ここ最近になって異業種が自動車業界に乗り出すケースが活発だ。レンタカーや廃車、パーツ販売代行や保険の取次ぎまで、様々な自動車にまつわることを異業種が展開している。そんな中、松戸市にオフィスを構える日本FPサポーターズ合同会社の西岡周一代表も積極的に自動車産業に関与している。
悩み相談から自動車販売まで
日本FPサポーターズ、FPとは、つまりファイナンシャルプランナーを意味する。代表の西岡氏はいわゆる成果報酬型の営業マンとして保険の販売を行っていた経験を持ち、某メーカー系ディーラーの保険販売部門のトレーナーとして派遣された経歴を持つ保険エキスパートなのである。
「現在は独立起業しFPコンサルティングをしています。そんな中、お客さまのライフプランを設計していた時に『自動車を手配してもらうことは出来ますか』という申し出がありました。実は昨年8月にビークルネクストが展開するNPS(ネクストパートナーズシステム)の代理店となり、自動車の販売も事業の1つの柱としていくための準備をしていた矢先のことで、幸先よく自動車販売部門を立ち上げた直後の第1号納車となりました。自動車を欲しい人は沢山いるのに『新車ディーラーは敷居が高く、売り込みがきつそうで行くのを躊躇してしまいます…』『気軽に自動車を見て回りたいと思っても行きづらいです』という声を良く聞きます。
当社の営業スタイルはお客さまと仲良くなることから始めるので、信頼をしていただくことが出来れば異業種からのアプローチからでも自動車の販売は出来ると思いました。NPSのネットワークを上手に使えば、販売後のメンテナンスも不安がありません」と西岡氏は語る。
NPSは大手オークションとの連携、ファイナンスリース、新車見積りなどを行える仕組みであり、インターネットが使える場所ならば何処でも営業活動が出来る。『集客とニーズのバランスが取れて販売を行うケースが、特に異業種の導入に多いです』とビークルネクストの伊藤亮祐社長は語る。
異業種だからこそ見えるものがある!
西岡氏自身もクルマが好きということもあり、自動車に携われることに幸せを感じているそうだ。そんなクルマ好きの目から見た現在の自動車整備、販売業界について感じていることがあるとのことだ。
「私が思っているだけではなく周りの一般の方からもよく聞くのですが、人を寄せ付けないオーラが出ているお店が多いですね。販売店に関しては展示車を見ているだけなのに、名刺を差し出され『〇〇(車種名)をご検討ですか?』から始まるセールストークを一方的に話される。
まずは自動車を見てみたいだけのに『冷やかし客と思われないかな』と思うと足が遠のきます。自動車整備店にしても整備は得意でも接客ができない人が多いように思います。一般の素人客に専門用語を使って説明されても分かりづらいばかりで、それが不透明感を招き、適正な整備料金の請求でも『なぜこんなに高いのかしら』と不信に思う人も少なくないです。販売店はもっとお客さまに気軽に来てほしいと思っているのであれば、そうなるような工夫が必要だと感じます。イベント開催もいいですが、売り込み感が出てしまいます。それならお客さまが毎月本屋やコンビニで定期的に買っている自動車雑誌を自動車ディーラーで売っていれば、お客さまは気軽に足を運んでくれるでしょう。敷居の低い接点をもっと多く作ることだと思います。自動車整備店も同様で、点検や修理の時には必ず利用してくれるお客さんを増やせると思います。
何かモノを売ったり扱う以上はサービス業なのですから、もっとお客さまの側に立った考え方やお店作りをして欲しいという声はよく聞きます。自動車関連の接点とするいい例が保険だと思います。
保険は自動車に乗る以上は付いて回りますが、詳しく理解していないお客さまが多いのではないでしょうか。それならば自動車保険を詳しくそして分かりやすく教えてあげたらお客さまはきっと喜びます。
そして、自動車保険だけしか扱っていないのは勿体ないです」と語る西岡氏。
最近ではCSやESにも気を遣った整備工場は少なくない。そういった中で、一ユーザーの視点で見ると上記のようなイメージを持つとのことだ。この事実を真摯に受け止めて経営に活かせば自動車業界も活性化してくるはずである。
売り込まなくてOK!
役立つことを実感すれば成果は出る!
そんな西岡氏は、自動車業に対して生命保険販売のノウハウを教えてくれた。
「自動車保険でも生命保険でも保険担当者がいると思いますが、特に生保の場合はお客さまを保険担当に合わせる時に一工夫すると成約率が上がります。
その工夫というのは、担当の営業マンがお客さまに『当店の保険担当は説明も上手でとても分かりやすくて、聞いていただいたお客さまはみなさん役に立った、聞いてよかったって言ってくれるんです。きっと〇〇さんにも喜んでもらえると思うので、私と一緒に聞いてみませんか?』
とお誘いします。そしてお客さまと一緒に保険担当の話を聞くことです。
保険販売がうまくいかないケースは、お客さまをお誘いする営業マンが『ぜひ保険の話をさせてください』『いい保険があるのでウチの保険担当の話を聞いてくれませんか』と売り込んでしまうことです。
自動車の営業マンは保険に詳しくない方が保険販売は成功します。お客さまと同じ目線で保険担当の話を聞くというのがポイントですね。優秀な保険担当の話をお客さまと一緒に聞いていると『保険ってこんな仕組みになっているんだ。こんな時に保障されるんだ』と保険がお客さまの役に立つということを実感します。そうすれば売り込みではなく、お客さまのために声がけするようになります。
このような取り組みを保険成約率がゼロに近かったディーラーで行ったところ、3 ヶ月で圏内一位の保険獲得率となりました。半年は掛かると思っていましたが、営業マンがお客さまのためになるということを実感したため、保険を売り込まないにも関わらず最良の結果になりました」
と西岡氏は語る。
昨今の自動車業界の中で、保険は顧客との接点を増やす意味でもまた本業以外の収益源としても積極的に取り組む企業も多い。だが「保険は売り込むと失敗しますよ。最悪なのは保険販売の失敗と共に自動車の顧客が離れていくこと」と西岡氏は語る。ちなみに西岡氏の将来の目標を聞くと、「自動車好きの大人たちでスポーツカーを所有するクラブを作りたいです。子育ての終わった普通のおじさんたちでスポーツカーを乗り回すんですよ。もちろんNPSで買っていただいてね(笑)」自動車を買うハードルが下がり、敷居の高いお店、入りにくいお店には顧客は立ち寄らなくなる。上手に顧客との接点を持ち、しっかりとしたコミュニケーションを取っていかなくてはならない。今一度、顧客との信頼関係の構築方法を見直して行く必要がありそうだ。