Q2.顧客情報が持ち出されたら…
ある社員が会社の顧客情報を持ち出し、ライバルの整備工場へこれを流していたことが発覚した。その社員はメールで情報を送っていたのだが、私はこの事実を偶然知ることができた。この社員を解雇できるだろうか?
A2.
どんな会社にも企業秘密はあります。中には、ライバル会社に知られたら、大きな損失になることもあります。そのため、社内規則で「慎重に取り扱う」と決めている会社もあります。例えば、就業規則の服務規定に書かれています。
一般的な記載例を簡単にご紹介すると、こんな形式です。
<服務規定>
第○条 従業員は次の各号に該当する行為を行ってはならない。
○会社に属するコンピュータ、電話(携帯電話を含む)、ファクシミリ、インターネット、電子メールその他の備品を無断で私的に使用する
○会社及び関係取引先の重大な秘密及びその他の情報を漏らし、あるいは漏らそうとする
このように決めて、情報漏えいを防ぐのです。そして、「『服務規定』に違反=懲戒処分(重い場合は解雇)」と(も)記載しておくことがポイントです。
しかし、一般的なひな形では、「服務規定と懲戒処分がリンクしていない」ものもあります。ただ、これは「大きな落とし穴」なのです。なぜならば、
○「服務規定」に禁止事項を記載している
○懲戒処分とリンクしていない
○違反しても、懲戒処分(重い場合は解雇)を実施できない
となるからです。
ですから、就業規則の懲戒処分に下記のことも記載しましょう。
<懲戒処分>
第○条の服務規定に違反した時は情状に応じて、減給、出勤停止、降格、懲戒解雇等の罰則を適用する
こうしておけば、上記の「大きな落とし穴」はなくなります。今回の件ですが、この会社の就業規則では服務規定と懲戒処分がリンクしていました。ですから、懲戒処分(重い場合は解雇)にすることができるのです。
ただし、ここで問題があります。この社長は「偶然に」社員の不正を発見しました。しかし、この会社には「メールの監視に関する規則」がなかったのです。問題は、
○メールの監視に関する規則がない
○この状態で、勝手にメールを見ていいのか?
ということです。
実は、社員の電子メールを勝手に見ると、「プライバシーの侵害」に発展する可能性があります。もちろん、情報を漏らしてもいい訳ではありませんが、「勝手に」覗き見するのも問題です。
この問題を防ぐには、「会社は必要な場合、社員の電子メールを見ることができる」と就業規則に書いておきましょう。この1文でプライバシーの侵害の問題はクリアーされるのです。
このように、罰則1つでも細かな注意が必要となります。しかし、市販のひな形ではそこまでフォローできないのです。これは風邪をひいた時、市販の総合感冒薬を飲むようなものです。やはり、医師に診てもらい、出された薬を飲む方が効きますよね。これと同じなのです。
ライター紹介
内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)
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