リペアビジネス参入の提案 (前編)

キズ・ヘコミにターゲットを絞ったリペアビジネス ピッカーズ

BP工場の生産性と経営効率を高める

キズとヘコミの小破に
特化した専門店ピッカーズ

事業者視点で見る鈑金・塗装とユーザー視点から見るBP市場はかなり変化を伴ってきた。自らちょっとこすってしまったという軽微なダメージのキズ・ヘコミを修理する行先に、街のボディショップを選ぶユーザーは少数派になりつつある。それが顕著に表れたのが、ノンフリート等級制度の改正だ。これに伴い、自費修理の領域は拡大、鈑金・塗装と軽微な鈑金・塗装の分野は全く別物になった。その環境の変化を追い風に業績を拡大してきたのが、ピッカーズである。

ピッカーズはキズ・ヘコミの小破にターゲットを絞った専門店であり、全国ネットワークとして現在FC100 店舗を数える。この母体店舗に約620店の提携店を作るアライアンスを構築する体制で急成長を遂げてきた。ガソリンスタンドを中心とする提携店づくりは従来の鈑金・塗装業界には見られない手法である。これまでのBP 業界にはないマーケティングとアライアンスの構築、きめの細かい技術支援などをパッケージし、現在ピッカーズは更に強固なアライアンス作りを進めている。とりわけ、車体整備事業者をはじめとした整備業界に対し、リペアビジネス参入への提案を行っている。

エンジニア3.5 人で工賃売上400 万円/月
神奈川県横浜市にある直営店「ピッカーズ 鶴見店」。レンガ造りを模したおしゃれな店舗に、イラストレーター原田治氏によるキャラクターCIがロードサイドに映える。案内板のLEDが輝き、おおよそクルマのリペアショップとは思えない作りで店舗の認知度を高めてきた。現在、月間の入庫台数は100 台から120台。この数年で入庫は急増している。3.5 人のエンジニアでこの台数をこなしている。0.5 人という半端な数字は、ミャンマー国籍のエンジニアで、ピッカーズの技術検定でいうところの3級にあたる見習いとしてカウントしているためである。その3.5人体制で月間売上は約430 万円。部品売上はほぼなく、10%の材料費を除いた約400 万円/月が工
賃売上。人件費、光熱費、償却などを控除した利益は月約150 万円という驚異の数字がこのビジネスの大きな特徴である。またそれが、キズ・ヘコミのリペアビジネスがBPと一線を画する別ジャンルであることを物語っている。台当たりの売上は直需で5 万円超。サテライト店からの入庫の場合、レス3割のため、全体での台当り売上は4 万5,000円前
後という内訳である。
ピッカーズ㈱の常務取締役 今村 久治氏は「高い生産性は群を抜いています。ピッカーズ鶴見店は時間はかかりましたが、確実に成果を上げてきました。キズ・ヘコミに特化したビジネスモデルだからこそできる収益性です」と語る。今村常務は大手損害保険会社で支店長を務め、退職後鈑金・塗装工場を経営。
その後、ピッカーズのビジネスモデルに賛同し、常務取締役に就任した。

BP業界になかった戦略と
アライアンスで入庫を拡大
ピッカーズは従来のBP業界にはない緻密な戦略で潜在需要を掘り起こしてきた。その主な戦略は上記に掲げた5つのポイントである。先述したショップづくりに加え、入庫誘導の巧みさである。

お客様の窓口を様々に設けている。
Webを徹底的に活用し、集中のコールセンターを設けてお客様の対応を行う。
また、提携先にSSやカー用品ショップなど来店客が多い業態を窓口にして集客を図る。それぞれで予約が入ったお客様に、実際に施工する店舗に振り分けていく仕組みだ。今村常務は「この方法はBP業界ではあまり歓迎されてきませんでした。『俺たちはSSの下請けになるのか』と。でも、現在は様々な業態が垣根を超えて協力体制を構築する時代ですし、そうしないと生き残れません」と語る。620店を数えるサテライト店の存在はピッカーズの大きな強みのひとつだ。ピッカーズに加盟する店舗には鈑金・塗装事業者も珍しくない。驚異の工賃売上に着目し、生産性と収益性の改善を試みるBP事業者らが、全国各地でキズ・ヘコミのリペアビジネスを展開している。今回はピッカーズの戦略と鶴見店での実績について詳報した。いよいよ次号は、ピッカーズのビジネスモデルについての詳細とピッカーズの車内清掃メニ
ュー「グルーミング」について、レポートする。

 

 

 

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