自動車整備士・整備工場経営の税務質問箱
せいび界2011年7月号掲載
Q1:今年のうちに消費税が改正になると聞いたのですが、どう変わるのですか?今のうちにしておいた方がいいことはありますか?
確かに、平成23年度税制改正大綱で消費税について、かなりの改正案が盛り込まれています。改正案を見る前に、現在の制度を概観してみましょう。
消費税とは、事業者が物品やサービスを販売したときに、消費者から消費税としてお金を預かり、その事業者が預かったお金をまとめて税務署に納めるというものです。つまり消費税を負担しているのは事業者ではなく消費者であり、このように負担している者と納める者が異なる税金を間接税といいます。
ただ、事業者は預かった消費税を全額納める訳ではなく、事業者も仕入れやその他経費の支払をする際に消費税を支払っており、預かった消費税額と支払った消費税額の差額を納付することになっているのです。
1.消費税を納めなくてもいい事業者
消費税は、上記のような仕組みである以上、消費税を預かるすべての事業者が納めるのが原則ですが、一部例外があります。それは、「基準期間の課税売上高が1,000万円未満の事業者」は免税事業者になる、ということです。
基準期間とは、法人の場合は2期前、個人事業主の場合は2年前のことで、その期間の課税売上高(消費税が課税される売上)が1,000万円以下である事業者は、消費税を納める必要はありません。つまり、進行期または進行年度に消費税を納めるかどうかは、2期前に決まっており、その期または年度の売上には関係ないことになります。ちなみに、基準期間が1年未満であった場合、法人は1年に換算した金額で、個人はそのままの金額で判定します。
では、開業して1年目や2年目の事業者のように基準期間がない事業者は、消費税を納めなければならないかどうか、どう判定するのでしょうか。それは「基準期間がない=納税しなくてもよい」、というのが現行の制度です。(資本金が1,000万円以上の法人を除く)
これを利用すれば、例えば個人事業主として開業し、免税である2年間経過後法人になり、さらに2年間免税となり、都合4年間消費税を納めなくてもよいことになります。これは非常に節税効果の高いスキームではありますが、一方で長期間にわたって本来事業者のものではない預り分の消費税が納税されない訳で、現行制度の不備として指摘されてきた事項でもあります。
2.今回の改正案の内容
平成23年税制改正大綱における消費税の改正案で、免税事業者のうち次に掲げる課税売上高が1,000万円を超える事業者については、例え開業して2年未満であっても消費税課税事業者になってしまうことになりました。
・個人事業者のその年の前年1月1日から6月30日までの間の課税売上高
・法人のその事業年度の前事業年度(7月以下のものを除く)開始の日から6月間の課税売上高
・法人のその事業年度の前事業年度が7月以下の場合で、その事業年度の前1年以内に開始した前々事業年度があるときは、その前々事業年度の開始の日から6月間の課税売上高(その前々事業年度が5月以下の場合には、その前々事業年度の課税売上高
例えば、資本金500万円の新設法人の場合、現行は1期および2期ともに免税事業者です。改正案によると1期目開始から6ヶ月間の課税売上高が1,000万円超の場合、2期目から課税事業者となってしまいます。つまり、これまで2年間免税であったものが1年間になってしまう可能性が高いということですね。
これは、平成23年10月1日以後に開始する事業年度に適用されますので、現在個人事業を営んでいて、法人成りを検討している方は、9月までに法人成りするのが得であることになります。
なお、平成23年度税制改正大綱については、通常は国会を通過している時期なのですが、震災の混乱で未だ通過していないようです。今後の国会審議動向により内容が変更することがありますので注意が必要です。
Q2:ガソリンを購入すると、全額に消費税がかかるのに対し、軽油の場合は本体部分だけに消費税がかかり軽油税にはかかりません。ガソリンにもガソリン税が含まれているはずで、これは税金に税金をかける二重課税なのではありませんか?
軽油には軽油引取税(32.1円/㍑)が課税されていますが、この部分には消費税は課税されていないのに対し、ガソリンにはガソリン税(53.8円/㍑)がかかり、さらに加えて石油税(2.04円/㍑)、原油関税(0.17円/㍑)がかけられますが、それらを含めた販売価格に対して消費税が課税されています。消費者からすると、税金に税金をかけるという二重課税状態にあるわけです。
1.なぜ二重課税状態が認められているのか?
現在のガソリン税は、二重課税状態にありますが、厳密な意味で二重課税ではありません。なぜなら、ガソリン税の納税義務者は消費者ではなく、ガソリンの製造業者だからです。
つまり、ガソリンの製造業者は原油を輸入して精製し販売していますが、輸入した段階で「関税」「石油税」が、製品の段階で「ガソリン税(揮発原油+地方道路税)」が課税され、それらは製造業者が納税しています。
ガソリン製造業者は、仕入価格に製造原価その他の経費及び利益を上乗せして販売価格を決定することになりますが、その製造原価の中にはガソリン税なども含まれることになり、最終的には消費者が負担することになります。しかし、ガソリン製造業者がガソリン税相当分を上乗せするかどうかは自由であり、消費者はあくまで製造業者の販売価格で買っただけでガソリン税を負担しているわけではない、したがってそれに消費税を課税しても二重課税ではない、ということになります。
一方、軽油には製造時に税金はかからず、販売時のみ軽油引取税が消費者に課税されることになっているため、本体のみに消費税が課税されています。
これらは課税庁側の理屈で、消費者としては必ずしも納得できるものではありませんが、同様の二重課税状態は別にガソリンに限ったことではありません。例えば何かを輸入して販売した場合には、関税分も上乗せして価格が決められているはずで、これもいわば二重課税状態と言えます。
2.最近の判決例
ガソリンに限らず二重課税の問題はあるのですが、広範囲に影響を及ぼす問題でなかなか解決しがたいのが現実です。
ガソリンのことではありませんが、少し前に二重課税を是正する判決がありました。死亡保険金を分割払い(年金払いといいます)で受け取ることにした場合、相続時には年金受給権に対して相続税、年金として受け取った時には所得税が課税されていたのが、二重課税に該当し違法であるとの判決が出たのです。
だからといってガソリンも同じではありませんが、この例のように二重課税状態が解消される場合もありますので、注意して見守りたいものです。
NBC税理士法人
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