管理職

管理職の条件とは?&節税を前提の保険加入?

Q、節税を前提にした保険加入

当社では節税のために役員には、全額損金かつ解約返戻金があるタイプの生命保険に加入させている。ある役員が役員を退くことになり、ちょうど解約返戻率がピークに来たのでこれを当てることにしたが、解約返戻金は収益となり、それを相殺する経費がない。退職したことにして、役員退職金を支払っても大丈夫だろうか?

A、

節税のために生命保険を活用することはよくありますが、どんなタイプの生命保険に加入するかは重要な論点です。節税を前提にした場合、ご質問の「全額損金かつ解約返戻金がある」タイプのものがよく活用されます。ただし、解約返戻率がピークに来たので解約する、収益となる解約返戻金と相殺する経費がない、ということも非常によくあります。さらに、役員退職金を前提にしていたが、現時点では退職できる状況にはないということもあります。この場合、実質的には退職していないが、退職したことにして役員退職金を支払うケースがありますが、これは危険です。

なぜならば、役員退職金の否認には、次の2種類があるからです。「退職したことにして」というのは後者に当たり、役員退職金ではなく、役員賞与と否認されます。

○役員退職金として過大である
○退職の事実がないので、役員退職金そのものを否認する

役員賞与となれば、以下のようになり、支払う税金がとんでもないことになります。

○法人税の計算上、経費にならない
○源泉所得税が高い

結果として、役員退職金などの大きな経費と相殺できない場合、「全額損金、解約返戻金あり」という生命保険は意味をなさないのです。この場合、単に課税を繰り延べただけで、今期で課税されるだけとなってしまいます。

場合によっては、より高い税率で課税されるので、節税しない方が得だったというケースもあります。逆に赤字になった期に解約すれば、赤字の補てんをしてくれるので、全額が収益になることに大きな意味が出る場合もあります。

ですから、「全額損金で解約返戻金あり」というタイプの生命保険に加入するならば、メリット、デメリットの両方を十分に考慮した上で契約をすべきなのです。この前提の中で考えていただきたいのが、次のようなタイプの保険です。

○半分が保険料(経費)で半分が保険積立金(資産計上)
○解約返戻率が長期に亘って上がり続ける

これならば、退職の時期を調整することもできます。役員退職金以外の経費と相殺する場合も時期の調整が可能です。

ですから、半分が経費で半分が資産になる生命保険にする、または組み合わせるということも検討すべきことなのです。ただし、この場合に問題となるのが節税効果の額で、多くの経営者の方がこのことを口にされます。

しかし、こう考えてはいかがでしょうか? 具体的に年間の保険料が100万円という前提で考えてみましょう。たしかに経費が50万円、資産が50万円となるので、全額損金の生命保険に比べ、節税効果は半分です。

ただし、保険積立金は資産であり、預金的なものと考えることもできます。全部でも一部でも解約すれば、いつでも戻ってきます。ですから、預金が保険積立金という資産になっただけと考えることもできるのです。

ということは、この会社の預金残高が100万円ならば、100万円の生命保険に加入したことにより、貸借対照表は「預金100万円 → 保険積立金50万円」となります。ただし、生命保険は余剰資金で支払うものなので、預金全額を生命保険に使う会社は絶対にあ
りません。

そういう意味でいうと、資産計上された部分は「余剰資金としての預金」が「余剰資金の保険積立金に変わっただけ」という考え方も成り立つのです。このことを前提にもっと節税したいならば、200 万円の生命保険に加入すればいいだけです。

そうすれば、100万円の全額損金の生命保険と比べても、次のように考えることもできるのです。

○100 万円に対応する節税効果は達成できている
○100 万円は余剰資金(預金)から余剰資金(積立金)になっただけ

たしかに、「全額損金かつ解約返戻金あり」という生命保険は節税効果を大きく取ることができます。しかし、諸刃の刃で、デメリットもあるのです。ですから、私自身がこのタイプの生命保険を勧める場合には、そのメリット、デメリットを十分に説明します。

こういうことをヘッジするためにも、半分が経費で半分が保険積立金の保険だけにする、または組み合わせるということは本当に重要なことなのです。中小企業の社長さんの頭の中は、「黒字=節税」となっていることも多く、目の前の節税しか考えていないこともよくあります。

しかし、それでは中長期的に考えた場合、結果として損をしてしまうこともあるのです。節税効果だけに目が行ってしまっていることは多いので、今回の考え方を覚えておいてください。

 

ライター紹介

内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)

AD
 data-src=有償運送許可研修を毎月開催" width="650" height="178" >

有償運送許可研修を毎月開催

せいび広報社では毎月、事故車故障車等の排除業務に係る有償運送許可の研修会を実施しています。会員限定ではなく、全国どの地域からも、法人・個人事業主でもどなたでもご参加いただけます。研修の受講者は、会社の代表者・経営者に限らず、従業員の方でしたらどなたでも、会社を代表して受講していただくことが可能です。

CTR IMG