための情報等をまとめて記載する方法もとれるようになった(もっとも、パソコンで作成した目録の全ページに、署名・押印する必要がある)。
遺言者の能力から、これまで「全財産を長男に相続させる」といった簡易な平易な内容でなければ、公正証書遺言を選択せざるを得ないケースも多かったが、今回の改正により、遺言者の意向に適合したきめ細かい遺言を自筆証書遺言で行うことも可能となった。この改正は、平成31年1月13日から施行されるため、遺言作成を検討している場合、手軽に遺言を遺す方法として活用されたい。

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