自動車整備士のお仕事・労務について労務相談室
せいび界2013年6月号Web記事
Q、勝手な残業にも残業代は払うべき?
自分の仕事は終わっているのに、「大変そうだから見るに見かねて」と指示もしていない総務の手伝いをしているメカニックがいる。たしかに指示はしていないが、やっていることは私用ではなく仕事である。こういう場合でも残業代を支払うべきなのだろうか?
A、
回答の前に、まずは労働時間の定義を見てみましょう。法律上の労働時間とは、①会社に管理されている時間、②従業員が労働する時間です。つまり、会社の指示で働く時間=労働時間なのです。
しかし、会社の指示がなくても残業している場合もあります。この場合は社内で仕事する=会社に管理されている、となります。そのため、会社の指示がなくても「残業を黙認した」と見なされる場合が多いのです。例えば、次のような判例があります。
<徳州会事件 大阪地裁 平成15 年12 月>
○ 病院の事務職員が未払いの残業代を請求
○ この残業代には会社が指示していない残業時間も計算されていた
○ 判決では「未払い残業代の全額の支払い」を命じた
この理由は、以下のようなものです。
○ 保険診療の報酬請求などの期日がある業務も多かった
○ これは遅れることが許されない
○ 会社の指示がなくても残業を黙認した
ここから言えることは、「残業していることを会社が知っている」「会社からの具体的な指示はない」という場合でも、「残業命令あり」と判断されるということです。
ではどうすればいいか? 残業の事前許可制を導入すれば、勝手な残業をしていても、残業代を支払う必要はありません。これを導入すれば、事前許可のない残業をしたとしても、残業時間を計算しなくてもいいのです。
ですから、「通常の業務ならば」勝手な残業をしても、残業代を払わなくていいのです。ただし、事前許可が取れない不測の事態などに対応することもあります。もちろん、これは残業時間としてカウントされます。
実際、私のお客さまで「残業の事前許可制」を導入したら、30%の時間短縮となったケースもあります。ちなみに、付き合い残業やダラダラ残業が削減されただけなので、会社の効率は落ちませんでした。実際、その後の売上は伸びていました。
ちなみに、元トリンプの吉越社長は残業時間の削減について、「会社の電気を自ら消して回った。どんな仕事でも残業は許さなかった」と著書の中で書かれています。それでも、トリンプの業績は伸びたのです。
法律上は残業命令がない「勝手な」残業でも、残業代を支払わなければならないのです。大切なことは、「残業の事前許可制などを導入する」「社内のフローを見直し、残業時間そのものを削減する」ということです。
それから、話は変わりますが、管理職は残業代が付かない立場となります。そこで、意味のない管理職ばかりを増やす会社もあります。しかし、結果的にはこれは違法です。あくまでも、管理職の残業代免除は管理職として機能していることが条件なのです。
ですから、肩書きを「課長」としても、問題解決にならないのです。例えば、「マクドナルドの店長の未払い残業」の裁判がありました。結果は東京高裁で和解となり、実質的には会社が負けたのです。
この件では、「店長は管理職ではない」と判断されました。ここからも、「残業代の免除=肩書きとは関係ない」と言えるのです。つまり、「管理職としての実態」が必要なのです。ちなみに、管理職としての実態とは、
「部下がいて、人事権を持っている」
「管理職は出勤時間の管理がされていない
→遅刻、早退、休日出勤をしても給与に関係ない」
ということです。
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