自動車整備士・整備工場経営の税務質問箱
せいび界2012年1月号掲載
Q.今年度の途中に独立して、個人事業をしています。確定申告をしなければならないので、電器店のソフト売場に行って会計ソフトを見てみました。ソフトを使って「青色申告」をしよう、などと書いてあるのですが、そもそも青色申告って何ですか? 青色申告にすると何かいいことがあるのですか?
A.日本では、納税者が自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算し納税するという申告納税制度を採っています。そのためには、日々の取引の状況を記帳し、また、取引に伴い作成したり受け取ったりした書類を保存しておく必要があり、それなりの手間や時間がかかります。
それで、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる青色申告の制度があります。
要はきちんと帳簿をつけている人へのご褒美ということですね(ご褒美をあげるので、きちんと帳簿をつけましょう、というのが正しいかもしれませんが)。
さらに、青色申告者で不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む人が、その事実につき帳簿書類を備え付けて、不動産所得の金額又は事業所得に係る一切の取引の内容を詳細に記録し、かつ、作成している場合には、これらの所得の金額から次の金額のうちいずれか低い金額を青色申告特別控除として控除することができます。
(1)65万円
(2)青色申告特別控除額を控除する前の不動産所得の金額又は事業所得合計額
この場合、これらの所得のうちに赤字のものがあれば零として合計額を計算します。
(注)不動産所得のみ有する場合で、この青色申告特別控除の適用を受けるには、不動産の貸付けが「事業」(建物貸付なら、独立家屋5棟又はアパート10室以上貸し付けている等)として行われることが必要です。
控除の方法は以下の通りです。
1.控除の方法
65万円の青色申告特別控除額はその年分の不動産所得の金額から控除し、控除しきれ
ない青色申告特別控除額があれば、その控除不足額を事業所得の金額から控除します。
(注)不動産所得及び事業所得が赤字で山林所得が黒字の場合は、山林所得について、
以下に述べる10万円の青色申告特別控除を適用します。
2.65万円控除の適用要件
65万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、次に掲げる手続要件に該当する
ことが必要とされます。
- その年分の確定申告書に、65万円の青色申告特別控除の適用をうける旨及び
その適用を受ける金額の計算に関する事項を記載すること
- その年分の確定申告書に、正規の簿記の原則に従った帳簿書類に基づいて
作成された貸借対照表、損益計算書その他不動産所得の金額又は事業所得の金額
の計算に関する明細書を添付すること
- その年分の確定申告書を、その提出期限までに提出すること
なお、控除する金額は、確定申告書にその適用を受ける金額として記載した金額に限るものとされています。したがつて、当初申告記載した特別控除の金額は、その後の修正申告や更正により不動産所得の金額又は事業所得の金額が増加した場合であっても、増加することはありません。
3.10万円の青色申告特別控除
65万円の青色申告特別控除を受ける人以外の青色申告者(65万円の特別控除を受けないことを選択した人を含む。)で、簡易方式(損益計算書のみで、貸借対照表のないもの)又は現金主義により取引の記録を行っている人については、その承認を受けている年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額から、次の金額のうち、いずれか低い金額を、青色申告特別控除として控除することができます。
- 10万円
- 青色申告特別控除額を控除する前の不動産所得の金額、事業年度の金額又は
山林所得の金額の合計額
この場合、これらの所得のうちに損失の金額がある場合には、その損失の金額を除いたところにより合計額を計算します。
4.控除の方法
10万円の青色申告特別控除額はその年分の不動産所得の金額から控除し、控除しきれない青色申告特別控除額があれば、その控除不足額を事業所得の金額から、次に山林所得の金額から順次控除します(措法25の2②)。
4.10万円控除の適用要件
10万円の青色申告特別控除については65万円の青色申告特別控除のような手続要件は必要とされていないため、10万円の青色申告特別控除をしないところで確定申告をしている場合であっても、修正申告、更正等によりその控除を受けることができます。
5.青色申告にするとどれくらい税金が安くなるか
65万円の青色申告特別控除の場合ですと、条件にもよりますが所得税と住民税で10万円弱安くなります。(所得税の最低税率は5%、住民税は一律10%とし、特別控除前の税額が10万円以上の場合)所得税は累進課税ですから、所得金額によってはもっと安くなります。
青色申告にすると、特別控除を受けられるだけでなく、赤字だった場合には翌年以降に繰り越して利益を相殺できるなどの特典がありますので、税理士としては是非とも青色申告をお勧めしたいところです。
6.青色申告特別控除を受けるためには
まずは、その旨の届け出を税務署にしなければなりません。ただし、これには提出期限があり、3月15日までに(1月16日以後開業の場合は2か月以内)届け出なければその年は青色申告特別控除を受けることができません。
したがって、質問の方の場合、残念ながらおそらく23年度分については青色申告特別控除を受けることはできないと思います。24年度分のために早めに届出書を出しておくとよいでしょう。
また、きちんとした帳簿をつけなければならないわけですが、手書きでもかまわないとはいえ、パソコンで会計ソフトを使って帳簿をつけるのがよいと思います。慣れるまで少し時間がかかるかもしれませんが、慣れてしまえば手書きよりずっと早く正確にできます。(手書きですと、電卓の打ち間違いなどで1か所違っていたら、その後の部分もかなり訂正する必要がでてきますが、ソフトなら自動的に計算してくれます)
7.白色申告のメリット
確定申告には2種類あって、青色申告でない場合、白色申告ということになります。白色申告の場合ですと、青色ほどきちんとした帳簿をつける必要がない代わりに、これまで書いた特別控除など一切受けることができません。
ですから、基本的には青色申告をお勧めするわけですが、誰でも青色にするのがよいわけではありません。青色には青色なりに手間も時間もかかりますし、税理士に頼めばそのお金もかかります。少なくとも、もともと利益が少なくて、ほとんど税金がかかっていないような事業であれば、白色申告にメリットがあるとも考えられますね。
NBC税理士法人
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