第158回 Right to Repair 修理する権利に関する研究ノート

熊本大学大学院人文社会科学研究部(法学系)・環境安全センター長

外川 健一

1.はじめに

自動車リサイクルの研究は幅広い分野に及ぶが、日本の自動車リサイクル法が「ASRの再資源化をどのようにするのか」に焦点があてられていることもあり、政府や自動車リサイクル高度化財団が委託する多くの研究が、いわゆる素材のリサイクルの研究に焦点が当てられており、部品のリユースに関する研究は筆者の知る限りほとんど確認できない。(本連載を行っている山口大学の阿部新教授らのグループは中古車の国際流通を詳細に分析しているが、この研究もごく一部の研究者しか取り組んでいない。まして自動車中古部品の場合は、筆者の知る限り筆者がこだわっているだけなのかと唖然とするほど研究の実績がない。

しかし、近年自動車部品の電子制御等が進むことにより、中古部品がうまく起動しないケースが出ている。極端な例を挙げれば、ある自動車を修理する際に、中古部品を付け替えると、自動車そのものが「これは自分の部品でない」と判断するせいか、動かなくなるケースもたまに耳にするようになった。これが電気自動車の時代になると、ますます部品のモジュール化が進み、修理する際にはメーカー純正の部品を丸ごと交換しないと動かなくなるケースが想定される(あくまでも想定の域である)。

日本の整備業界は、年々ディーラー家の整備業者が増加している。スキャンツールを適正に使って、メーカーの提供する車両の分解整備には、やはり純正部品が使われるケースが多い。しかし、しばしば純正部品の価格が高すぎるという意見を耳にする。そこで、社外品(とくに性能が保証された、日本自動車部品協会:JAPAのルートで供給される部品は、「優良部品」と呼ばれている。)が、国際標準では大いに出回っている。私がこの研究を始めた1990年代から台湾製の社外品が、私が訪問した国のほとんどで使用されていた。それはコロナ前の2019年にフランクフルトのメッセで開催されたアウトメカニカ(Automechanika Frankfurt)では、1会場丸ごと、台湾の社外品やオイル等が展示されている建物もあったくらいである。(ちなみに、アウトメカニカは世界14会場で開催されているそうだが、隔年で行われるフランクフルトのメッセでのアウトメカニカは、その中でも最も評判が高い)今年は9月中旬に開催されるようだが、このユーロ高、円安という情勢下での現地訪問は非常に辛い。

しかし、日本のアフターマーケットは車検制度によって多くの認証工場や、指定工場は黙っていても仕事が入ってくるという「錯覚」を持っているという考え方がある。また保険制度で入ってくる修理費を目当てに整備事業を行うケースもあるが、いずれもアフターマーケットやその技術発展を阻害しているのではないか、という見方もたまにではあるが耳にする。確かに日本のアフターマーケットの見本市は東京ビッグサイトなどごく一部で、国内メーカー中心で開催されているが、フランクフルトのアウトメカニカとなるとメッセのほとんどを貸し切って行われるのである。アフターマーケットにおいて技術革新が日本でほとんど進んでいないのは、整備業界に関する自動車研究者が極めて少ないことからも察することができよう。

さて、話が脱線したが、今年の1月オーストリアのザルツブルグで、スイスの環境産業イベントプランナーのICM AGが主催した、第22回国際電子機器リサイクリングコンフェランスに筆者はバーチャル参加した。(コロナ禍のおかげで、このように海外のイベントでの講演や質疑応答を日本にいながらうかがえるのは、誠にありがたい。ただし、当日の参加者名簿を見ると、バーチャル参加者はごくわずかで、大多数は現地参加を選択していた)やはりビジネスとしてのリサイクルは、ステージ上での表面的な情報交換や話題提供よりも、休み時間や懇親会での名刺交換こそが商談やビジネスを開花させるポイントだからであろう。

このイベントのセッション3のテーマが「修理する権利」であった。前述したように自動車補修備品に電装品が増え、電気自動車になればほぼ半分以上の部品がなくなり、しかも修理業は故障診断と、故障部分のモジュールを純正品と取り換えるというビジネス形態になりかねない。場合によっては補助金をもらって新車に買い替えた方が得だという、パソコンのような市場形態になる可能性もある。とくにシェアリングエコノミーが進んだら、自動車管理会社は、いかに効率的に人気のある電気自動車をユーザーに提供するか模索するだろう。そして、その自動車に不具合が生じたときは、できるだけコストを抑えたくなるのは必須であろう。とくに車検時においては、である。

そこで、欧州では様々な修理方法をユーザーが選択できるよう、「修理する権利」が謡われている。その内容を概観したい。

注)「修理する権利」に関する指令(案)段階の邦訳が以下のウェブサイトで確認できる。

https://www.tkk-lab.jp/post/eu-%E4%BF%AE%E7%90%86%E3%81%99%E3%82%8B%E6%A8%A9%E5%88%A9%E6%8C%87%E4%BB%A4%EF%BC%88%E6%A1%88%EF%BC%89

2.講演内容の報告

第1報告
「世界における修理権法制の整備は技術セクターをどう変えるか?」
ジェレミー・フーリオー(HP社、ベルギー)

 

ヒューレット・パッカード( Hewlett-Packard Company)は、hpのロゴや略称で親しまれているアメリカ電子計測機器(とくにパソコン)の製造・販売を行っている日本でも名が知れたメーカー兼ディーラーである。

登壇したジェレミー・フーリオ氏(以下フーリオ氏)は、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学で欧州研究修士号と情報コミュニケーション修士号を取得している(どうでもいい話だが私も経済学と薬学の修士号を取得している。日本ではレアケースだが、欧米のビジネスリーダーには複数の専門を持つ、アクティブな人間が多くみられる。)

フーリオ氏は、ICT分野の経験豊かな専門家で、EUの持続可能性に関する広報を専門としている。欧州委員会の本拠地でもあるベルギーのブリュッセルを拠点に、この分野で約10年の経験を積み、特にEUの持続可能性政策、戦略的思考、コミュニケーションに力を入れている。現在、hp社のEUサステナビリティ&人権シニア・マネージャーを務めるジェレミー氏は、EUグリーン・ディールやさまざまな人権イニシアティブに関連するアドボカシー戦略(ネット時代だからこそ高い満足度がもたらすという考えに基づいた経営戦略)、クチコミの監視、分析、開発において自身の専門性を発揮している。2023年には、ジェレミーは欧州連合米国商工会議所(AmCham EU)環境委員会の副委員長、さらには情報技術産業評議会(ITI)欧州サステナビリティ委員会の委員長に選出された。また、AmCham EUの「修理する権利指令」の課題リーダーも務めている。hp社入社以前は、Plastics Europeの環境担当マネージャーとして、EUグリーンディール、サーキュラー・エコノミー行動計画、その他の環境イニシアチブに関連する立法提案を管理していたという。

さて、フーリオ氏の登壇前に、恥ずかしくも私はEU指令に「修理する権利」に関するものがあることを知らなかった。従来の使い捨ての経済システムを変えるため、循環経済が提唱されているが、その要の1つとしてエコデザインがあり、そのような環境配慮型設計によって市場で販売された製品は、ユーザーの要望に応えて可能な限り修理したり、それが難しい場合は再製造(フーリオ氏は refurbish という語を用いていた。)

正確にはこの時点ではまだ指令(案)の段階だったが、2024年4月23日に、2024年4月23日に欧州議会は「修理する権利」を法的に規定する指令(Directive)を賛成584票、反対3票、棄権14票の賛成多数で採択したことを発表した。この指令は、2年の猶予期間を経て加盟各国で法制化される予定である。

EUではこれまで、製品に2年の保証期間を付けることが義務付けられていた。しかし、故障した際には、高価な部品や専用ソフトウェアが必要で修理費が高騰したり、修理そのものが不便な状況にあり、無償修理より無償交換の方が選択されやすい傾向があった。また、交換のために返品された製品の中には、リユース・リサイクルではなく、そのまま埋立されるものがほとんどであった。今回の新指令の導入後、保証期間内に壊れた製品の修理費用が交換と同等以下の場合、販売者は消費者に不便をかけることなく、合理的な期間内に無償修理することが義務付けられるという。

またメーカーには、補修部品や工具を適正価格で提供することが義務付けられる。さらに、修理を妨げるような契約条項や、ハードウェアもしくはソフトウェア的な技術は禁止され、独立系修理業者による中古部品または3Dプリントされた社外品の補修部遺品の使用を妨げることもできなくなるという。さらに、メーカーは経済的な事情や、過去に、自分の系列外の第3者が修理したことのみを理由として、修理を拒否することは認められなくなるという。

対象製品は家庭用洗濯機、乾燥機、食器洗い機、冷蔵庫、ディスプレイ、掃除機、携帯電話、コードレス電話、タブレットなど。加えて、保証期間が経過してもEUで修理することが義務付けられている製品のメーカーは、技術的に不可能な場合を除き、購入から5~10年間は製品の修理を受け付けることが義務化されている。このほか、新ルールでは消費者が適切な修理サービスを見つけられるようにするための「マッチングプラットフォーム」の導入が予定されているほか、より質の高い修理サービスを提供する事業者を認定するための「欧州修理基準」も策定される計画もある。
修理業者には、修理費、修理期間、修理中の代替品などの主要な点が記載された修理情報フォームを消費者に提供することが義務付けられ、これにより消費者はさまざまな修理サービスを簡単に比較できるようになるという。

以上は「ギガジン」の下記の情報を参照にした。

https://gigazine.net/news/20240424-eu-right-to-repair-rules/ 参照。

なお、2023年当時の指令案は

eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CONSIL:ST_16032_2023_INIT&qid=1703498254543

で原文が読める。

 

北米では「修理する権利」に関わるためには、一定の要求が観られている。「修理する権利」に応えるべき対象製品の範囲は、マイクロプロセッサ(コンピュータで、演算・制御などの機能を1つの半導体チップに集積したもの。 CPU【Central Processing Unit、中央処理装置)などのコンピュータの心臓部にあたる半導体チップのこと。MPUともよばれる)を搭載したあらゆる電子機器があたるという。そして実際に、米国では州によるが(詳細はベアトリクス博士の第3報告で説明する)カナダ(連邦レベル、州レベル)では、修理に関する権利法案を提案するところが増えている。その内容は概して、以下のようになっている。

まず、相手先商標製品製造業者(OEM)に対し、デジタル電子部品・機器の診断・修理情報を提供することを義務付ける。

そのような部品や修理情報が、OEM公認の修理業者も利用できる場合、独立した修理業者や消費者が利用できるようにすること。

OEMが自社に提供しているものと同レベルのリソース(修理マニュアル、オンサイトおよびリモート診断ツール、部品など)を、独立系修理プロバイダーにも(無償または同費用で)提供すること。

そして以下の要件が求められている。

  1. 認定修理パートナー
  2. 修理オリジナル設計メーカー
  3. 自社サービス部隊(診断ツール)

修理可能性スコアや指標も提案されている。

修理を推進する取り組みは、米国でhpも「自己修復オプションを提供すること」が行われているという。対象品目はhp製のラックトップのうち、数種である。

質疑応答では、この修理する権利の責任はだれにあるのか?という点であった。興味深いことにいわゆる拡大生産者責任制度のような用語は出てこず、「連携」が大切だが、やはりユーザーに一番近い位置にいる小売業者の責任が大きいとのことであった。しかし、製造メーカーは補修部品に関する情報は基本的にすべて公開しなければならないと説明していたのは、印象的であった。

 

第2報告
「サーキュラー・エコノミーにおける電子消耗品と印刷消耗品」
ウォード・デ・ウィンター、クローズ・ザ・ループ、ベルギー

 

持続可能性への情熱と廃棄物削減への、身をなげうって活躍しているウォード・ウィンター氏(以下ウィンター氏)は、プリンター・カートリッジのリサイクルと再利用ソリューションの大手プロバイダーであるクローズ・ザ・ループ社で、過去2年間環境産業に積極的に携わってきた。事業開発およびアカウント分野の管理者として、ウィンター氏はクローズ・ザ・ループ社の事業範囲を拡大し、さまざまな分野の企業とのパートナーシップを確立する上で極めて重要な役割を果たしている。

戦略的計画といろいろな利害関係者との関係構築を通じて、ウィンター氏は新規顧客の獲得と既存顧客にさらなる満足を与えることに成功し、クローズ・ザ・ループ社の成長と影響力に大きく貢献している。事業開発におけるウィンター氏の専門知識は、プリンター・カートリッジやその他のリサイクル困難な材料のリサイクルや再利用の新たな機会を特定・追求することにも及び、これらの貴重な資源が埋立されずに、第二の人生が与えられるように日夜努力を重ねている。

廃棄物が環境に与える影響に対する深い理解に基づき、ウィンター氏は環境への影響を最小限に抑え、循環経済(サーキュラー・エコノミー)を促進するというクローズ・ザ・ループ社の使命に取り組んでいる。ウィンター氏の活動は、リサイクル困難な材料を埋立地から転換し、有害な化学物質の放出を防ぎ、貴重な資源を保護することに直接貢献している。

ウィンター氏の講演で筆者がまず気になったのが、いわゆる電子ごみ(E-Waste)の40%しかリサイクルされていないという彼の言葉であった。かつては中国が世界中からの電子ごみを受け入れていたのだが、依然としてEUでも自治域内の循環ができていないことが認識できた(おそらく相当数がアフリカ等に輸出されているのかもしれない)。

ただ、様々な分野で(修理しやすいように)統一化が進むという。EUでは2024年末までに、ほとんどの電子機器の充電器がUSBタイプCに統一されることになっている。また、ノートパソコンは、2026年4月28日までにタイプCに対応するようになっている。

印刷消耗品に関しても、各国は印刷消耗品に関しても、締め付けを行っている。

イタリアとフランスでは、公共入札に参加するプリンター会社に再利用可能なカートリッジを20%提供することが義務付けられている。また、低炭素の目標を設定することも、炭リユースモデルを検討する上で重要なポイントである。リユース部品の活用は、当然新品の使用よりも二酸化炭素の排出が抑制されるからだ(この事例は、日本のリサイクル部品業界で、リ協が行っているグリーンポイントや、NGPによるリサイクル部品活用によるCO削減データなどを思い起こさせる)。

なお、改修(refurbishingという英語で説明があった)に関して、欧州連合(EU)全域において、消費者は購入後14日以内であれば、新たに購入した電化製品を正当な理由なく返品することができることになっている。そして購入した電化製品には、最低2年間の故障保証が付いている。

これらの製品を再販するために改修することは、廃棄物削減のためすぐにできる方法である。

電子製品は様々な供給元から入手可能であり、再生や再利用に最適な高品質の製品も数多くある。これらは次のようなルートから入手可能となる。・お客様からの返品

・ご注文のキャンセル

・破損した商品

・過剰在庫

同社は、白物家電、電気で動く玩具、電池、デスクトップPC、プリンターカートリッジ、ライト、電気カミソリなどの修理と再製造を行っているが、タブレットやスマートフォンの修理・再生は行っていないそうだ(ただし、EUにそれを行っている業者はいるという)。

さらに同社は日本のキヤノンのように、プリンターカートリッジのリユース・リサイクルが得意である。残念ながらEUのカートリッジの約80%は再利用されず。多くが埋立処分されている。現実にはすでにトナーにもアフターマーケット市場があり、第3者がカートリッジに穴をあけてトナーを充填させて、社外品カートロッジとして販売されている。その結果、オリジナルカートリッジのおおよそ25%が、再利用可能となる。しかし、この数値目標はもっと上げないといけないとウィンター氏は強調する。

なお同社のカートリッジのカスケードリサイクルの例として、「トナープラス」という改質アスファルト商品がある。とくに浸出液にマイクロプラスチックが出てこない点もアピールしていた。

ウィンター氏は同社の活動が評価されるには、まずコスト面で優位に立つことが重要だと言及しつつ、競争と同時に消費者の意識を変えていくこと、そして関連企業との協働が風ようであると述べた。

質疑応答では、リサイクルされるカートリッジの充填について多くの質問があったが、同社がOEM企業との連携を行っており、充填するトナーはOEMメーカーから供給されるということであった(この点はhp社のフーリオ氏も補足説明をしていた。)またこの事業は欧州、豪州、北米で行われているということだが、報告したウィンター氏は北米の実情は知らないとのことであった。豪州の消費者の意識は夜会が、回収システムが欧州に比べて成熟していないことは確かだということであった。

 

第3報告
「無駄なく、たくさん修理する。修理する権利:修理業者とリサイクル業者にとっての勝利」
ベアトリス・ポゾ・アルコス、iFixit、米国

 

iFixitが創業した2003年、同社のCEOのKyle Wiens氏にとって、最初に主として取り組んでいたのは、リバースエンジニアリング(生産プロセスの逆の行程で分解するやり方)によってApple製品を修理する方法を見いだすことだった。現在でも同社はこのビジネスを続けている。

それから20年経った昨年「Nokia」ブランドのスマートフォンを手掛けるHMD Globalが、同社初の修理可能なスマートフォン「Nokia G22」を発表したが、この製品はiFixitと提携して設計したものだ。「Nokia G22」を修理したい場合、iFixitを介して、交換部品と修理に必要なツールキットを注文することができ、誰でも簡単に修理できるようになっている。

 

ベアトリス・ポゾ・アルコス博士は、英語、スペイン語、フランス語に堪能で、循環経済(サーキュラー・エコノミー)のためのデザイン分野において熟練した専門家である。家電製品を中心に、故障診断のためのデザインというニッチな分野を掘り下げるテーマで、博士号を取得した(私も自動車リサイクルという、学会では極めてニッチな分野で学位論文を書いたが、やはりこの業界がより健全に成長してくれることで拙稿が単なる「歴史」を語ったものにならないでほしいと切に感じる)。

ベアトリス博士の学術界に根ざした経歴からくる専門知識は、2022年以来、iFixitの修理ソリューション・コンサルタントとして実務に反映されている。この職責において、彼女は電子機器の分解と再組み立ての実践的なスキルを培い、修理のエコシステムにとって極めて重要な研究に鋭く焦点を当ててきた。「修理する権利」に関する法について最新の知識を維持し、iFixitの製造ソリューションチームとともに、電子デバイスの技術革新、設計、法規制遵守の複雑な最適な方法を主導している。

 

iFixit社はメーカーが製品の修理性を高めるため。様々なサービスを行っている。まずは、修理しやすい設計である。このため修理の可能性のための調査及び分析や、修理しやすい設計のためのワークショップも行っている。次に修復サービスをより環境にやさしいものにしていくことである。このため環境負荷の少ない工具の設計や販売のための研究をすすめ、実践している。対象地域は、アメリカ、オーストラリア、カナダ、英国となっている。そして今回の主テーマである「修理する権利」に関して、北米、豪州、欧州での法対応に関してアドバイスを行っている。

この報告では、「修理する権利」のために、製造メーカーに対して、ユーザーや第三者に対して、修理ガイドや、回路図、診断工具と必要なスペアパーツへのアクセスが容易になることが重要だということが強調されていた。また補修部品に関しても、識別が容易で、タイムリーに購入できることが重要であること、さらにソフトウェアに関してもブロッキングなどせず、修理の促進が妨げられないようにすることが言われていた。

筆者が気になるのは、個人情報との関連である。確かに「修理する権利」は重要だが電子電機機器に認識されたユーザーの個人情報が「修理」の名の下で、第三者によって盗まれないかという危惧である。しかしこのような私の観点は的外れだったのか?この場では全く議論の来章ではなかった。

筆者がショックだったのは「修理する権利」に関して彼女がサーベィした国々の中に、日本が無かったことである。(図表1)韓国や豪州、ニュージーランド、さらにはインドにも制度はあるというのに、日本のシステムは認知されていなかった。

実は日本には特定無線設備(携帯やスマホなどの小型通信端末を含む)が電波法に適合しているかを証明する国の制度=「技術基準適合証明・工事設計認証」がある。メーカー以外の事業者が合法に修理をするには、メーカーの研修を受け、何らかのメーカーとのパートナー契約を結び、公式にパーツの供給を受けてから、総務省に「登録修理業者」として登録するという手続きを踏む必要があるらしい。つまり、資格を持たない個人や業者が修理をすると電波法違反に問われる可能性がある。それゆえ、スマホやタブレット等の通信機器に関しては、日本での消費者による 「修理する権利」の行使は、難しい。それが主因で日本では現在のところ、「修理する権利」が法制化される動きはないという。

https://www.re-tem.com/ecotimes/column/feb2024/ 参照。

 

図表1 「修理する権利」に関する規則や法整備が進んでいる地域

資料)IERC2024で公表されたベアトリス・ポゾ・アルコス博士報告資料をそのまま転載。

欧州でも「修理する権利」に関して最も先進的なのはフランスだそうで、2021年に修理可能性に関するフランスにおける指数;Index」を定めることが求められ、ここでは、修理情報、スペアパーツの価格と入手可能性、修理へのサポートの整備、消費者への修理に関する情報提供を行うことが明記されている。

また2023年にEU におけるUSBがタイプCに統一される指令が出された・対象品目はスマートフォン、タブレット、カメラ、その他の電子機器で、2024年12月までに充電口をタイプCに統一しなければならないという。さらにEU スマートフォンタブレット規則の実施である。スマートフォンやタブレットの修理を実現させるもので、2025年6月から施行される。

現在フランスで議論されているのは「耐久性指数」に関する考え方で、すでに実施されている修理性指数に含められる予定である。さらにベルギーでもフランス同様の「修理可能性」指数に関する議論が行われている。またスマートフォンやタブレットに先行されたがEUのラップトップ規則も2024年度末までには成立される見通しである。

図表2は合衆国でも「修理する権利」に関する法制度の進捗状況を表す地図である。2023年待つ段階で3つの州で、電子電機機器に関する「修理する権利」を求める法律が可決されているが内容は微妙に異なる。なお、ニューヨーク州では自動車部品は該当しないと明記してあることにも注目したい。今後EVの普及移管によって、この内容は自動車補修部品にも広がるかもしれないが、すでにDIY文化が成熟しているアメリカではどのような法整備が進むのか、実態はどう動くのか、非常に興味深い。

会場からは、この「修理する権利」のリサイクル業者への影響についてまず質問が出た。博士は正直に「現在廃棄されている量と、【修理する権利」によって回避される量に関する差異のデータはないが、最終的にはリサイクル業者も、効率性を考えるようになり、より地球環境に配慮した行動をとることが肝要だ」とコメントしていた。また欧州と北米との違いに関しては、スペアパーツへのアクセスが米国の方がしやすいのではないか、制度的にはフランスの制度が最も野心的なものだという発言があった。

 

図表2

資料)IERC2024で公表されたベアトリス・ポゾ・アルコス博士報告資料を翻訳して転載

黒色の州が「修理する権利」に関する法制度が整備された州。

AD
 data-src=有償運送許可研修を毎月開催" width="650" height="178" >

有償運送許可研修を毎月開催

せいび広報社では毎月、事故車故障車等の排除業務に係る有償運送許可の研修会を実施しています。会員限定ではなく、全国どの地域からも、法人・個人事業主でもどなたでもご参加いただけます。研修の受講者は、会社の代表者・経営者に限らず、従業員の方でしたらどなたでも、会社を代表して受講していただくことが可能です。

CTR IMG