Q2、若い社員が喧嘩して・・・
若い自動車整備士が居酒屋で隣の客と争いになり、その時に相手を殴ってしまったことで、 警察に逮捕された。
ちなみに全治3日とのことである (起訴猶予あり)。この社員にはどのような対応をすればいいのだろうか?
A2。これは勤務時間外の出来事です。確かに、会社も社員個人の私生活まで干渉することは出来ません。しかし、警察沙汰になった場合は別です。勤務時間外でも刑事事件となれば、話は違ってきます。
では、法的に考えてみましよう。会社と社員は雇用契約を結んでいます。「一般的に」 この契約書には、「勤務時間外でも会社の秩序を乱す行為は禁止」と書かれています。
ましてや、刑事事件です。減俸、出勤停止などの懲戒処分の対象にはなるでしよう。 重大な場合は解雇もあり得るでしよう。
では、何が「基準」で、解雇が妥当とされるのでしようか? まずは、解雇が「有効」とされた裁判例です。
<昌榮產業事件 橫浜地裁 昭和51年10月>
○酒に酔い、模造刀を持って、他人の家のベランダに登った
○その家の人に見つかり、逃げた
○逃走の際、その人に怪我させた
○住居侵入罪、障害罪、銃刀法違反により、罰金10万円
○会社は懲戒解雇とし、解雇の無効を求め、争いになった
○裁判所は「解雇は有効」
次に解雇が「無効」とされた裁判例です。
<日本經濟新聞社事件 東京地裁 昭和45年6月>
○印刷工が路上に放置された自転車を盗難
○これを理由に解雇
○起訴猶予により事件が終了(新聞等でも報道されず)
○会社は懲戒解雇した
○裁判所の判断は「解雇は無効」
無効になった事件を詳しくみると
○結果が起訴猶予、罰金等の軽い処分だった
○社員は管理職であった
などが1つの基準として考えられます。また、解雇が無効とされた裁判例では「会社の対面を著しく汚したことにはならない」と理由が書かれていました。
つまり、
○処分の重さ
○社員の肩書き
○会社としての社会的信用 (例:報道の有無)
の3つがポイントということです。
今回のご相談のケースも「いきなり懲戒解雇」とは出来ません。刑事事件ではありますが、
○軽いケガで済んだ
○ー般社員である
○報道等で会社名が出ていない
という状況です。だから、会社への社会的影響は少ないと考えられます。
だから、私は
○本人が反省することを目的として処分
○始末書の提出、減俸1ケ月 (10%)
とご提案しました。この会社はこの処分をしました。
もちろん、こういう事件は最終的には「本人の問題」です。しかし、会社としては「本人任せ」もいけません。特に若い社員が定期的に喧嘩する、問題を起こす会社もあります。
だから、会社は「社会人としての教育」をすることが重要なのです。 その方法は、
○社長が社員とコミュニケーションを厚くする
→不況のため、社長が現場に出たり、金策に走ったりして忙しい
→社員とのコミュニケーションが薄くなる
→問題が起こりやすくなる
○形式上も、雇用契約や就業規則などに記載する
→形式は争いになった場合、非常に重要です。
ということです。
つまり、「本質」と「形式」からのアプローチです。もちろん、本質が重要なことは 言うまでもありません。社員が問題を起こせば、社長は「本来の業務以外」に時間を取 られます。この時代にそれは大きなデメリットとなります。
もっと言えば、社員は仕事だけの関係でなく、人生を共に過ごす仲間です。だからこそ、日頃からの「社長の対応、形式の整備」が重要なのです。
何度も申し上げていますが、事前対策が何よりも大切です。問題が起きないよう、必ず実行して下さい。その方法論が分からない方は、マニュアルをご購入頂くか、有料相談をご利用下さい。私のところにご相談にいらっしゃる社長さんの多くが、「あの時、 ああすれば、良かった・・・・・・」とおっしゃいます。必ず「事前対策」をして下さい。
ライター紹介
内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)
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