税務

前払い賃借料は全額当期の損金になるか?

自動車整備士・整備工場経営の税務質問箱

せいび界2012年8月号掲載

Q1 、前払い賃借料は全額当期の損金になるか?

当社は3階建て建物を賃借していますが、数か月前から3階部分を当社の関連会社に又貸ししています。この建物の賃借料は当期も翌1年間分を前払で支払う予定ですが、この前払賃借料は全額当期の損金に計上できるでしようか。

A1、

自社で使用していない又貸し部分の前払賃借料は、当期の損金にはなりません。当期に支払っ た前払費用のうち、その支払った日から1年以内に役務等の提供を受ける短期の前払費用について は、継続処理等を条件としてその支払った日の属する事業年度において、その全額を損金に計上す ることができます。

しかし、又貸ししている部分の前払賃借料については、その収益である賃貸料と対応させるべき 費用に該当しますので、その収益を計上する事業年度の損金に計上することになります。

なお、前払費用は翌期以降の事業年度の損金に計上すべきものですが、短期の前払費用について は、その支払の日から1年以内に役務等の提供を受けるものについては、その支払った日の属する 事業年度の損金に計上できるとされています。

その支払の日において1年を超える期間を対象とするような場合、たとえば3月決算法人が翌事 業年度の1年間分に係る賃借料を当期の1月中に支払った場合には、この規定の適用はありません。 ここで規定されている1年を超えるか否かの判定は事業年度の末日に行うのではなく、その支払っ た日を基準日として行うことになります。

Q2、前期の災害について当期での回復費用を損失として計上できるか?

当社は前期に地震による被害を受けました。倒壊した工場の再建や倉庫の修復が終了したのは、 当期になってからと、かなり時間が経ってしまったのですが、当期になってから支出したこの原状 回復関係の費用についても、災害による損失として取り扱って良いでしようか。

A2、

災害のやんだ日から1年以内に支出した災害関連支出も、災害による損失として繰り越し控 除の対象になります。災害により資産が損壊等した場合、当該資産を修理したり取壊し等するため に支出した費用についても、災害により生じた損失として取り扱うことができますが、その災害が やんだ日から1年以内に支出したものであり、かつ、損金経理したものでなければなりません。

なお、災害のやんだ日とは、災害が引き続き発生するおそれがなく、災害復旧に着手できる状態 になった時を言うとされています。

NBC税理士法人 佐野徳太郎

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