3.都道府県別の保有台数をどうするか
上記の通り、阿部(2018)では、保有台数の合計を示すために、各都県について7車種の保有台数を入力し、それらを合計するという方針を取った。7車種×8都県分の保有台数を各年について入力するのは労力がかかり、阿部(2018)では1983年と2017年の2年のみの算出になった。作業の効率性とのバランスを考えて、他の選択肢はないかどうかである。
まず、二輪車を含めた自動車保有台数の合計値を計算式に投入し、算出するという方向である。新車販売台数は二輪車を含めないため、保有台数に二輪車を含めると、全体の計算式に誤差が生じうる。
しかし、抹消登録台数の計算式においては、保有台数は前期末分と当期末分の差を示せばよい。したがって二輪車の保有台数の差が限りなくゼロに近ければ、二輪車を含む保有台数の合計値を用いても大きな問題にならないと言える。
二輪車(小型二輪車、軽二輪車)の保有台数については、『自動車統計データブック』には掲載されていないが、自動車検査登録情報協会のホームページには3月末時点のものが掲載されている。
そこで、このデータを用いて前期末二輪車保有台数-当期末二輪車保有台数を出してみると、図2のようになる。これを見ると、多くて東京都で4万台程度、神奈川県で2万台程度の差が生じていることが分かる。これらを無視すれば、保有台数の合計値を抹消登録台数の算出に用いることはできるが、無視してよいかどうである。
図 2 二輪車の保有台数の前年度との差の推移(単位:台)
出典:自動車検査登録情報協会ホームページ(都道府県別・車種別保有台数表)より阿部新作成
注:前年度末二輪車保有台数-当年度末二輪車保有台数により算出したもの
次に、自動車保有台数の合計値から二輪車保有台数のみを差し引くという方法である。二輪車保有台数は、先述の通り、『自動車統計データブック』にはなく、自動車検査登録情報協会のホームページでは3月末時点のものしかない。
そこで、12月末時点のものについて改めて探したところ、日本自動車工業会『自動車統計月報』において毎月末の都道府県別の自動車保有台数が掲載されており、その中に二輪車もあることが分かった。
これは、2001年以降のものについて、インターネット上で閲覧することができ、それ以前は紙媒体のものを閲覧することができる。それ以外には、自動車検査登録情報協会『自動車保有車両数』にも都道府県別の自動車保有台数があり、そこに二輪車の数量もあることが分かった。
全車種の合計から二輪車を差し引く方法では、2種類の数値を各都県分かつ各年分入力する必要があり、それなりに労力が必要である。だが、阿部(2018)で採用した『自動車統計データブック』上の7車種分の入力より労力は省ける。差し引く方法の場合、特殊車両も抹消登録台数の対象範囲に含めることができ、より効果的である。
もちろん、二輪車の保有台数を差し引くことさえもせず、合計値を抹消登録台数の計算式に投入する方法がより省力化できるが、図2に見たように二輪車の保有台数の増減が年によってばらつきがあることを考慮する必要がある。
今回の限りでは、二輪車を無視せず、自動車保有台数の合計値から二輪車を差し引くという方向が妥当と考えられる。以上により二輪車を除いた自動車保有台数は図2の通りになる。
図 3 都県別の自動車保有台数の推移(単位:台、二輪車を除く)
出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』1984年版、1986年版~2018年版、日本自動車工業会『自動車統計月報』各年3月版、自動車検査登録情報協会『自動車保有車両数』より阿部新作成
注:自動車保有台数の合計値から二輪車(小型二輪車、軽二輪車)分を差し引いたもの
4.新車販売台数をどうするか
次に都道府県別の新車販売台数をどのように入手するかである。これは登録車の新車登録台数と軽自動車の新車販売台数の合計になる。『自動車統計データブック』における新車登録台数の合計は、貨物車(普通、小型、小型三輪)、バス、乗用車(普通、小型)、特種車、特殊車の合計であり、二輪車は含まれない。これに軽自動車の合計を足し合わせることで、都道府県別の新車販売台数を示すことができる。
今回、筆者が入手できた『自動車統計データブック』は1984年版、1986年版~2018年版であるが、複数年の数値が示されていたため、欠号の1985年版の分の数量も把握できた。同資料では、登録車については1978年以降、軽自動車については1982年以降の都道府県別データを把握することができる。
インターネットでダウンロードできるような都道府県別の新車販売関連データは少ない。筆者が今回見た限りでは、都道府県別の登録車の新車登録台数を示すものはなかった。軽自動車に関しては、全国軽自動車協会連合会(以下「全軽自協」)のホームページに1998年以降の「軽四輪車県別新車販売台数」が掲載されていることが分かった。これ以外は『自動車統計データブック』を用いることになる。
以上により、新車販売台数を示したものが図4である。
図 4 都県別の新車販売台数の推移(単位:台、二輪車を除く)
出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』1984年版、1986年版~2018年版、日本自全国軽自動車協会連合会ホームページ「軽四輪車 県別新車販売台数」より阿部新作成
注:登録車の新車登録台数と軽自動車の新車販売台数を合計したもの
なお、全軽自協のホームページに掲載されている都道府県別の新車販売台数の数値は、『自動車統計データブック』の数値と若干異なる。全軽自協のホームページでは、メーカー別に軽自動車の販売台数が示されているが、その中でメーカー名が示されていない「その他」の項目がある。
その数値を差し引くと、『自動車統計データブック』の数値と一致した。明記はされていないが、『自動車統計データブック』では「その他」メーカーの数値が含まれていないと考えられ、全軽自協のホームページの方がより正確であると言える。ただし、その差は誤差の範囲内であると思われる。