自動車整備業の接客術50
顧客満足は現場で作られますので、第一線の現場が顧客満足のもっとも大切なところであります。現場こそが看板なのです。お客様本意の経営は多くの業界が目指すところで、整備会社でも「お客様を大切に」「お客様あっての会社」「お客様に信頼される会社を目指そう」などの社訓や標語が掲げられているのを数多く目にするようになりました。社長も朝礼などで「お客様に喜ばれるよう心がけて下さい」と訓話をされ、社員全員が一丸となってお客様に対してがんばる整備工場が増えてきております。
しかし、成功している会社は少なく、大半は掛け声だけに終わっているようです。同じようにやっていてなぜ差がつくのでしょうか、整備業はお客様の満足に応えるサービス業種だけに、お客様の方が神経鋭敏になっていることに気付き、よりきめ細かいサービスに心掛けなければなりません。
お客様がフロントに来たことを気づきながら、電話対応にかかりっきりで、会釈してお待ちくださいとの態度すら見せない。フロントに入ってきた整備士も「いらっしゃいませ」とも「ご用件をお伺いします」とも言わずに、自分の用事だけを済ませて工場に戻って行く。壁には「お客様を大切にする地域一番の工場を目指します」と書いた額が掲げてあるのが目に映ります。そこに、社長とおぼしき人物が登場し、「いらっしゃいませ、お待たせしているようですが、ご用件は」とさすがにそつがありません。ところが電話が終わったフロント担当に「どこからの電話だ、なんだ吉田か、あいつはうるさい客だから適当に切り上げなきゃダメだろ」と言って、客の方を振り返って、「困った客なんですよ。素人なのに文句が多くて」と言う。なるほどこの社長にしてこの社員ありきか、お客様第一なんて口先だけのことかと客は黙って帰ってしまいました。
社長は日頃から率先して顧客満足経営の実際を、社員の前で実践して見せることが大切で、「やってみせ、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」であり、しつけや教育の徹底に終わりはありません。