東日本大震災で被災された方への寄付について

自動車整備士・整備工場経営の税務質問箱

せいび界2011年5月号掲載

Q1.この度の東日本大震災で被災された方々のために会社で義援金を寄附したいと考えています。寄附金は全額経費にならないと聞いたのですが、どのような取扱いになりますか?

A.法人税法上での寄附金に関する基本的な考え方

法人の場合、企業の活動は、経済原理の上に立っていますので、無償の行為はないはずです。しかし、一方で企業は社会の一員としての立場がありますので、場合によっては、相手からの見返りを期待しない、一方的な経済的利益提供も生じます。これを寄附金と呼びます。

寄附金は、経費の一つではありますが、これがすべて損金として認められると、例えば利益が出ているときには、子会社に多額の寄附をすることで利益を減らす、といったように、租税回避をかなり自由に行うことができるなどの弊害があります。
そのため、寄附金のうち、損金算入限度額を超える部分は、損金としては認められないことになっているのです。

2.損金算入限度額

法人税法では、寄附金を次の3種類に区分してそれぞれの取扱いを定めており、損金算入限度額はその会社の資本金や所得の大きさに応じて計算します。
①国や地方公共団体に対するもの、指定寄附金…全額損金算入
②特に公益性の高い団体(特定公益増進法人)に対するもの…損金算入限度額までは損金算入、超える金額はその他の寄附金に含める
③その他の寄附金…損金算入限度額までは損金算入

・損金算入限度額
①資本基準額
期末資本金等の額×当期の月数/12×2.5/1,000
②所得基準額
(別表4仮計の金額*+支出寄附金)×2.5/100
③損金算入限度額
(①+②)×1/2
*別表4仮計の金額とは、税引後利益に対して法人税法上損金にならないものを加算し、益金にならないものを減算したもの。損金算入限度額を概算する際には、税引前利益で代用してもよいでしょう。

3.東日本大震災に係る寄附金の取扱い

東日本大震災に係る義援金の寄附については、指定寄付金に指定されていますので、原則的に全額損金になります。ただ、全額損金になるためにはどんな場合でもいいという訳ではなく、次の場合に限られます。
・国や地方公共団体に対して直接寄付した場合、又は、募金団体などを通じて最終的に国や地方公共団体に寄付される場合
・日本赤十字社や中央共同募金会の「東北関東大震災義援金」への寄附金として寄附した場合
・義援金等を寄附したことが確認できる書類を保存すること

したがって、店頭の募金箱などに寄附した場合は、通常領収書は発行されませんので、損金にすることはできません。また、日本赤十字社や中央共同募金会の「東北関東大震災義援金」への寄附を郵便振替で行った場合には、郵便窓口で受け取る半券(受領証)をもって寄附したことを証する書類として差し支えありません。

Q2.個人で東日本大震災に係る義援金を寄付した場合、その分税金は安くならないのですか?

A.所得税法上の寄附金の取扱い

納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、特定寄附金として5,000円を超える支出した場合には、その特定寄附金の額(当該合計額がその者のその年分の総所得金額の40%が上限)から5,000円を控除した額をその者のその年分の所得から控除することができます。これを寄附金控除といいます。
例えば、年収500万円の単身の給与所得者が、10万円の寄附をした場合、
100,000円-5,000円=95,000円
の所得控除を受けることができます。この金額に所得税率をかけた金額の税金が安くなるわけです。この場合所得税率は概ね10%になると思われますので、9,500円安くなる計算になります。

2.東日本大震災に係る寄附金の取扱い

東日本大震災に係る義援金の寄附については、特定寄付金に該当しますので、原則的に寄附金控除の対象になります。ただ、寄附金控除を受けるためにはどんな場合でもいいというわけではなく、次の場合に限られます。
・国や地方公共団体に対して直接寄付した場合、又は、募金団体などを通じて最終的に国や地方公共団体に寄付される場合
・日本赤十字社や中央共同募金会の「東北関東大震災義援金」への寄附金として寄附した場合
・義援金等を寄附したことが確認できる書類を保存して、確定申告をすること

注意点は法人と同様で、店頭の募金箱などに寄附した場合は、通常領収書は発行されませんので、寄附金控除を受けることはできません。また、日本赤十字社や中央共同募金会の「東北関東大震災義援金」への寄附を郵便振替で行った場合には、郵便窓口で受け取る半券(受領証)をもって寄附したことを証する書類として差し支えありません。

3.「ふるさと納税」の利用

ふるさと納税制度とは、以前にお住いになられた市区町に限らず、「応援したい」「発展に貢献したい」と思われる市区町村に、寄附を行うことで、その相当額が所得税や現在お住いになっている市区町村の住民税から控除される制度です。ただ、「ふるさと納税」とはいっても文字どおりの納税ではなく、都道府県や市町村に対する寄付制度です。五千円を超える寄附から、住民税などの控除が受けられます。

寄附の方法は自治体によって異なります。担当の窓口に直接出向いていく方法以外にも、銀行振込や現金書留、クレジット払いなど様々なやり方があるので、寄附をしたいと思う市区町村に確認が必要です。

この制度を利用して、今回震災の被害を受けた市町村に寄附をすることができます。この場合の減税額の細かい計算については割愛しますが、夫婦(子供なし)で年収500万円の給与所得者である場合で、10万円の寄附をしたときは、所得税と住民税を合わせて41,800円の減税になります。

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