自動車整備士・整備工場の労務相談室
せいび界2011年10月号Web記事
Q.通勤定期代を高い経路で請求してきたら?
先日、中途採用で社員を雇ったが、通勤定期代の請求を見てびっくり! 通勤時間は短いものの高い経路で申請してきた。聞けば、前の会社ではそれが当たり前だったという。この場合、申請した金額を通勤手当として認めなければならないのか?
A.
一般的に通勤手当は定期代を「目安」にします。「目安」とわざわざ強調したのは、通勤手当の計算方法が労働法で決まっていないからです。法律に決まりがないのであれば、会社がルールを作ればOKです。つまり、「会社のルール=就業規則」です。
ですから、ご質問の事例の場合は、
「通勤経路は合理的、かつ、経済的な通勤経路を会社が指定するものとする」
と就業規則に書けばOKなのです。
そうすれば、「一番安い経路で通勤してください」と命令できるのです。そして、その定期代を通勤手当として支払えばいいのです。さらに詳しく見ていきましょう。
社員は「金額」や「距離」に関係なく、
○通勤時間が一番短い経路
○混み具合などが一番楽な経路
を選択しがちです。
しかし、これは「合理的、かつ、経済的」という要件を満たしません。なぜならば、その要件を記載した就業規則があるからです。
逆に就業規則がなければ、グレーゾーンになってしまいます。決めるだけで、白黒はっきりすることをグレーにする必要はないですね。たったこれだけのことでも、大きな意味を持つのです。
いかがでしょうか? 就業規則には、法的に記載すべきことがきまっています。それは、
○始業時間、終業時間
○給与、賞与等、退職金
○退職、解雇
○食費や作業用品等で社員が負担する金額
○安全衛生
○災害補償
などです。
しかし、これら以外は会社が独自に決められます。これは、「社長の考え」で作成すればいいのです。就業規則は、
○法律で決められたこと
○会社が独自で決められること
の2つの内容があるのです。
当然、法律で決まっていることは実行しなければなりません。ただし、会社が自由に決められる範囲も広いのです。しかし、多くの経営者は、この違いを分かっていません。今回をきっかけによくご理解ください。
Q.パート社員に社会保険の加入をさせないといけない?
わが社ではパート社員を社会保険に加入させていない。それが常識であり、経費節減にもなると考えていたからだ。しかし、同業者で、パート社員を社会保険に加入させている会社があった。正社員もパート社員も法律では区別がないからというのが理由だそうだ。パート社員も社会保険に加入させなければいけないのか?
A.
「パート社員は社会保険に入らなくていい」、これは大きな間違いです。法律では正社員もパート社員も区別はありません。しかし、パート社員のほとんどは加入していません。
実は、働く時間によって、加入させる義務があるのです。具体的には、正社員の1週間の労働時間の約4分の3が基準になります。この基準を超えて働くパート社員は加入させる義務があるのです。
例えば、正社員の1週間の労働時間が40時間としましょう。この場合、週30時間働いているパート社員は加入の義務があるのです。
しかし、パート社員は夫の社会保険の扶養に入っている可能性が高いです。ただ、働く時間が増えると、妻自身にも加入の義務が生じるのです。だから、扶養の範囲を外れないようにしてあげないといけません。
このような場合、労働時間を考えて、パート社員のシフトを考えましょう。そうすれば、社会保険に加入しなくてもいいのです。
社会保険に入らなければ……
○パート社員の手取りが減らない
○会社負担の社会保険料が発生しない
となります。
多くの会社で誤解がある部分なので、改めてご確認ください。パート社員も一定の労働時間を超えると、保険の加入義務が生じるのです。当然、これは社会保険事務所の調査でも問題になりますので、ご注意ください。
ライター紹介
内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)