第110回:リユース市場は拡大しているか:環境省の報告書を読む

3.他の統計のサーベイ

 次に、環境省の報告書で示される他の統計からリユース市場の拡大の様子を見ていきたい。(2)日本リユース業協会の統計では、会員企業の年間売上高の合計が示されている。これによると、全体的に増加傾向であり、2010年の1,311億円から2017年の4,047億円となっている(p.19)。つまり、ここでも市場は拡大傾向のように見える。

 同協会のホームページを見ると、2020年4月28日現在で正会員は22社、準会員は3社である。会員企業には、コメ兵やセカンドストリート、トレジャーファクトリー、ブックオフなどの大手の買取、リユース企業の名前が見られる。

 また、商品は、自動車部品、中古ゴルフグッズ、釣り具、本、着物など様々である。これらの企業は複数の店舗を持っている。

 この統計の対象の会員企業数は、年次とともに増加している。具体的には、調査対象企業数は、2010年度が11社、2011年が13社、2012~13年が16社、2014年が18社、2015年が19社、2016年が18社、2017年が20社である。そのため、それにより統計上の年間売上高の合計が増加している可能性はある。

 これに対して、環境省の報告書には、1企業あたりの売上高の推移も示している(p.19)。年次による対象企業数の違いが売上高の合計の違いを生んでいるのであれば、これによりある程度は是正される。

 具体的にこのデータを見てみると、いくつかの年で前年を下回ることもあるが、基本的に増加傾向にあり、1社あたりで2010年が119億円だったものが、2017年は202億円になっている。

 ただし、企業の1社あたりの売上高は同一とは限らない。つまり、売上高の多い企業が追加されることで、平均が変わってくることがある。よって、この推移のみで市場が拡大しているとは言えない。

 また、そもそも会員企業は限られており、市場全体を示しているかどうかという問題もある。会員企業は、先の経済産業省の統計では中古品小売業、古本小売業あたりが該当するのだろうが、大手以外にどの程度存在するかを慎重に議論する必要がある。大手と中小とでは、市場の拡大の程度に差がある可能性もある。

 一方、(3)リサイクル通信の統計が示すリユース市場規模を見てみる。これを整理した環境省の報告書によると、リユース市場規模は2009年の1兆1,274億円から単調に増加し、2016年は1兆7,743億円とされている(p.22)。

 数値的には、(1)経済産業省の統計よりも少なく、(2)日本リユース業協会の統計よりも多いが、ここでも市場は拡大傾向であることが分かる。

 環境省の報告書の図注には、「推計値は環境省「平成24年度使用済製品等のリユース促進事業研究会」の調査を基準に、リサイクル通信による「中古売上ランキング」や取材情報をもとに算出」と書かれている。

 また、「法人間の売買および輸出に関する値は含まれておらず、自動車や住宅等は集計対象外」とされている。(1)経済産業省の統計では自動車は含まれていたため、それにより市場規模が小さいのかもしれない。今回はリサイクル通信の一次データを入手できていないが、このデータの算出方法は丁寧に見る必要がある。

 また、環境省の報告書では、上記の2016年の1兆7,743億円の内訳について商品別に示している(p.23)。それによると、ブランド品が13.5%(2,401億円)と最も多く、衣料・服飾品が 10.5%(1,869億円)、バイク・原付が10.1%(1,795億円)と続いている。

 バイク・原付などが含まれていることを見ると、(2)日本リユース業協会の統計よりも市場規模が大きいことは理解できる。

 

4.消費者側から見たリユース市場

 環境省の報告書では、上記のような既存データをサーベイしつつ、消費者にアンケートをとることでリユース市場の独自データを作っている。その結果が同報告書の第2章に提示されている(pp.59-97)。ここでは、54,228名のWebモニター(ネットリサーチモニター)を対象に調査を行っている。

 まず、過去1年間における中古品の購入経験については、リユースショップやインターネットオークションなどの選択肢があるが、「過去1年では利用したことはない」という回答が圧倒的に多く、全体の70.2%となっている(p.62)。

 この調査は、2012年、2015年も行ったようだが、それと比較すると、「過去1年では利用したことがない」という回答は増加傾向にあるようである(2012年:63.3%、2015年:67.9%)。つまり、中古品の購入者数は数値的には減っている。

 単純に考えれば、このデータからリユース市場は拡大していないという見方ができるが、どのように解釈すればよいだろうか。サンプルの違いによるものもあるのだろうが、1人あたりの購入金額が増大していれば、購入者数が減少していてもリユース市場は拡大する可能性はある。

 また、中古品の購入経験があるという中で、購入先の選択肢として「リユースショップ・中古品販売店の店頭」「インターネットオークション」「インターネットショッピングサイト」「フリマアプリ」「小売店・家電量販店の中古品販売コーナー」「フリーマーケット、バザー等」「その他(知人、市町村等)」が挙げられている。

 このうち、フリマアプリからの中古品の購入の割合のみが前回(2015年)の調査を上回っていたが(2.1%から8.2%へ上昇)、他の購入先からの割合は、軒並み減少している(p.62)。

 購入経験のみならず、自らが使わなくなった製品の売却・引渡し経験についても、同様の結果である。同じくリユースショップやインターネットオークションなどの売却・引渡し先の選択肢が数多くある中で、「過去1年間で利用したことはない」という回答が圧倒的に多く、66.4%である(p.64)。

 その割合は2012年の57.7%、2015年の60.5%よりも大きく、不用品の売却においても市場は縮小しているように見える。

 もっとも、先にも述べた通り、サンプルの違いのほか、1人あたりの金額が増加しているという見方もできる。リユース市場は、製品の状態を識別することが難しく、それを捉えるための知識、目利きが重要である。その結果、限られた者が参加し、取引を広げていることもありうる。

 なお、購入経験と同様に、売却・引渡し経験があるもののうち、フリマアプリからの売却・引渡しの割合が前回(2015年)と比べると増加している(2.0%→7.5%)。これに対して、リユースショップやインターネットオークションなど他の売却・引渡し先の利用の割合は全て減少している(p.64)。

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