2017年(20周年記念) BSサミット事業協同組合
お客様(カーユーザー)、損害保険会社、組合員工場のトリプルプロフィット(三者間利益)を追求する、車体整備業におけるプロ集団のネットワークであるBSサミット事業協同組合(磯部君男理事長)は、去る7月10日、11日の2日間に亘って2017年 全国大会をANAインタコンチネンタルホテル東京にて開催した。
近年の車には様々な素材が使われている上に、車載コンピューターのネットワークが張り巡らされるなど、車体整備業こそ最新情報が求められている。今回の特集では大会を通じて、同組合の取り組みについて紹介する。
磯部君男理事長挨拶 (抜粋)
おかげさまでBSサミットも設立20周年記念大会を迎えることができました。改めて御礼申し上げます。
ここでBSサミットの昨年実績について簡単にご紹介いたします。始めにDRP入庫実績ですが、DRP入庫台数は83,293台、金額ベースで153億8,351万4,000円となっており、対前年比台数ではマイナス7%、金額ベースでもマイナス6%となっております。
一方、ロードサービス取扱台数ですが、合計38万546台、金額ベースでは60億1,750万円となっており、対前年比台数ではプラス6%、金額ベースでもプラス14%となっております。
昨年、2016年の軽自動車を含む国内新車販売実績ですが、前年比マイナス1.5%の497万260台と、2年連続で前年を下回りました。登録車では前年比マイナス3%となりましたが、軽自動車はマイナス9%となり、販売台数減の主要因となりました。
このような中、昨年秋、長い自動車100年の歴史の中で、またしてもエポックメイキングな出来事がございました。それは昨年9月に開催されました、パリモーターショーにおいてこれまで欧州自動車メーカー各社が進めてきました、プラグインハイブリッド車に代わって主役が電気自動車にシフトし始めたことです。
驚いたことに世界自動車販売台数第1位のフォルクスワーゲン社は、5年以内に大半のクルマを電気自動車にするとの宣言をしたことです。
この背景としては、ドイツは2030年までにエンジン車の新車販売を禁止する法案を可決したことが挙げられます。さらにEU全体でも実施するように進めております。
さらにもう一つ、次世代自動車に大きな流れが起きております。それは自動運転車開発競争に係るインフラ技術の1つに、自動車への人口知能すなわちAIの導入があり、このAIと共に次世代自動車コア技術の大きなものとして、コネクテッド技術があります。
それはIOT、つまりすべてのものがインターネットを介して動くことであります。クルマがインターネットを介して常時コネクテッド化され、外部とのデータ通信を煩雑に行うようになります。
BSサミットとしては完全なる自動運転車の出現は2020年が初年度だと想定しており、これを実現させる次世代自動車技術としてコネクテッド技術がございます。
既に現実化しているものや、近々導入される技術もありますが、我々がこれまで培ってきた自動車社会の常識を一変するかと思います。
そこで今年のテーマとしては、コネクテッドカー出現により車体整備業界が受ける影響を切り口にお話しさせていただきます。
コネクテッド技術の機能と自動車社会が受ける影響ですが、①ドライバーによる調整不要の自動運転バックアップ技術、②準天頂通信衛星の複数基使用による安全性向上、③エンターテインメント-これはスマートフォンとの連携やWi-Fi、SNSへのアクセス、④ウェルビーイング-ドライバーの疲労を検知して電子機器で警告し、快適な運転環境を維持する、⑤カーシェアリングなど自動車機能の遠隔操作による車両管理、⑥サービス関連情報、走行管理などのビッグデータの表示や使用状況のテレマティクス化、⑦ホームインテグレーションなどの自宅と事務所との連携、以上7項目がコネクテッドカーの機能と車体整備業が受けるであろう影響と考えます。
電気自動車台頭による影響についても申し上げます。電気自動車の出現による車体整備業界への影響について、次のように想定しております。
近未来、電気自動車は航続距離も長くなり、電気自動車のシェアは急激に増えることは十分考えられます。直近の情報ですが、現時点では1充電300キロ走行のものが、今年秋または来年早々に1充電600キロ走行可能な国産電機自動車の出現が予定されています。
また、充電ケーブルが不要なワイヤレス充電、走行中も充電可能なインフラ整備も検討されるなど、電気自動車の充電環境は多様化してまいります。早ければ1年以内に電気自動車は、ガソリン車と同等の航続距離となり、長距離走行の不安もなくなります。
大手自動車メーカーの中には、一気に電気自動車へのシフトを明確にしているメーカーも少なくありません。現在のガソリン車、ディーゼル車も構成部品数は一般的には3万点と言われておりますが、そのうち1万1,000点の部品が不要となるようです。
例えば、エンジン関係部品を細分化すると、1万点から3万点で構成されておりますが、電気自動車ではモーターの部品点数は30 ~ 40点ほどとなり、インバーターの部品点数を加えてもおよそ100点となります。
この部品点数の大幅減は、金額にしてみると台当たり50万円以上の部品代がなくなることになります。日本自動車部品工業会によると、1年間で3兆円規模の売上を失うかもしれないとのシミュレーションの結果もあり、アフターマーケットへの影響は大きいことが想定されます。
車体構成部品についても、従来の材料からマルチマテリアル化が並行して進む関係から、部品経済も大きく変わることが想定されます。
アフターマーケットの部品販売業は部品点数の減少に伴い、売上高減少となり、部品サプライヤーだけに留まらず、アフターマーケットそのものにも多大な影響が及ぶことも考えられます。
現時点の事故車修理見積書の部品大60%、工賃40%にも影響することが想定されます。さらに整備工場経営にも大きく影響すると言っても過言ではありません。
センセーショナルな内容の話ばかりとなりましたが、これらについて知っておくことと、知らないままでいることとは車体整備業界にとって大きな差が出てまいります。
これまで述べてきましたコネクテッドカーの出現と車体整備業界への影響を考え、2017年の事業戦略はこのような内容となります。①コネクテッドカー時代への諸課題への対応、②世界基準の車体整備業へのさらなるステップとして「TÜVゴールドランク工場」を目指す、③新たなビジネスプランの策定を行いさらに展開していく。
次世代自動車時代へ突入し、我々の予想を超える激しい変化の時代となっております。このような急激な変化に対応していくには、BSサミットの組織体制をフレキシブルに動ける組織にチェンジすることが喫緊の課題と考えております。
最後になりますが、BSサミット事業協同組合は次世代自動車の車体整備工場として、新技術対応への先駆者として、わが国車体整備業界をリードすべく、展開を進めてまいります。
技術教育委員会
駒場豊委員長
技術教育委員会は改めて、技術的見地から自動車の車体及び車体整備に変革が起きていることについて触れた。
これに関連して「事故車修理の流れが変わる」として、事故車入庫から請求書作成(納車)に至るまでどんなプロセスがあるかを、従来のやり方とこれからのあり方で比較(上記プレゼン資料参照)。当然のことながら、今後到来するコネクテッドカー時代には従来の経験と勘に頼った修理では十分に対応できず、より多くの項目が加わった修理の流れが必要であることを訴えた。
この中でもカギを握るのは、先進安全予防装置(ADAS)の再設定で、これだけでも10項目以上あり、さらにいえば、ADASの再設定の一環として、車体の中心点をきっちり設定しておかないとADASが正常に機能しないため、この中心点を設定する作業=エーミングが重要になってくること、またそれを行うにはスキャンツールが必要であることを強調し、今年度はBSアカデミーとしてスキャンツール研修会を行うことを発表した。
フロント教育委員会
奥谷丈輝委員長
フロント教育委員会では2016年度、研修メニューとして「CSグレードマスターコースⅡ」を設定し、研修を行った。
常にお客さまの期待を超えることで、次の取引の機会を得るべく「~マスターコースⅢ」を設定していたが、上記の期待を超えるために店舗のCS向上を可能にするための研修をということで設定されたのが「~マスターコースⅡ」である。主なカリキュラムとしては、①理解・納得いただける説明スキルの向上、②お客さまアンケート活用の取り組み推進、③標準化・水平展開の課題と優良事例の共有、を掲げている。
受講者からは「分かりやすい話法や説明ツールの使い方を学べた」「アンケートを活用することの意義を認識できた」「つまづく原因や解決策について発見が得られた」「朝礼や勉強会での優れた取り組みを共有できた」などの高評価を得られた。
今後の研修運営としては、優れた運営の水平展開をテーマに、理想的な運営をしている支部をモデルとして、研修の取り組み成果を高めていくとしている。
ロードサービス委員会
森松和博委員長
ロードサービス委員会は2016年度、自動車救援士資格取得支援を行った結果、資格取得者が50名増え、累計取得者が220名(在籍組合員数110社)となった。また設備面では、前回の全国大会でも提案した、同委員会推奨のレッカー車が新規導入が10台、増車・更新で6台という結果となった。
こうした様々な取り組みの結果、ロードサービス実績は、出動件数38万546件(前年35万7,679件)、売上金額60 億1,750 万1,000 円(同52 億6,145万8,090円)といずれも前年を上回る、過去最高を記録した。
出動件数の増加に伴って、ロードサービスの認知度が向上するに連れて、2回目以降のトラブル発生時も救援依頼される契約者が増加したという。
2017年度の活動計画としては、出動率アップに繋がる研究と提案を行うとしており、中でも生産性の向上を目的とした動態管理システム(色別で隊員の状態と現在位置を把握し、現場に最寄の隊員に指示を出せる)を研究している。