自動運転革命 自動運転が業界を変える FILE.03

空間の最適解へ 車室空間が自由自在に

完全自動運転は、運転手を必要としないため、今までの自動車とは大きく異なる乗り物になることが予想される。

運転手不要といってしまうと一つの視点でしかないが、これは「運転という行為から空間を分離」という意味を持つ。前回述べたように、今までの自動車は人間による運転のしやすさを最優先としている。人間が運転をするためにハンドルがあり、アクセル、ブレーキがあって操作できるようになっていて、人間が運転をするためにミラーや窓がつき、視界を確保するようになっている。エンジンがあの位置に配置されていることすら、人間が運転をしやすいようにするということが考慮されている。

ところが完全自動運転になると、その考え方とはまったく別のものになる。運転を機械が自動で行うようになれば、ハンドル・アクセル・ブレーキはもちろんのこと、窓やミラーすら必要なくなる。エンジンの配置すら、最適解が変わって行くのだ。それにより得られるのは、今までの自動車より格段に自由に設計できる車室空間である。車室空間は人や物が移動するための真のニーズに応える空間になる。乗用車であれば、利用者のライフスタイルに合った空間を運転という作業に支配されずに構築することができる。物についても運搬に最適化された空間にさらに近づかせることができる。

空間は利用者にとっての価値になるが、実は移動の機能の面でも自動運転の価値が出てくる。今まで車は、人間が運転するという前提にとらわれていた。人間が運転するからこそ現在の形になり、現在の性能なのである。
けれども、自動運転になって人間の運転技術に配慮する必要がなくなると、色々なことができるようになる。こうした前提がなくなり、人間を考えなくても良い運
転ができるようになることも、自動運転の大きな価値の一つになるだろう。次回は具体的に将来どのような空間が生まれる可能性があるかを説明したい。

最後に少し話題からは逸れるが、筆者は完全自動運転になって自動車の設計の前提は変わるものの、設計の中でもメンテナンス性という観点は変わらず重要なことであると考える。従来の自動車としての整備に加え、電気電子的な整備もより必要とされることになるとは思うが、完全自動運転も当分は人間による整備が基本となるため、いかにメンテナンスしやすいかという観点は残るだろう。

この話題は次回以降で改めて述べたい。

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