中澤雄仁弁護士の法務相談室

自動運転について、現在の法規制はどのようになっているか。

先日、友人の運転する車に乗せてもらい高速道路を利用してゴルフ場に向かった際、運転していた友人が、後部座席に座る私に身を乗り出して話しかけてきたので、私は思わず「前を見て!」と焦ってしまいました。

ペーパードライバーでほとんど運転しない私は知りませんでしたが、友人の車には高速道路上での自動運転機能がついており、その機能を使って自動運転走行をしていました。よく見ると、友人は、常時ハンドルを握っているわけではなく、アクセルにも足をかけていない状態でした。 時折、自動車の方からハンドルを握るようアラームが鳴り、その時のみ(ほとんど形だけ)ハンドルを握るという状態でした。初めて自動運転の車に乗り、技術の進歩に驚きました。
自動運転の技術が発展し、実用化・一般化されれば、交通事故は減少し、渋滞も緩和されます。また、高齢のため、運転を諦めていた方も再び自動車を運転できるようになり、高齢者の活動範囲の拡大や、新しい自動車需要喚起の要因にもなろうかと思いますので、ぜひ世界に先駆けて実現して欲しいと思います。

法改正なしでは自動運転は実現しない
現行の法律は、人が運転することを前提としており、自動運転システムや遠隔操作による自動運転を可能とするための法制度とはなっていません。

例えば、道路交通法では、車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさない速度と方法で運転しなければならない(道路交通法70条)と規定されています。
「運転者が」実際に乗車して「ハンドル」等を「確実に操作」しなければならないとされていますので、道路交通法を改正しない限り、運転手が何ら操作しなくても自動運転するような、完全な自動運転は実現できません(このような法律があるからこそ、先ほどお話しした友人の車でも、時折、ハンドルを握るようアラームがなる仕組みとなっているものと思われます)。
現在、自動運転を可能とするための法整備が急ピッチで進められており、平成29年には、道路を走行できる車両について規制する、道路運送車両法に基づく保安基準が改正され、許可を受ければハンドルやブレーキペダルがない遠隔操作の自動運転車等についても公道で走行実験ができるようになりました。

自動運転に関する国家としての戦略である「官民ITS構想ロードマップ2017」では、自動運転の自動化のレベルに応じて、レベル1(運転支援)からレベル5(完全運転自動化)に分類していますが、現在の法制度の下、実際に走行可能なのはレベル2(部分運転自動化)までとなります。それでも、高速道路において、合流、車線・車間維持、分流などを、運転手の監視のもとで行うことまでは認められています。
官民ITS構想ロードマップによると、2020年までにレベル2段階の市場化を目指し、2025年には、高速道路での完全な自動運転、無人の自動運転移動サービスの普及、などを目指した法整備を行うこととされていますので、無人の車が走るのも、もうすぐだと思います。

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