Q2.無能社員の解雇はできる?
わが社の営業部門は一人一人の能力は高いものの、期待しているほどに実績が上がっていない。そこで、人材紹介会社から部長候補を雇ったのだが、3ヶ月経っても数字が上がらず、管理もできず、人望もないことが判明。なるべく早く解雇したいがどうしたらいいか?
A.
製造業での派遣切り、リストラなどが社会問題になる中、人材紹介会社から多くの社員を採用している会社もあります。
しかし、
○人材紹介会社には「採用したい人物像、条件」を事前に伝えていた
○面接でも大丈夫そうだったので採用した
○でも、実際に働かせたら、仕事ができなかった
というケースもよくあります。
こういうケースでは、「早く解雇する → 紹介会社からの返還が多くなる」ため、早めに解雇したいという訳です。今回のご質問の場合、「能力不足を理由に解雇できるか」がポイントとなります。実際に「解雇は有効」と判断された判例を見てみましょう。
<フォード自動車事件 昭和59年3月 東京高裁>
人事本部長のポストとして、中途採用された
仕事ができないため、解雇した
そして、裁判になり、
○解雇は有効
○降格、配置換えの必要もなし
という結果になりました。
この社員は、
○特定の能力
○特定の経験
○特定の地位
を前提に採用されています。
だから、
○高額の年俸
○期待する成果
が雇用契約の条件となっているのです。
ということは、「成果を出せない = 契約違反」となるのです。つまり、「債務不履行」になっているのです。だから、「債務不履行による契約解除 = 解雇は有効」なのです。
ただし、これが成立するためには、雇用契約書に次の項目が明記されていなければいけません。
○採用するポスト(例:部長、本部長)
○用意している待遇(例:年俸、福利厚生など)
○期待する成果(例:売上など)
などです。
さらに具体的に数値化できるものは、
○期待する数値目標
○目標達成の期日
を明記しておくことが大切です。
人材紹介の紹介料は会社にとって、大きな負担となります。だからこそ、ダメな場合には早めの解雇が必要です。その方が返還される金額も大きくなりますよね。
また、「紹介 → 解雇」を繰り返しては、
○お金が無駄になる
○社内の雰囲気も悪くなる
のです。
ただ、「必要のない人の解雇」を決断できなければ、
○ずっと高い年俸が負担になる
○もっと社内の雰囲気が悪くなる
のです。
だからこそ、人材紹介を受ける場合(特に、管理職)には、雇用契約書の記載事項に注意が必要です。もちろん、これは管理職でも一般社員でも同じです。しかし、これには不備がある場合が多いのです。
実際、労働基準監督署にかけ込まれた事例でも、雇用契約書の不備が落とし穴になってしまったことも多いのです。
また、労働基準監督署の相談件数も増えています。
○平成17年度 → 907,869件
○平成18年度 → 946,012件
○平成19年度 → 995,061件
こんな状況なのに、その不備が放置されたままの会社もあります。「小さなミス」が「大きな落とし穴」にならないよう、市販のひな型を使うもよし、雇用契約書を作成するサービスを利用するもよし。今一度、雇用契約書の見直しをしましょう。
ライター紹介
内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)
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