免許の切り離しと別立ての安全移動、両面で考える
年明け、3学期の開始と同時に、またも高齢ドライバーによって2人の女子高生が巻き込まれる事故が発生した。こうした事故が起きる度、「高齢者の免許を取り上げろ」という議論が巻き起こる。この事故の運転者は免許更新の際に認知症の判定は出なかったために免許が更新され、結果的に今回の事故に繋がってしまったわけだが、過去に何度か事故を起こした経緯もあっただけに、何とか防ぎようがなかったのだろうか。
私の祖母でも同じ経験があるが、普段認知症の症状が出ている人でも、例えば外部の人と接するといった緊張感を伴う場面では普段見せないような頭の冴えを見せたりする。今回の運転者も同様だったのだろう。そうなるともはや、症状に関わらず、一定の年齢になったら免許を取り上げるしかなくなってしまう。
仮にそうなったとしても、単に免許を取り上げただけでは、高齢者が事故を起こす可能性をなくすことができても、彼らの「移動したい」という欲求・ニーズは解消できていないどころか、かえってストレスが溜まってしまい、それこそ免許は取り上げても目の前に運転できるクルマがあるままでは、無免許でも運転をしかねず、何も変わらない。
つまり、「事故を起こす可能性を取り除くこと」と「高齢者を安全に移動させる手段を考えること」の両方を満たせて初めて、この問題が解決することになる。
まずはクルマを運転できない状況を作り出す
前者についてまず考えられるのが、自主返納か家族が取り上げるかはともかくとして高齢者から免許証を切り離すことである(とはいえ、素直に返納に応じてくれるような人なら事故は起こさないかもしれないが・・・)。ただし、先ほども触れたように、目の前に運転できるクルマがあっては免許を切り離した意味も半減するので、廃車にできるなら廃車にする、もしくは家族の指紋認証でないとハンドルのロックが解除できないといった(後付け)装置の開発が待たれるところである。
高齢者を安全に移動させる方法は?
一方、高齢者本人が運転する以外の、安全な移動方法を考えるならば、ベストな方法としては自動運転車、それも手動運転の余地を残さない完全自動運転車の導入である。とはいえ、実用化されるのは今すぐでないことは明らかであり、ましてや一般家庭に普及するとなると……。緊急の解決法としては現実的ではない。
となれば、逆転の発想でこちらから移動するのでなく、普通なら訪問される側が各高齢者の元を訪れるしかない。それこそ、利用者(=高齢者)が特に呼ばずとも、定期巡回するのが理想である。高齢者でもクルマでの移動を迫られる地域では、自ずと他の年齢層も同様な状況であることが多く、訪問側がクルマで駆けつけるという条件は整っている。また、こうしたコミュニティではお互いの家族構成を熟知していることが多く、どこを回ればいいのか? とはならないだろう。
仮にもし、どこに誰が住んでいるのか分からないとしても、例えば高齢者が運転していたクルマを廃車にする際、整備工場がそれに携わって、その方がクルマでよく訪問していた先についてアンケートを取り、そこで名前が挙がった先に(本人に許可を得た上で)通達するといった仕組みができればどうだろうか?