社会保険労務士内海正人の
自動車整備工場の労務相談室
質問、パート社員用の就業規則がなかったら
社員の頑張りにより、先日、久々に賞与を支給することができた。しかし、正社員に対してのみ支給したところ、あるパート社員より「就業規則には正社員もパート社員も区別がないので、パート社員に賞与を支給しないのは違法だ」と指摘されてしまった。これは本当に違法なのだろうか?
回答、
すかいらーく、ユニクロなどのサービス業、日本郵政が非正規社員※を正社員にする動きが報道されています。
※アルバイト、パート社員など
そのせいでしょうか、非正規社員と正社員の線引きがより注目されており、企業規模を問わず、非正規社員と正社員との違いについてのご質問を頂くことが多くなりました。例えば、「給料は、時給にしなくてはいけないのか?」「ボーナスを支給しなくてはならないのか?」「退職金を支給したいが、問題ないか?」などがありました。
これらのご質問は会社でルール等を決めれば、可能です。パート社員でも時給でなく、日給や月給でもOKですし、ボーナスや退職金制度を設けてもよいのです。
法律では、非正規社員と正社員は「短時間労働者と労働者」という区分がされているだけで、これは単に働く時間が短いか長いかの違いだけです。
ですから、これらの身分の違いにより待遇に違いを出したい場合は、就業規則等で定めて運用する必要があるのですが、多くの会社では「パート社員用の就業規則」を作成していないのが現状です。
しかし、パート社員用の就業規則が無いと、その違いは「無い」となり、パート社員も正社員も同じ待遇である、となってしまうのです。これに関する判例を紹介いたします。
<日本ビクター事件>
横浜地裁 昭和41年5月27日
臨時工であるが更新により長期に亘って雇用されている従業員がいました。ある日、突然30日分の平均賃金を支払われ、勇退扱いとされてしまいました。この臨時工は、会社の扱いが不当であったとして訴訟を起こしました。
裁判所の判断
臨時工に関する就業規則はなく、臨時工ではあっても、更新により長期間の雇用関係が継続していたことから、常用工(=正社員)に対する取り扱いと同様にすべきであると判断し、従業員側が勝訴しました。
結果として、正社員の就業規則を臨時工にも準用すると判断されたのです。
また、他にも似た判例があります。