自動車整備士・整備工場の労務相談室
せいび界2011年9月号Web記事
Q、社員が突然金髪に・・・注意したいが
最近、若手の社員が金髪にして出勤してきた。注意したいのだが、管理職も白髪染めで黒く染めている。この場合、どう対応したらいいか?
A.
髪型、髪の色に対する価値観は時代によって違います。たしかに、現代は髪型、髪の色は自由という風潮です。「髪の色が茶色 = 不快」という価値観ばかりではありません。
しかし、仕事の内容により、不快になる場合もあるのです。例えば、金融機関、教育産業などの場合です。このような場合、「髪型、髪の色、服装」などの制限を設けている場合が多いのです。
具体的には、「就業規則、雇用契約書などで身なり、服装などを制限する」ということです。こういう公的な規則にすれば、
○業務命令として、改善を命令できる
○従わなければ、懲戒処分の対象にできる
ということです。
ただし、これだけでは十分ではありません。実際、下記の判決があります。
<東谷山家事件 福岡地裁 平成9年12月>
これは、
○社員が髪の色を黄色にした
○会社は注意し、始末書を出すように指示
○始末書を出さないので、解雇
という流れです。
だから、髪の色が「企業秩序に反するか?」という争点です。結果、この解雇は無効となりました。つまり、社員が勝ったのです。
判決では、
○髪の色は「どの程度の色までがOKか」が明らかではない
○髪の色で企業秩序に反していない
ということでした。
ここは雑則ですが、この会社の就業規則には「髪の色に関する記載」がなかったと思われます。もしあれば、判決は逆だったかもしれませんね。
この判決からも分かるように、身なり、服装は「具体的に」表現する必要があります。極端な例を挙げれば、「髪の色の明度」で基準を作っている会社もあります。これはちょっと極端ですが、実例なのです。
しかし、多くの会社では曖昧になり過ぎています。ガイドライン的な基準もありません。だから、多くの会社では、上司の個人判断で指導しているのです。ただし、個人判断は個人の価値観が大きく影響します。その結果、判断にばらつきが出る可能性もあります。A部長なら「OK」、B部長なら「ダメ」ということが起きるのです。
すると、社員に不満が溜まります。その結果、トラブルに発展する可能性があるのです。だから、最低でもガイドラインを作る必要があります。例えば、就業規則などに「身なりなどのガイドライン」を書くのです。「そこまでは……」という場合は、「社員ガイドブック」の作成でもOKです。ここに身なりなどのガイドラインを書きましょう。
「社員ガイドブック」は会社生活のマニュアルです。社内での疑問点などを正面から捉え、範囲を記載し、問題の解消にするのです。
ガイドブックには、身なりなど以外にも、
○有給休暇の取り方
○福利厚生の使い方
○仕事上でケガをした時の対応方法
○子供が生まれた時の報告
○介護が必要な時の報告
などを書くのです。
これがあれば、疑問点が出ても、「ガイドブックに書いてあるよ」の一言で済むのです。これを作ることは手間がかかります。しかし、一度作れば「社長のもやもや」が解消されます。
いかがでしょうか? いつの時代も、社長と若手社員の価値観がずれることはよくあります。これを解消するために、最低限の対策は行うべきなのです。
次は、営業中のマイカーでの事故について責任は?
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