自動車整備業の接客対応術50
ある整備工場のクレーム処理の結果が失敗に終わり、口コミに乗った状況を参考としてみましょう。定期点検整備をきちんとする上得意のお客様の車が、車検後2ヶ月目の走行中にエンジンが停止してしまいました。JAFに救援してもらったところ、オイルがなくなってエンジンが焼きついて手の施しようがないとのことでした。
いつも整備している整備工場に運んだところ「エンジンを乗せ換えなければだめだ」としか答えはかえってきませんでした。友人にこの話をしたところ「オイルが漏れた形跡もなく、マフラーから白煙を吐いていたわけでもないのに、車検から2ヶ月でエンジンオイルがなくなるとは考えにくい。車検のときにオイルが十分入っていなかったとしか考えられない」との意見で、この話を整備工場に言ったところ、「エンジンオイルは十分に入れました。エンジンオイルの警告ランプの点灯に気づかなかった客自身の責任だ」と言われたそうです。
この客は女性で、車の構造をよく理解していなかったのは確かですが、それゆえに定期点検を整備工場に任せていたのです。この対応の結果、彼女は友人の忠告したがいエンジンの載せ換えを止めて新しい車を購入し、今迄馴染んできた整備工場との縁を切ったのです。そして、あそこの整備工場はいいかげんで無責任だから利用しない方が良いとの話が、友人関係に瞬く間に広がってしまいました。
また、この整備工場を紹介したのは常連客になっていた別の友人だったのですが、この友人もその話を聞いて利用することを止めてしまいました。おそらくは、エンジンオイルがなくなる原因は工場にあり、エンジンを壊してしまったのは女性の知識と関心不足にあると思われます。口コミに乗る情報は、例としてあげたような悪い内容か、あるいは飛びぬけてよい内容のどちらかで、自分以外にも話したくなるようなショッキングなものに限られます。
そこで伝えられた情報は人から人へと語られ、時には尾ひれがついて情報の一人歩きが始まります。今ではSNS・ブログの発達によって口コミが近所の友達だけではなく、全世界へと発信されてしまいます。一つの対応が思わぬ結果を招くことになります。最近お客さんが減ったと思ったら、ネット上であらぬ情報が出回っているかもしれません。
時代と共にお客様も変化します。インターネットを使用するのが当たり前の世代が購買層として増えてきています。そうなると今迄どおりのやり方だけでは、通用しないことが多くなります。時代の変化についていくためにも、常に新しい情報を確保し、変化に対応しなければいけません。
その上で、口コミに乗るほどの信頼される整備工場となるためには、際立ったものを持つ会社となることを目指さねばなりません。そして、いつも真剣勝負の経営を継続することです。