更正の請求の期限が、延長について

自動車整備士・整備工場経営の税務質問箱

せいび界2012年2月号掲載

Q.更正の請求の期限が、延長されたそうですが、詳しく教えてください。

 

A.平成23年12月2日に、平成23年度税制改正に関する法律「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」が公布されました。

今回の改正で、申告した税額が過大であったものとして、その減額処分を要求する手段である「更正の請求」の期限が延長されました。すなわち、改正前は提出の期限が「法定申告期限から1年以内」とされていたものが、「法定申告期限から5年(法人税の欠損金額については9年)以内」に大きく延長されました。

今までは、「更正の請求」は法定申告期限から1年が期限で、それを過ぎた後に法令違反や計算の誤りなどで過大な税額となっていることが分かった場合、税務署の職権による減額更正を「お願いする」という実務になっていました。

これを「更正の嘆願」と呼んでいる訳ですね(実務的には、更正の請求の申請書の「請求」という字を二重線で消して、「嘆願」と書き直します。江戸時代には直訴というのがありましたけど、なんとなく上様に直訴しているような気持ちになります)。

これは、税務署が増額更正できる期間が3年であるのに対してわずか1年と非常に期間が短いことや、そもそも「お願いすれば聞いてやらないこともない」といったスタンスの実務慣行が問題ではないかと言われてきたものを改正するものです。

その期限が上記の通り延長され、期限内であれば、お願いではなく法令に基づく請求手続きとして行うことができるようになります。これによって、還付加算金の取扱いについても違いが出てきます。

今までは、法定申告期限から1年超過ぎてしまった後に申告が過大であったことに気付いた場合、「減額のお願い」をして、税務署が最終的にそれを認めて減額更正(還付)をしたものの、処理をしないままそれなりの期間が経過したとしても、更正の請求に基づく処理ではないため、還付加算金は一切生じませんでした。

しかし、改正後は、法定申告期限から5年間は、更正の請求をすることができますので、改正前の更正の請求と同様に還付処理の遅れに対しては、還付加算金が生ずる可能性があります。

すなわち、その還付が、更正の請求があった日の翌日から三月を経過した後に行われた場合には、還付加算金が生じることになります。

国としては、特段の事情がない限り、最終的に他の納税者の負担になる還付加算金を払うことは避けるべきですから、税務署内の期限管理の対象になって、改正前の「お願い」に比べ、短期間で処理してくれることが期待できます(今回の改正では、中間申告に関する改正も行われました。これまで、中間申告の際に過大に申告して税金を多く納め、確定申告の際には還付申告になって、通常の還付金と同時に還付加算金を受け取るということがあったようです。銀行に預けるよりはるかに高い利息がつきますからね。今回の改正で、前期の税額をベースに計算した中間納付額より多くは納められないことになりました。当然ながら、国としても余計な還付加算金は払いたくありませんから)。

ただ、更正の請求があった場合、税務署はその請求に係る課税標準等又は税額等について調査して、それらが過大になっていることを確認した上で減額更正することになりますので、減額更正の前には税務調査を受けることになりますから要注意です。

現実問題として、通常の税務調査に比べ、その請求の原因とされる処理の誤りの問題に焦点を当てその問題に係る事実の確認を主とした軽めの調査になることが予想されますが、もし、その調査のなかで納付すべき税額の増加要因となる誤りが別途見つかれば、それと通算した額が処理の対象になります。

通算後でも、申告した税額が過大であれば、その更正の請求につき一部(通算後の過大額)を認める、ということになりますし、逆に過少ということになれば、修正申告を求められることになるでしょう。

この辺は、なかなか痛し痒しといったところで、判断の難しいところではあります。

 

①更正の請求の範囲の拡大

更正の請求の「期限」の延長とともに、今回の改正では、その請求「範囲」も拡大されます。すなわち受取配当の益金不算入に代表される当初申告で自ら計算して申告することが、その適用の絶対的な要件とされていた納税者に有利な制度の多くについて、当初申告による適用に加え、その失念をした場合に、更正の請求を行うことによってもその適用ができるようになります。

②課税の適正化とのバランス

また、更正の請求の期限の延長とバランスをとるべく、今回の改正では、税務署による増額更正が可能な期間が、現行法定申告期限3年とされている所得税や相続税・贈与税の更正について5年間(法人税の欠損金額(マイナス)を小さくする更正は9年)に延長されました。これによって基本的に納税者による修正申告・更正の請求、税務署による増額更正・減額更正の期間が全て一致することになります。

これは納税者としても悪い話ではありませんが、更正の請求の延長と引き換えに、以前は所得税や相続税・贈与税について確定申告から3年経過すればお咎めなしだったものが、あと2年間は「ほっと」できないことになったということでもあります。

また、法人税の青色申告の場合における欠損金の繰越期間(現行は7年)は9年に延長されます。

なお、これらの改正は、平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について適用になります。

 

NBC税理士法人 佐野徳太郎

☎03-5225-0024

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