2004年から、アジアの自動車に関する様々な問題を研究・発表してきた「アジア自動車シンポジウム」(主催:京都大学東アジア経済研究センター、後援:京都大学東アジア経済研究センター支援会)。
その16回目にして最終回となる報告会が、去る11月9日には京都(京都大学経済学部 法経東館)にて、同じく11月11日には東京(京都大学東京オフィス)にて開催された。
一口に自動車と言えども様々なテーマを扱ってきた同シンポジウムだが、2017年の報告会で太平洋島嶼国の放置車両問題に触れて以降、自動車リサイクル関連をテーマとすることが多くなってきた。
こうした流れを受けての今回のテーマは、「パラオにおける車両放置問題の解決に向けて」が取り上げられた。研究・発表に当たったのは、京都大学大学院経済学研究科の塩地 洋教授である。
太平洋島嶼国(=自動車リサイクル困難国)14カ国では推定6万台の放置車両があるとされているが、リサイクルをしたくともできない環境にあることが大きい。考えられる要因は3つあり、①狭小性:規模が小さく、電炉や精錬炉がない、②遠隔性:島同士が離れており車両を回収しようにも海上輸送費が高い、③分散性:離島が多く、そもそも回収が困難、である。
例えばフィジーにおける放置車両は300~400台と言われているが、そのうち80~90%が日本車であり、なおかつその日本車の90%が中古車輸出と言われている。
ということは、現地でリサイクルが困難であると知りながらも中古車を輸出する企業や政府にも「持ち込み責任」と同時に「持ち帰り責任」があるのではないか?すなわち、リデュース、リユース、リサイクルの3Rに続く第四のR、「リターン」を標榜すべきではないかとした。
具体的にはそうした責任を果たすべく、自動車リサイクル困難国に対して自動車を輸出する企業や政府は応分の国際協力、リサイクル国際分業に資するべきであり、例えば日本における自動車リサイクルシステムの特預金をこのための資金に充てることを提案した。
すなわち、より大型のプレス機を現地に導入するために補助したり、あるいは最終処理は輸出元の企業ないし国で行うべく現地で手ばらし後に出る廃車ガラを輸送する費用に充てるといった具合である。
先述のように、アジア自動車シンポジウムは今回で最終回となる(塩地教授の定年退職に伴う)が、太平洋島嶼国の車両放置問題について塩地氏は今後も調査・研究を続け、学会や研究会等何らかの形で成果を公表するとしている。