熊本大学大学院人文社会科学研究部(法学系)・環境安全センター長
外川 健一
- 1 1. はじめに 時代の転換点か
- 2 2. 2024年の使用済自動車台数は?リサイクル料金の還付を受けた中古車輸出台数は?
- 3 3. 2月14日 一般社団法人 日本自動車リサイクル研究所(JVR)2025年第1回JVR 研究会に参加して
- 4 4. 2月18日 公益財団法人国際環境技術移転センター(ICETT:アイセット)にて開催された第2回ICETT資源循環セミナー「自動車の資源循環」
- 5 5.2月21日 読売テレビ(日テレ系)ワイドショー「情報ライブ ミヤネ屋」での放置車両に関する報道について
- 6 6. 2月21日 東京 TKP田町駅前カンファレンスセンター 2025年度 オートリサイクルパーツネットワーク(APRN)会員交流会
1. はじめに 時代の転換点か
トランプ政権が誕生してから、米国ではイーロン・マスク氏が「コストカッター」ぶりを発揮し、公務員の削減を、ある意味暴力的に始めている。
ウクライナに関しても同様である。トランプ政権は自らを支援するアメリカ資本の支持を得るがためか、ゼレンスキー大統領を独裁者と呼び、プーチン大統領寄りの立場に立った。そして、バイデン元大統領がこれまで補助した軍事支援の見返りに、ウクライナの鉱物資源の権益を要求している。それもウクライナの安全保障という「見返り」もなしに。2025年2月28日のホワイトハウスでの交渉は、テレビでも中継され、彼らの激しい口論の結果物別れに終わった。このように侵略者からの抵抗に果敢に挑戦している国のリーダーに対して、ホワイトハウスは公開ショーを演出し、「ウクライナには取引の材料がない」と言い放ち、自分の言うことを聞かなければ「平和」は訪れないと恐喝する。このトランプ大統領の脅しは「取引」なのだろうか?
しかしながらゼレンスキー大統領の場合、アメリカの脅しに屈し、ロシアの侵略を正当化した形でも、まずは自国の国民の平和と安全を、将来の安全保障なしに取り戻すべきなのだろうか?明らかにアメリカやロシアに比べ、弱者の立場にあるゼレンスキー大統領の選択は、東アジアではかつて経済大国であったが、少子高齢化が進む「黄昏の国」日本の将来を見通すうえで、注意深く見ていくことが必要だろう。
ガザに関しても同様である。なぜガザのパレスチナ人が故郷を追われなければならないのか?アメリカが開発をしてリゾート地にするなど、彼らが望んだことなのか?
グリーンランドも、アメリカ第1主義ゆえに、ここに住む住民の意志なしに、アメリカの力と財力で「やりたい放題」で世界を惑わしている。
ただ、一貫しているのは、トランプ政権にとっての一番の脅威は中国であり、それを意識した発言なのだろう。だからロシアに近づくのも、中国とロシアの強い結びつきを少しでも弱めるためだといわれている。
いずれにしろ、ガザの一時休戦が今後どのような形で変化するのか、ウクライナでの戦争はどのような形で一時休戦の形になるのか、予断を許さないが、世界の動向は大きく変化している。
ところで、ロシアのウクライナへの侵攻が始まってから、日本政府は西側諸国と歩調を合わせて、ロシアに対して経済制裁を行ってきた。この制裁はロシア市民を少しは困窮させたのかもしれないが、プーチン大統領にとっては痛くもかゆくもなかったのかもしれない。
自動車リサイクル関係でも、ロシア向け中古部品の輸出は堅調であると聞く。本誌でおなじみの山口大学阿部教授の調査によると、中古車の場合も2024年は排気量の大きいものや電動車などのロシア向け輸出の実績がゼロになる一方で、排気量の小さい車の数量が増大している。とりわけ1000cc超1500cc以下の乗用車(ガソリンエンジン)の輸出が飛躍的に増加し、この品目の全体におけるシェアは58%にもなっている。すなわち日本からのロシア向けの中古車輸出はかつてほどの台数はないものの、経済制裁後も堅調に行われてきたのである。
https://www.iru-miru.com/article_detail.php?id=69469
https://www.iru-miru.com/article_detail.php?id=73426 参照。
そこで、まず最近データが公開された2024年の使用済自動車台数と、中古車輸出台数は2023年に比べてどのように変化したのからみてみよう。
2. 2024年の使用済自動車台数は?リサイクル料金の還付を受けた中古車輸出台数は?
2024年のELVの国内処理台数がまとまった。自動車リサイクル促進センターによると、データは以下のようになっている。
1月から3月:67.7万台 (67.7万台)( )内は2023年。以下、同様。
4月から6月:67.8万台 (71.5万台)
7月から9月:61.1万台 (65.0万台)
10月から12月:64.2万台(68.2万台)
合計:260.8万台 (271.0万台)
一方、リサイクル料金の還付を受けた中古車輸出台数は、以下の通り。
1月から3月:41.3万台 (32.3万台)( )内は2023年。以下同様。
4月から6月:41.9万台 (35.5万台)
7月から9月:42.2万台 (38.5万台)
10月から12月:39.0万台 (41.8万台)
合計:164,4万台 (148.1万台)
というわけで、2024年も確実に使用済自動車台数は減少し、リサイクル料金の還付を受けた中古車輸出が確実に増加している。
なお、使用済自動車台数とリサイクル料金の還付を受け取った中古車輸出台数の合計は425.2万台(2023年は419.1万台)と、この数は微増である。このことから、使用済自動車予備軍の台数はかつて(法施行前)は500万台であったが、ここ2年は400万台前半になっており、中古車輸出という名で最終処分は海外へ依存する比率が伸びているということが指摘できよう。
日本の自動車リサイクルは、中古車輸出を中心に非認定全部利用(輸出)の形も含めて、海外での最終処理への依存を高め、それを止めようとする動きはない。そのような実情の中で、後ほどICETT に言及する際に示すような、国内での「資源循環」を謳うシンポジウムや政策が打ち出されているのが、奇妙にも感じる。
3. 2月14日 一般社団法人 日本自動車リサイクル研究所(JVR)2025年第1回JVR 研究会に参加して
一般社団法人 日本自動車リサイクル研究所(JVR)は、元来、日本自動車リサイクル機構(JAERA)の研究部門として2016年に発足した。
同研究所のウェブサイトでは、この研究所の設立経緯として、次のように記されている。
「わが国で自動車リサイクル法が施行されて10年以上が経過しました。制度立ち上げ時の心配をよそに、経済産業省、環境省、自動車工業会、自動車リサイクル促進センター、自動車再資源化協力機構、日本ELVリサイクル機構など関係者が一体となって制度運用に取り組み、概ね順調に推移してきたことは大いに評価できることです。
一方、自動車リサイクルを取り巻く市場環境は、この10年の間に激変してきました。使用済自動車の相対的な減少や小型化の拡大、内燃機関に加え電動系パワートレインの出現とそれに伴う軽量新素材を用いた材料の変化、一方では、リーマンショックを例とする経済環境の変動や大震災やゲリラ豪雨といった地球環境の異常など様々な変化の波が押し寄せてきました。今後も更なる激動の時代となっていくことが予測されます。
そのような背景の中、自動車リサイクル事業者が力強く事業を展開していくためには、変化に対する一早い情報の把握とそれを基にしたチャレンジングな戦略が必要です。
私たちはこれらを実現するために、動脈・静脈産業の関係者を中心に、リサイクルの調査研究を実施し、かつ日本ELVリサイクル機構と協力して解析を行い業界・社会に研究成果を提供することを目的に、一般社団法人 日本自動車リサイクル研究所を設立いたしました」
そして、同研究所の代表である木村眞実長崎大学教授によるあいさつで、JVRの主事業として次の事を行っていると記されている。
【教育】
・「自動車リサイクル士」の認定新規および更新講習の運営事業。
・電気自動車等の整備業務に係る特別教育などの「技術」に関するセミナー事業。例:JVRサテライトセミナー
・業界の小さな関心ごとを題材とする「経営」に関するセミナー事業。例:まちかどの講演会
【研究】
・実務家・有識者がオーガナイズする研究事業。例:JVR共同研究会
今回は、【研究】にあたる2025年の第1回JVR共同研究会が東京九段下のJVRオフィスにて開催され、筆者もその一部に参加した。
ここでは、同研究所の2人の理事から2つの研究テーマが出された。
1つ目は、自動車解体業のカーボンニュートラル研究-炭素中立型事業所への変革-という研究テーマである。
ここでの主テーマは事業所で太陽光パネルを設置するなど、事業所で使用するエネルギーは、可能な限り事業所で賄う方向性を模索する試みが中心であるが、このほか、自動車の電装部品を使用済自動車から回収し、どのようにして付加価値を高めるか、将来のEVシフトを視野に入れた研究を進めること、事業所の全体システムの配線の最適化に関する研究、解体工程全般におけるエネルギーマネジメントの研究等が提案された。
第2の研究テーマは、自動車解体作業時の安全管理の研究である。
とくにHV車に代表される、電気系統が多く使用されているクルマが増えたので、それらを扱う基礎的な知識も大切だが、実際解体工場でのヒヤリハットは数多く、実際あまりマスコミでは報道されていないが、軽微なものを含めば解体現場での事故は少なからずある。
なので、自動車解体業の許可を得るための標準作業所を見直し、自動車解体工程に必要な解体フローを洗い出し、工場での作業効率も上げるため、事業所のシステムメンテナンスがどれほど重要なのかを具体的に研究しようという、非常に地味ではあるが意義深い提案であった。
このテーマでのディスカッションで、「フォークリフトを使った一連の作業」がテーマに上がった。
実は事業所の安全については、筆者が学実会員として参加している、リサイクル部品流通団体一般社団法人部友会でも、重点テーマとして議論されており、とくにフォークリフトの正しい使い方や、必要な資格などが確認された。今回のJVR研究会では、今後想定される電気自動車からの車載用リチウムイオン電池を、フォークリフトを使いどのように上手く、安全に外せるか、きちんとした実証研究を行いたい、という意見などが出された。
いずれにしろ人手不足の解消に、安全で快適な職場環境の提供は、自動車解体業者の経営にとって(すべての職場にとって)今後必須の課題であることが認識できた。自動車リサイクル事業が社会に誇れるものとしてさらにグレードアップするためには、モノづくり産業としての基本の3S(整理、整頓、清掃)から、工具や機械などの正しい使い方の見直しが必要だと感じた会議であった。
4. 2月18日 公益財団法人国際環境技術移転センター(ICETT:アイセット)にて開催された第2回ICETT資源循環セミナー「自動車の資源循環」
公益財団法人国際環境技術移転センター(ICETT:アイセット)は、2024年度、企業・団体への情報共有を通じて、日本国内及びASEAN等海外での資源循環、また、それに資するビジネスの促進に貢献することを目的に、「ICETT資源循環セミナー」を開催している。2024年10月に、「ASEANにおけるe-waste資源循環」をテーマに開催された第1回セミナーに続き、この2月18日「自動車の資源循環」をテーマとした第2回セミナーが開催された。「本セミナーでは、自動車資源循環に関する最新の政策や先進的な取組を、業種を越えた連携の視点を交えながらご紹介します。」ということで、ぜひとも聞きたかった内容だったが、私は別件もあって、その一部をオンラインで拝聴し、このセミナーに参加した知人から会場の雰囲気を聞くにとどまった。
プログラムは以下のとおりであった。
「自動車産業の資源循環の推進に向けた環境省の取組」
環境省 資源再生・資源循環局 総務課 資源循環ビジネス推進室 室長 河田 陽平 氏
「循環経済の推進に向けた自動車リサイクルの取組と今後の課題」
経済産業省 製造産業局 自動車課 企画官(自動車リサイクル担当) 原 充 氏
「「第3期戦略的イノベーションプログラム(SIP)『サーキュラーエコノミーシステムの構築』」における資源循環促進に向けた取組」
独立行政法人環境再生保全機構 理事 福山 賢一 氏
「リサイクル技術高度化による自動車資源循環の促進」
豊田メタル株式会社 常務取締役 工場長 金子 光司 氏
名古屋での開催ということで、トヨタもシュレッダーの豊田メタルの方が講演されていた。ただ、第3報告は資料の配布もなくちょうど聞きそびれてしまって、内容は把握できなかったのが残念である。
一番筆者が注目したのは経産省自動車課の原氏の最後のスライドに、今後の課題(考察)と題して、「外国人事業者の国内産業・市場への参入等」が記載されていたことである(図表1)。この件については環境省のスライドでは言及は見当たらず、今後いかにして自動車プラスチックリサイクルを増やしていこうという、いわゆる回収インセンティブ制度を中心とした取り組みやEUの動向にもっぱら注視しているのと対照的に感じた。
ただ、「外国人事業者の国内産業・市場への参入等」を今後の課題として掲げて、政策的に何を行うのかが問題である。それが全く見えない。
現在問題なのは、自動車解体業を含めた静脈産業の許可取得が設備用件であって、どのようなリサイクルを行っているのかという技能要件がないことである。だから、設備さえ整っていれば外国人企業家も容易にこのビジネスに参入できる。しかし、彼らと日系の解体業者との間の交流はほとんど聞かない。
外国人企業家が、世界商品である日本車のマーケットを開拓し、そのため日本国内で日本の法律を守ってリサイクルを行ってくれれば大いに結構であるが、まずは、法令順守ができているかである。経産省・環境省は、自治体や警察とタッグを組んで、外国人経営者が適正処理を行っているのかどうかをきちんと指導するという意思があるのだろうか?
環境省が(経産省も)熱心に説明していた解体インセンティブ制度にも、外国人経営のリサイクラーが参加してくれればリサイクル用の廃プラはさらに集まるかもしれない。しかし、彼らをこの制度に参加してもらう仕掛けが今一つ見えない。
そもそも、このインセンティブがリサイクル料金のうちASR再資源化料金しか原資がないことに問題がある。現在の担当官はそう発言しないかもしれないが、このシステムが構想された当初、経産省の担当官は「解体インセンティブ制度は、31条全部利用・全部再資源化と同じで、やってもやらなくてもいい制度なのです」とのことだった。
図1 経産省自動車課 原氏のスライド 今後の課題(考察)
資料)公益財団法人国際環境技術移転センター第2回資源循環セミナーにおける経産省自動車課 原氏のプレゼン資料スライド。赤の下線は筆者加筆。
あと、私はこの辺りは聞き逃していたが、名古屋在住の私の知人が
「なぜ日本だけ3品目有料なのか?=なぜ3品目がメーカー責任なのか?」
という類の質問をし、これに対して、
「(法施行時に)逆有償の3品目があるので、費用をとらないと不法投棄される。」という回答があったという。
このような理解は歴史の歪曲にも繋がるので、今一度確認しておきたい。
ASRは自動車リサイクル法のキモであった。これを何とかメーカーの責任で再資源化すれば、あとは既存の自動車解体業者やシュレッダー業者の既得権益を守りながら、自動車のリサイクルは市場システムで回るはずだというのが、当時の発想であった。この点は豊島事件の教訓が何よりも大きい。
では、フロン類はどうか?
実はフロン類は逆有償ではなく、とくにオゾン層の破壊が危惧されていたR-12と呼ばれるフロン類は、モントリオール議定書で国内での製造が不可能となり、少なくない自動車整備業者では、整備車量はもちろん、使用済自動車から回収されたR-12を購入し、整備用フロンとして使用していたのである。
フロン類が3品目の対象になったのは、公明党が議員立法として成立させていたフロン回収破壊法への対応である。この法律で既に自動車は第2種フロンと位置付けられ、回収・破壊用のマニュフェストまで作られていた。自動車リサイクル法とフロン回収破壊法をうまく整合させるため、フロン類は3品目に加わったのである。
エアバッグ類も然りで、これが市場取引されるまでの1990年代後半は、市場が成熟していなかった。よってこれらはそのままシュレッダーで処理されたり、エンジン類と一緒にアルミインゴット製造業者に委ねられることが多く、爆発事故が幾度か起きたという。そこで、エアバッグ類を自動車メーカーの責任で回収する品目とすることで、自動車解体業者と自動車メーカーとが交流する場を創ろうとしたのが、エアバッグ類が3品目に入った理由である。もう1つは、エアバッグ類の火薬の原料がアジ化ナトリウムという毒物であったことである。(なお、自動車リサイクル法の議論が始まった際に、自動車メーカーはアジ化ナトリウムの使用を既に自主的にやめていた)
当初は運転席と助手席にしかなかったエアバッグ類であったので、取り外し回収が前提であった。しかしその後、シートベルトのプリテンショナーもこれに該当するということになり、安全性の確保から自動車メーカーは多くのエアバッグ類をクルマに搭載する。そこで車上作動が奨励され、そのため自動車再生機構の監査が自動車解体業者に入ることになった。
ここで、確かにメーカーと自動車解体業者の間のリスクコミュニュケーションが生まれるかと期待されたが、残念ながら監査は自動車メーカー自らが解体業者からの意見を聞くという意味では機能せず、監査の主体も自動車再生機構が矢野経済研究所など第3者に下請けするようになり、メーカーと直接解体業者が対話する機会にはならなかった。
改めて考えるのは車上作動のせいで、リユースとして使用できる部品が相当破壊されることである。自動車リサイクル法の正式名称は「使用済自動車の再資源化等に関する法律」である。容器包装リサイクル法や、家電リサイクル法は「再資源化」ではなく「再商品化」という言葉が使われている。この正式名称からも、この法律のメインがASR対策であったことが改めてうかがえる。
また、質疑応答で「欧州廃車指令ではタイヤは対象か?」との質問があったが、登壇者は「よくわからない」とのことであった。この点は本連載第157回で阿部新先生が紹介しているように、タイヤについては、ELV規則(案)の段階では、再生材を使用すべき部位としての掲載はあったが、持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR, Ecodesign for Sustainable Products Regulation,「エコデザイン規則」)案の下で再生ゴムのリサイクル含有率を設定する可能性があるとされる、と記載されるにとどまっている模様である。
ところで、自動車リサイクルに関するEU規則は依然として成立するかも明らかではなく、しかも機能するのかどうかはまた別の話である。
現在はEU内でも右傾化が進んでおり、トランプ大統領のアメリカがパリ協定からとっとと脱退し、「Drill, Drill.」とのスローガンの下、環境などコストがかかるだけともいわんばかりの大転換が進むのと同様、この2025年2月に行われたドイツの総選挙では、これまで第1党だった左派が破れ、メルケル氏がかつて党首であった中道右派の「キリスト教民主・社会同盟」が第1党になったが、第2党はナチスドイツの再来を思い起こされる極右政党「ドイツのための選択肢」が躍進した。
思い起こせばヒトラーも民主的な選挙でリーダーとなり、ユダヤ人を排斥した。「ドイツのための選択肢」が政権に加わると、まずはドイツで暮らす移民を排斥するようになるだろう。
オーストリアでも2024年9月の総選挙で極右が勝利したが、連立交渉がうまくいかず、極右を除く第2党以下3つの政党が政権を発足させることで合意したとこの2月27日に発表した。しかし、第1党は極右であることから、ドイツ同様今後の移民排斥の動きが気になる。
イタリアのメローニ政権はネオファシストの後継と目された極右政権であったが、今のところEUと歩調を合わせ、ウクライナ支援もドイツやフランス、イギリスと歩調を合わせて継続している。しかし、いつ態度を翻すかはわからない。
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は9日の欧州議会で、ウクライナへの支援に消極的でロシア、中国寄りの姿勢を取るハンガリーが「欧州に安全保障上のリスクをもたらしている」と非難した。ハンガリーのオルバーン首相は8日、「ウクライナはロシアとの戦争に勝てない。EUのウクライナ支援は愚かだ」と発言しており、EUとハンガリーの対立が一段と深刻化している。
またオルバーンは、最初からウクライナ支援の消極的であった。この国は既に、権威主義的なロシア、中国への接近を図っており、EUに所属しながら独自路線を強めている。注目すべきは、現在欧州議会の議長国はハンガリーであることである。
2024年の欧州議会の総選挙でもオルバーンが主導したPfE – Patriots for Europe(欧州の愛国者)が全720議席のうち84議席を取り、第3党になった。一方環境保護派のGreens/EFA – Group of the Greens/European Free Alliance(緑の党)は第6党で、53議席の獲得であった。
https://results.elections.europa.eu/en/european-results/2024-2029/
このような欧州会議の情勢から、EUの環境政策がこれまで同様の理念を掲げながら前進するのかは、はなはだ不透明である。日本の官僚やマスコミは、自動車リサイクル政策においてEU指令の条文や骨格だけをみて議論しがちだが、現実にそれが機能するかどうかをしっかり見守ることが重要なのだ。
5.2月21日 読売テレビ(日テレ系)ワイドショー「情報ライブ ミヤネ屋」での放置車両に関する報道について
このワイドショーで、「大量の放置車両ナゼ」放置車両 公道に50台“スラム寸前”と題して、東京都江東区における法治車両の問題についての報道があった。この具体的な場所は新木場駅から車で5分の湾岸道路である。落書きされた軽自動車が多く散見され、その数は50台以上。スプレーで落書きされた車両、すべてのタイヤや、一部の部品が外された自動車、大破した自動車、軽貨物車の中にごみが投入されているケースが多く散見されるという。
一時はここに放置されていた自動車は、100台以上はあったという。放送では約3年前からこの湾岸道路一帯に放置車両が増えているという。この周辺は住宅街ではないので、人の目がなかなか届かない。現場で特に目立つのが、荷物を搬送する事業用の軽自動車のナンバープレートである黒ナンバー車の存在である。軽貨物による運送業者が、事業をやめてどこかに行った個人事業者の車両が捨てられていたものと推定される。配達の物流センターが多くあるので、そこに出入りする事業者の車両が捨てられたのではないか、と近隣順民からのコメントが報道された。コロナ期は、ソーシャルディスタンスが意識され、買い物を控える人々が多く、この類の宅配業者は潤っていたのかもしれない。しかし、ここ2,3年の人件費やガソリン価格の高騰で、ポストコロナ以降、倒産した企業が使用していた車両が捨てられていたのではないか。実際、帝国データバンク調査では、道路貨物運送業者の倒産数は、2021年に169社だったのが、2022年には229社、2023年には315社、そして2024年には360社にまで急増していることが番組では紹介されていた。江東区としても、2023年から駐車禁止規制が開始されたというが、この駐車禁止にある前は、無法地帯になっており、「オーナーがいるのであれば責任をもって撤去してほしい」という周辺住民からの、至極まっとうな訴えが報道された。
江東区議員の高野はやと氏が「(現場は)江東区どころか日本かなと思うくらい落書きもあり、スラム寸前くらいと感じも受けた。今まで放置を許していることが問題。パトロールを強化して問題解決したい。」「江東区と東京湾岸警察署で調査し、所有者がいる場合は請求して撤去」「持ち主がいなければ税金で撤去」「なるべく金属類はリサイクルし完全撤去していく」とコメントしていた。
残念なのは、このワイドショーでは、現在の使用済自動車の相場や、自動車リサイクル法の話が一切なかったことである。確かに税金を払って撤去しなければならないケースもあると思うが、ほとんどが現在の金属相場ならば、入札によって解体業者がこれを買い取り、税金を使わずに処理できるものと考えられる。そして、どうにもならない場合、自動車リサイクル料金の剰余金を使って、撤去費用の補助がされるシステムがあることを、番組では一切報道されていなかった。
自動車リサイクル法の制定の理由の1つが、鉄スクラップ市況が最悪だった2000年ころに顕在化した放棄車両問題であった。そこで、どのような相場でも自動車リサイクルシステムが回るシステムを構築することが、法制定時の目標でもあった。スクラップ相場が非常に良いこのタイミングで、自治体や警察がこの法規車両の保有者をいち早く探して、撤去させておけば、これらの車両のスプレーをかけたり、ごみを入れたり、「ここはクルマを勝手に捨ててもいいんだ」という人間の心理がはたらき、放棄車両が増えて行ったり、環境が悪くならなかったはずである。マスコミもセンセーショナルに事件を報道するだけでなく、自動車リサイクル法というセーフティネットの存在と、スクラップ市況がまだいいから、この類の案件は早め早めで対処しておかなければならないことを報道してほしかった。
本件に関して、自動車リサイクル促進センターの電話取材したところ、この事案は把握しており、フジ系列のテレビでも報道されていたという。また、江東区からも昨年秋から相談を受けているそうで、まずは所有者を探し、見つからない場合、一連の手続きをしたうえで撤去し、その場合は立場上、特定の解体業者の紹介はできないが、入札のノウハウやセンターがお手伝いできることは伝えているとのことであった。しかし、スクラップの市場相場が崩れたらこのような事件のセーフティネットとして、自動車リサイクル法が機能するのか。いろいろ考えさせられる案件でもあった。
(なお、番組では「放置」車両という用語が使用されていたが、自動車リサイクルのシステムでは「放棄」車両と呼ばれるので、報道部分の場合は「放置車両」、それ以外は「放棄車両」という用語を用いている。
6. 2月21日 東京 TKP田町駅前カンファレンスセンター 2025年度 オートリサイクルパーツネットワーク(APRN)会員交流会
この件は自動車リサイクル部品、整備業界に係る方々には様々なメディアから紹介されていると思うが、参加者が78名であった2月7日の福岡での説明会(この日の北部九州は例年になく強い寒波に見舞われ、山陰地方で営業を営む方々の参加予定者の多くが、雪の影響で交通機関が乱れ、欠席であったそうだ。かくいう私も申し込んでいたのだが、午前中はしっかりこの会議のことを意識しながら仕事をしていたものの、いろいろと雑務を行っていくうちに、時間が足りなくなり欠席することになってしまった。福岡での第一回説明会に続いて、第2回目の説明会は東京で開催された。出席者は89名であった。
この前日の2月20日にこの新しい自動車リサイクル部品在庫共有・流通ネットワークが正式にスタートし、初日の売り上げ合計は約336万円であったとの報告があった。
昨年との大きな違いは、業界でもある意味トップランナーでもあるNGPが加わったことである。このためかNGPからの参加者は20名程度と、やや多くのメンバーが参加していた。
福岡での説明会と今回の説明会の大きな違いは、それぞれのネットワークについて、在庫詳細サンプルの実際の画像が紹介されたことである。外装部品としてボンネットフード、機能部品としてエンジンを対象に、
ATRS(ビッグウェーブ、JARA、JAPRA)のメンバーからNGPのメンバーの在庫がコンピュータの画面上でどう見えるか?
ATRS(ビッグウェーブ、JARA、JAPRA)のメンバーからSPNのメンバーの在庫がコンピュータの画面上でどう見えるか?
SPNのメンバーからNGPのメンバーの在庫がコンピュータの画面上でどう見えるか?
SPNのメンバーからATRS(ビッグウェーブ、JARA、JAPRA)のメンバーの在庫がコンピュータの画面上でどう見えるか?
NGPのメンバーからATRS(ビッグウェーブ、JARA、JAPRA)のメンバーの在庫がコンピュータの画面上でどう見えるか?
NGPのメンバーからSPNのメンバーの在庫がコンピュータの画面上でどう見えるか?
について、それぞれ具体的な照会があったことである。
質疑応答でも、新たに加わったNGPとの取引に関して細かい質問が問われており、このシステムをうまく使って販路を拡大させたい参加業者の意気込みを感じた。
懇親会ではグループの垣根を超えた名刺交換と談笑が続いた。
とにもかくにもこの業界において、「売れる商品が増えたこと」は大きい。今後は自動車損保や整備業界との連携を深め、リサイクル部品の車検時や事故時の使用頻度をさらに上げるべく努力していっていただきたい。
参考文献
外川健一(2004)「自動車フロン類回収破壊システムの現状と課題」『廃棄物学会誌』15-6, pp. 293-302.
岡村理恵・外川健一(2006)「自動車エアバッグ類のリサイクルシステムの現状と課題」『廃棄物学会誌』17-3, pp. 142-150