山口大学国際総合科学部 教授 阿部新
1.はじめに
少子高齢化や自動車の必要性などにより、自動車の保有と廃棄に地域性があることが想定される。それらに関わる資料を整理するため、前回、筆者は山口県に重点を置きつつ、都道府県別の自動車保有台数や中古車登録台数などを整理、確認した(阿部,2022)。本稿はその続きとなる。
2.初度登録年別自動車保有台数
前回では新車に対する中古車の割合(新中比率)を見た。そこでは、所有数量における新中比率(ストックの側面)と登録台数における新中比率(フローの側面)を確認した。そして、いずれの数値でも山口県は他の都道府県と比べて低いことが確認された。また、沖縄県が突出して高いことなども示された。
自動車検査登録情報協会は、『自検協統計 自動車保有車両数』において、都道府県別の初度登録年別自動車保有台数(軽自動車を除く)を示している。同資料によると、初度登録年とは「国内で初めて自動車の登録を受けた年」のことである。図1は、2022年3月末時点の初度登録年別自動車保有台数(乗用車)を用いて、2010年以前の乗用車の割合を都道府県別に示したものである。各都道府県で保有される乗用車のうち、古い車の割合の大小関係を示している。
これを見ると山口県は25%であり、全国平均の31%を下回っている。全国で45番目に低く、愛知県(23%)、島根県(23%)に次いで3番目に低い県となっている。これは、他の都道府県と比べると古い車(2010年以前の車)が少ないということを意味する。上述の通り、山口県の新中比率は低いほうであり、比較的新車を好む傾向があると言える。同時に自動車保有台数における古い車の割合が低いことから、新車を長く使用するわけではなく、早々に手放すということなどが想定される。
図1の他の都道府県を見てみると、沖縄県が最も高い値を示しているが、新中比率のように突出しているわけではない。沖縄県の2010年以前の乗用車の割合は38%であり、2位の北海道と同水準である。また、首都圏の5県(茨城県、山梨県、千葉県、栃木県、埼玉県)が上位10都道府県に含まれる。東京都も32%であり、全国平均よりも高い。
東京都は、前回示した所有数量における新中比率(阿部(2022)図4)では31位、登録台数における新中比率では46位と下位のほうであった。つまり、相対的に中古車よりも新車を好む地域と言えるが、2010年以前の車を保有している割合は上から18位と比較的高い。神奈川県なども新中比率よりは上位にいる。あくまでも予想でしかないが、購入時に新車を好むが長く使用することで保有している車が古いということなのだろうか。
一般に所得の高い層が新車を買い、早々に買い替えるという構造が考えられる。そのため、2010年以前の車の割合は大都市よりは地方のほうが高いという直感があったが、図1の限りではそれは観察されない。2010年以前の車の割合は、前回示した新中比率と同様に、あるいはそれ以上に大都市・地方といった括りで特徴を示すことはできないのかもしれない。
図 1 乗用車保有台数における2010年以前の初度登録車の割合(2022年3月末時点)
出典:自動車検査登録情報協会(2022)『自検協統計 自動車保有車両数』令和4年版
3.中古車流出入台数
これまでの考察結果から山口県では他の都道府県と比べると中古車よりも新車を好むこと、古い車が少ないことなどが見えてきた。新車を購入する一方で、早期に手放すということは、中古車として他の都道府県に流出するか、海外に輸出するか、あるいは使用済みとして解体されるかになる。
都道府県別の中古車流出入台数については、日本自動車販売協会連合会が発行する『自動車統計データブック』に記載されている。同資料によると、対象となる数量は「陸運支局の管轄変更によって流入された台数」と「他県で一時抹消され当該県で新規登録された台数」の合計数とされる。また、登録車のみであり、軽自動車は含まない。
図2は2020年の中古車流出入台数を用いて、流入台数をプラス、流出台数をマイナスとして、流入超過台数が多い都道府県順に並べたものである。山口県は流入超過となっているが、その超過台数は361台であり、流入台数(16,221台)と流出台数(15,860台)がほぼ同数である。他の都道府県と比べると、山口県の流入超過台数は上から37番目であり、少ないほうになる。流入台数、流出台数単体で見てもそれぞれ全国で31番目、26番目である。全国の流入台数、流出台数の合計に対する山口県のシェアはともに0.9%であり、人口や保有台数の全国シェアと比べると低い。この傾向は2019年も全く同じである。つまり、中古車の流出入が多いというわけではない。
山口県の中古車の流入元は、福岡県(2,263台)、広島県(2,210台)、愛知県(1,263台)、大阪府(1,140台)、東京都(1,101台)の順で多く、この5都府県で49%を占める。保有台数の多い大都市から流入するのは自然であり、距離的に近い大都市から多く流入していることがわかる。一方で、中古車の流出先は、福岡県(2,741台)、広島県(2,026台)、兵庫県(975台)、大阪府(733台)、愛知県(676台)の順になり、この5府県で45%である。これも距離的に近い大都市が関係している。
図2の他の都道府県を見ると、北海道や沖縄県がこれまでと同様に上位にいる。つまり、中古車の割合が相対的に高いところでは、流入超過台数も多い。また、下位では東京都や愛知県、大阪府のように大都市を抱える都道府県が並んでいる。これらから大都市は流出地域、地方は流入地域という構造が浮かび上がってくるが、山口県は大都市寄りの構造なのだろうか。なお、2019年についても多少の順位の入れ替えがあるが、概ね同じような順番で都道府県が並んでいる。
東京都は、流出台数で全国最多であるが、流入台数でも全国最多である。図で明らかなように愛知県や大阪府、埼玉県、神奈川県など下位の都道府県は流出台数も多いが、流入台数も多い。これらから大都市においては人口が多い分、中古車の需要も多いということが想定される。同じように上位の北海道や茨城県、福岡県なども流入、流出ともに多い。その他の都道府県は流入、流出が少なく、中位にいる。
例外は沖縄県である。同県は流出台数が全国で最も少ないが、流入台数は全国で20番目と適度に多い。流入台数を流出台数で割ってみると、沖縄県の流入台数/流出台数は702%である。これは他の都道府県と比べると突出しており、沖縄県に続くのが岩手県の207%、福島県の189%、鹿児島県の186%、宮崎県の169%である。沖縄県の特徴はここでも垣間見られる。なお、山口県は先に示した通り、流入台数と流出台数はほぼ同数であり、流入台数/流出台数は102%である。
図 2 都道府県別の中古車流出入台数(2020年)
出典:日本自動車販売協会連合会(2021)『自動車統計データブック』(第39集)より作成
注:流入台数をプラス、流出台数をマイナスとして図示している
4.中古車登録台数における流入の割合
次に中古車登録台数のうちの流入の割合を見てみたい。前回示した中古車登録台数を用いて2020年の中古車流入台数/中古車登録台数を都道府県別に出してみる。その値を高い順に示したものが次の図3である。また、同じ2020年の人口における転入者数/転出者数の値も示している。
山口県の中古車流入台数/中古車登録台数は39%である。図にあるようにこれは全国的には低いほうである。これが意味するのは中古車登録台数のうち、県外の中古車に依存する割合が低いということである。山口県の転入人口は2.3万人、転出人口は2.6万人であり、転入者数/転出者数は87%になる。この値は全国で35番目の低さである。人は県外に出て行く構造となっており、山口県は一般には地方と捉えられる。そのため、県外からの中古車の依存度が高いようにも思ったが、そういうわけではない。
一方、注意しなければならないのは流入(流出)台数の定義である。上記に示したとおり、流入台数は「他県で一時抹消され当該県で新規登録された台数」のほか、「陸運支局の管轄変更によって流入された台数」も含まれる。後者は中古車の購入に伴って流入するもののほか、所有者の転入に伴って流入したものも含まれうる。中古車の需要を考える際には、所有者が変わらずに単に転入に伴って流入したものは排除したいところだが、それがどの程度かがわからない。
分母の中古車登録台数は、新規登録(一時抹消登録した自動車を新規に再登録したもの)、移転登録(所有権の異動のあったもの)、使用者変更登録(変更登録のうち使用者名に変更のあったもの)を対象としている。つまり、これには管轄変更のものは含まれず、その都道府県の中古車の需要の値に近い(もちろん、事業者間の移転、変更も含まれうるため、需要に一致するとは限らない)。分子には管轄変更のものが含まれることから、管轄変更の数量が多いところは中古車流入台数/中古車登録台数も高くなるはずである。
他の都道府県を見ると、確かに東京都、埼玉県、千葉県のように転入者数/転出者数が100%を越えているところは、中古車流入台数/中古車登録台数でも上位にある。つまり、転入者とともに自動車の管轄変更がされているのではないかという想定ができる。しかし、必ずしも中古車流入台数/中古車登録台数の傾向と転入者数/転出者数の傾向が一致するわけではない。福岡県や沖縄県のように転入者数/転出者数が高くても中古車流入台数/中古車登録台数が低いところもある。また、佐賀県や奈良県のように、転入者数/転出者数が低く、100%を下回っているところで中古車流入台数/中古車登録台数が高い場合もある。
山口県の転入者の転入元を見ると、最も多いのが広島県であり、2020年は転入者数の18%を占める。それに続くのが福岡県(16%)、東京都(8%)、大阪府(6%)、神奈川県(4%)である。また、転出者の転出先を見ると、多い順で福岡県(20%)、広島県(17%)、東京都(9%)、大阪府(6%)、神奈川県(4%)が並ぶ。これらは中古車の流出先、流入元でも上位にあるが、愛知県が含まれないなど必ずしも一致しない。
流入台数のうち「陸運支局の管轄変更によって流入された台数」が含まれる割合は、全ての都道府県で一定になっているとは限らず、自動車の保有構造にもよる。例えば、地方で車を保有していた者が大都市に移動する際に車を伴うことはあるだろう。反対に大都市で車を保有していない者が地方に移動することもある。この場合、流入台数のうち、「陸運支局の管轄変更によって流入された台数」は大都市では多く含まれるが、地方では少ないということもあるのではないか。いずれにしろ、その地域の特性として自動車の保有構造、他の都道府県との物流の程度、自地域内の下取り車の発生量など様々な要素を検討する必要がありそうである。
図 3 中古車登録台数/中古車流入台数と転入者数/転出者数
出典:日本自動車販売協会連合会(2021)『自動車統計データブック』(第39集)、総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」より作成
5.レンタカー、カーシェアリング
昨今、カーシェアリングという名で自動車の共有の動きが広がっているとされる。朝倉ほか(2019)では山口県のカーシェアリングの車両台数は少ないことが示されている。具体的にはカーシェアリングの比較情報サイトであるカーシェアリング比較360°の公表データから山口県では2013年になって4台が設置され、2018年に41台と増えていることなどが示されているが、東京都や大阪府と比べると圧倒的に少なく、「地方におけるカーシェア事業はそこまで進んでいない」と言及している。その後、どうなっているかである。
一方、レンタカーはどうだろうか。カーシェアリングは、元来は限られた仲間同士で自動車を共有するという形態だろうが、ビジネスとして成立しているものは事実上、会員制のレンタカーに似たものになっている。そのため、地方で自動車の共有が進まないのであれば、レンタカーも同様のように思われるが、果たしてどうなのかである。
図4は山口県のカーシェアリングとレンタカーの車両台数の推移を示す。カーシェアリングの車両台数はカーシェアリング比較360°の公表データ(各年12月末時点)、レンタカーの車両台数は全国レンタカー協会が集計、公表したもの(各年3月末時点)を用いている。また、レンタカーの車両台数は、公表データでは乗用車、貨物車、特種用途車等、マイクロバス、二輪車に分けられているが、図4では特種用途車等、マイクロバス、二輪車を合計し、「その他」と表記している。
これを見ると山口県ではカーシェアリングに比べてレンタカーの車両台数が圧倒的に多く、カーシェアリングの車両台数は図では見えないほどに少ないことがわかる。2019年、2020年、2021年の山口県のカーシェアリングの車両台数はそれぞれ61台、62台、44台だが、これらの年のレンタカーはその200倍~300倍もの車両台数となっている。
また、レンタカーの車両台数は右肩上がりで増加していることが一目瞭然である。2011年から2020年の10年間で6千台もの自動車が増えている。これに対してカーシェアリングの増加は60台程度でしかない。カーシェアリングの広まりにより、競合するレンタカー市場が縮小するわけではなく、むしろカーシェアリング以上に台数を増やしている。
2021年は新型コロナウィルス感染症の影響があったのか、レンタカー、カーシェアリングともに減少している。しかし、図にはないが、レンタカーは2022年に再び増加し、2020年の水準を上回っている。この傾向は全国のレンタカーの車両台数でも同様であり、2020年までは右肩上がりで増加していたが、2021年に一時的に減少している。
これらのことは全都道府県の合計でも同様である。カーシェアリングに比べてレンタカーの車両台数は圧倒的に多く、カーシェアリングの車両台数の25倍程度と大きな開きがある。また、カーシェアリング、レンタカーともに車両台数が伸びている点も同じである。2011年から2020年の10年間でレンタカーは44万台、カーシェアリングは3万台の車両台数を増やしている。レンタカーの車両台数が2021年に一時的に減少し、2022年に回復している点も同じである。
全国に対する山口県のレンタカー車両台数のシェアは2011年の1.2%から上昇し、直近の2021年は1.4%になっている。人口、自動車保有台数では、全国に対する山口県のシェアはそれぞれ1.1%、1.3%だったことから、レンタカーの車両台数はこれらを上回っている。これに対して山口県のカーシェアリングの車両台数は全国比で0.1%~0.2%程度である。
カーシェアリングの車両台数が少なく、全国比でも非常に小さいことは、山口県の特徴の1つになる。全国の合計でもレンタカーと比べるとカーシェアリングの車両台数は圧倒的に少ないが、グラフ化すると多少はその存在感はある。しかし、山口県(図4)ではカーシェアリングの姿が全く見えない水準である。
また、レンタカーにおける乗用車の割合が比較的低く、貨物車の割合が高いことも山口県の特徴になる。全国ではレンタカーにおける乗用車、貨物車の割合はそれぞれ50%程度、40%程度であるが、山口県の場合は乗用車が40%程度、貨物車が50%程度である。工業や建設業など関連する産業の影響なのだろうか。
図 4 山口県におけるカーシェアリング、レンタカーの車両台数の推移(単位:台)
出典:カーシェアリング比較360°「カーシェアリング市場動向」、全国レンタカー協会「運輸支局別レンタカー車両数について」より作成
注:カーシェアリングの車両台数は各年12月末時点、レンタカーの車両台数は各年3月末時点のもの
図5は2020年のカーシェアリングとレンタカーの車両台数について、全国の合計に対する各都道府県のシェアを並べたものである。2020年の全国に対する山口県の車両台数のシェアはカーシェアリングで0.2%、レンタカーで1.4%である。これらの値は都道府県別の順位で言うと、カーシェアリングが36番目、レンタカーが26番目の大きさであり、中位から下位にあたる。山口県よりもカーシェアリングの車両台数が少ない都道府県は結構ある。2020年の数値では鳥取県(9台)、佐賀県(20台)、徳島県(21台)、高知県(22台)、秋田県(24台)などが少ない。いわゆる地方であり、公共交通が縮小している中で自動車は必要なのだが、サービスとしてのカーシェアリングの車両台数は拡大していない。
これに対して大都市のカーシェアリングの車両台数は比較的多い。図ですぐに目につくが、東京都の車両台数は全国の38%を占める。それに続くのが大阪府(14%)、神奈川県(11%)、兵庫県(6%)、埼玉県(5%)、千葉県(5%)、愛知県(5%)、福岡県(4%)、京都府(3%)、北海道(2%)、広島県(2%)である。人口が多いことからサービスが大都市に集中するのは自然だが、上位10都道府県で90%にもなっている。
一方、レンタカーの車両台数は、カーシェアリングの車両台数ほどに大都市に集中していない。最も多いのが愛知県であり、全国におけるそのシェアは7%である。それに続くのが北海道(7%)であり、東京都(7%)は3番目になる。それ以降は、大阪府(6%)、千葉県(5%)、神奈川県(5%)、福岡県(5%)、埼玉県(4%)、沖縄県(4%)、兵庫県(4%)になり、上位10都道府県のシェアは53%である。これらを見ると、レンタカーのほうが相対的に分散していると言える。
全国における各都道府県のシェアについて、レンタカーよりもカーシェアリングのほうが大きいのは、埼玉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県の6都府県である。これら以外の41道県でレンタカーのシェアのほうが大きいということだが、北海道や沖縄県などのようにその差が大きいところもある。カーシェアリングが都市型の性質を持っているからなのか、または市場の発展段階にあり、今後レンタカー並みに普及していくことなのかなど様々な議論が考えられるが、今後観察していく必要がある。
図 5 カーシェアリングとレンタカーの都道府県別車両台数の全国比(単位:%)
出典:カーシェアリング比較360°「カーシェアリング市場動向」、全国レンタカー協会「運輸支局別レンタカー車両数について」より作成
注:カーシェアリングの車両台数は各年12月末時点、レンタカーの車両台数は各年3月末時点のもの
6.使用済み自動車リサイクル
最後に使用済み自動車に関するデータを見ておく。これについては自動車リサイクル促進センターの『自動車リサイクルデータBook』(PDF版、エクセル版、Web別冊編)で確認できる。図6は山口県の使用済み自動車の引取報告件数(引取工程および解体工程)と解体工程の稼働事業所数(以下「解体事業所数」)を示している。同資料によると、稼働事業所とは登録事業所のうち当該年度に移動報告を行った事業所を表すとある。
図6を見ると山口県ではいずれも減少傾向にあることがわかる。使用済み自動車の引取報告件数(引取工程)は事実上使用済み自動車発生台数になるだろうが、この範囲では2013年度の5.7万件が最も多い。それ以降は減少傾向であり、2018年度に一時的に前年を上回ったが、2021年度は3.7万件になっている。これは2013年度の3分の2の水準である。
解体事業所数においても2012年度は33事業所だったものが2021年度は26事業所になっている。図にはないが、引取工程の稼働事業所数は2012年度の295事業所から2021年度は172事業所に、破砕工程の稼働事業所数は2012年度の16事業所から12事業所にそれぞれ減少している。
使用済み自動車の引取報告件数および解体事業所数の減少は全国の合計でも同じである。2012年度から2021年度において使用済み自動車の引取報告件数(引取工程)は2013年度の343万件が最も多く、2018年度に一時的に前年を上回ったものの、減少傾向が続き、2021年度は304万件となっている。解体事業所数(稼働事業所数)も2012年度に4,065事業所だったものが、2021年度は3,233事業所となっている。
全国における山口県のシェアは、引取報告件数においては2016年度まで1.6%だったものが、2017年度に1.5%、2019年度に1.4%、2020年度に1.3%と下がってきており、直近の2021年度は1.2%である。全国の引取報告件数も減少しているが、山口県はそれ以上に減少しているということになる。
図 6 山口県の使用済み自動車引取報告件数と解体工程事業所数の推移
出典:自動車リサイクル促進センター『自動車リサイクルデータBook』(エクセル版)より作成
一方、他の都道府県ではどうだろうか。『自動車リサイクルデータBook』では都道府県別の使用済み自動車引取報告件数において、2021年度の対2012年度比を示している。これを図示したのが図7である。全国の合計では89%であるのに対し、山口県は67%であり、43番目(下から5番目)の低さである。山口県より低い都道府県は、福井県(61%)、大阪府(58%)、滋賀県(57%)、東京都(37%)である。東京都の2012年度引取件数は8万件だったが、連続的に減少しており、2021年度は2万9千件である。山口県より上の都道府県は、低い順で岩手県(67%)、秋田県(69%)、宮城県(69%)、神奈川県(70%)などになる。
中国地方では、他の4県全てが100%を下回っているが(鳥取県:85%、島根県:75%、岡山県:89%、広島県:85%)、山口県の低さは突出している。四国地方も同様であり、香川県(76%)、高知県(76%)は山口県ほどに低くはない。徳島県(109%)と愛媛県(113%)は100%を上回っている。九州のほうでも、最も低いのは長崎県の86%であり、山口県ほどではない。山口県の隣県の福岡県も92%である。100%を上回っている県もあり(佐賀県、大分県、宮崎県)、特に佐賀県は167%と全国で最も高い。
全国で見て佐賀県に続いて高いところは、和歌山県(139%)、茨城県(135%)、京都府(125%)、沖縄県(124%)、千葉県(122%)である。これらは必ずしも連続的に増加しているわけではなく、年によっては減少している。減少または増加の要因は丁寧に見るしかない。
図7では解体事業所数の対2012年度比も示している。茨城県や千葉県のように引取件数増加とともに、解体事業所数も増えているところがある一方、佐賀県や和歌山県のように引取件数が増えているにもかかわらず、解体事業所数が減少しているところもある。さらには、富山県や山梨県のように引取件数の減少ほどに解体事業所数が減少していないところもある。これらの実態はどうなっているのか。さらなる調査が必要であろう。
図 7 2021年度の引取報告件数(引取工程)、解体事業所数の対2012年度比(都道府県別)
出典:自動車リサイクル促進センター『自動車リサイクルデータBook』(エクセル版)より作成
前期末自動車保有台数-当期末自動車保有台数+当期新車販売台数によって算出される抹消登録台数(廃車台数)は、使用済み自動車台数と中古車輸出台数の合計の近似値になる。暦年のデータになるが、2014年から2020年の山口県の抹消登録台数(軽自動車を含む)を算出すると、2014年から2019年までは7.5万台前後で推移している。ところが2020年は6.7万台と大きく減少している。
中古車輸出台数を示す輸出抹消登録台数は、山口県では2014年から2019年までは大きな変動はなく、1.2万台前後であるが、2020年のみ1.1万台を下回る実績となっている。2020年の抹消登録台数における輸出抹消登録台数の割合は16%である。その前の2014年~2019年も16~17%程度であり、実はあまり変わっていない。これらを見ると、山口県で使用済み自動車台数が減少した要因として、中古車輸出台数の増加というよりは抹消登録台数そのものが減少していることが想定される。なお、全国において抹消登録台数のうちの中古車輸出台数の割合は28~30%である。それと比べると山口県において抹消登録されたものは国内で循環すると言ってよい。また、輸出抹消登録台数には軽自動車が含まれないが、軽自動車の中古車輸出はほとんどないことが想定される。
抹消登録台数の減少については、保有台数の増加によるものと新車販売台数の減少によるものとがある。前者は自動車が行き渡った日本の現在では考えにくく、しばしば減少することがある。前回触れたように、山口県の自動車保有台数は横ばいから減少傾向にある。この結果、前期末自動車保有台数-当期末自動車保有台数が限りなくゼロに近づき、プラスになる年が出てきている。これは抹消登録台数を押し上げることになるが、それ以上に新車販売台数が減少していることで、山口県の抹消登録台数は減少していると言うことができる。新車販売台数は、2014年は8.4万台と多いが、2015年~2019年は7.5万台前後で推移し、2020年は6.6万台と大きく減少している。保有台数が減少しているにもかかわらず、新車販売台数が減少することで、使用済み自動車の発生台数が減少していることが窺える。いずれにしろ、都道府県別の使用済み自動車の発生量およびその要因を議論するにはより一層、丁寧にデータを見る必要がある。
7.まとめ
本稿では、前回とあわせて自動車の保有と廃棄について、山口県を中心に都道府県別のデータ・資料を見た。山口県の人口は1985年以降減少し続けており、また高齢化率も高い。そのような中で自動車保有台数も減少に転じてきている。しかし一方で、自動車は生活必需品とも言え、その保有割合は高いという直感がある。
本稿によると、全国に対する山口県の人口の割合は1.1%である。これに対して自動車保有台数の全国に対する山口県の割合は1.3%であり、若干であるが人口を上回っている。これは自動車の必要性を表しているものと思われる。
しかし、他の都道府県と比べると自動車の保有が多いわけではない。自家用乗用車の世帯当たり普及台数でみると山口県は全国平均より多いものの、全国で30番目と少ないほうである。地方は自動車が必要であり、山口県は上位に位置するものと思いきや、そういうわけではない。この事情は全国消費実態調査でも示されているが、この山口県の保有構造をどう捉えたらよいかである。
また、しばしば所得の違いなどにより地方において、古い車が多く走っているような印象を持たれることがある。確かに大都市から中古車を購入することはあるだろうが、地方で古い車が多く走っているかというとそういうわけではない。これについて、今回、都道府県別に新車に対する中古車の割合(新中比率)を算出してみたが、大都市と地方を特徴づける傾向は見当たらなかった。何をもって大都市、地方とするかにもよる。
そのような中、地方に位置付けられるはずの山口県の新中比率は低いということがわかった。初度登録年別の保有台数を見ても古い車の割合は相対的に低く、山口県は比較的新車を好むということが見えてくる。新車として保有し、早々に手放すという構造なのかどうかである。その一方で山口県の使用済み自動車の発生量は減少してきている。新車販売台数の影響が強いように感じられたが、それは今後の課題としたい。
本稿で見たように都道府県別のデータは、全国のデータと比べるとはるかに入手が難しい。また、暦年や年度など統計の集計時期が統一されておらず、正確に議論を進めるためには月別データなども入手する必要がある。さらに、データによっては軽自動車を含まないものもあり、別途探して追加する必要もある。地域の資源循環の特性を捉えることはハードルが高いが、これらを丁寧に見ることが重要である。
参考文献
- 朝倉登志弘・下川茅里・比嘉歩美・柳生哲平・阿部新(2019)「地方・若者向けのカーシェア市場の課題と方向性 -山口大学の事例から-」『速報自動車リサイクル』(97),20-31
- 阿部新(2022)「自動車の保有と廃棄の地域性に関する資料整理:山口県を事例として(前編)」,https://www.seibikai.co.jp/archives/recycle/10926,2022年11月29日最終アクセス
- カーシェアリング比較360°「カーシェアリング市場動向」自動車検査登録情報協会(2022)『自検協統計 自動車保有車両数』令和4年版
- 自動車リサイクル促進センター『自動車リサイクルデータBook』(エクセル版),https://www.jarc.or.jp/data/databook/#gsc.tab=0,2022年11月29日最終アクセス
- 全国レンタカー協会「運輸支局別レンタカー車両数について」,https://www.rentacar.or.jp/about/archives,2022年11月29日最終アクセス
- 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」,https://www.stat.go.jp/data/idou/index2.html,2022年11月29日最終アクセス
日本自動車販売協会連合会(2021)『自動車統計データブック』(第39集)