自動車整備士・整備工場の労務相談室
せいび界2011年8月号Web記事
Q、無断欠勤・無断遅刻の社員は解雇できる?
ある社員が無断で遅刻や欠勤を繰り返し、困っている。注意をするとしばらくはよくなるものの、時間が経つとまた繰り返す。遅刻を理由に解雇できないだろうか?
A.
結論から申し上げますと、解雇「できる場合」と「できない場合」があるということです。働く時間や休日は就業規則などで決められています。だから、無断での遅刻、欠勤にはペナルティーが課せられます。
ただし、いきなり「解雇」にはできません。会社のルールを決めないと、解雇できないのです。だからといって、「ルールがあればOK」というものでもありません。具体的に考えてみましょう。
遅刻、欠勤を理由に解雇する場合、
無断遅刻、欠勤の内容、理由の確認
処分の決定
などの手順を踏む必要があります。
そして、この処分は程度に応じて決める必要があります。
具体的には、「軽い処分」→「重い処分」→「解雇」という流れです。
もちろん、解雇する場合は「正当な理由」が必要です。これに関する理由で興味深い判決をご紹介しましょう。
<高知放送事件 昭和52年1月 最高裁>
あるアナウンサーが遅刻して、「2回だけ」番組に穴を空けました。そして、解雇されました。これが裁判になり、「最高裁まで行った」のです。
すごいですね……。
結果は「解雇は重過ぎる」という判決でした。「解雇の理由」と「処分の重さ」のバランスが悪いので、「解雇は無効」となったのです。
<東京海上火災保険事件 平成12年7月 東京地裁>
ある社員は何度も遅刻を繰り返していました。注意しても改善されません。当然、他の社員からも不満が出ました。そして、会社は解雇し、本人が裁判を起こしました。結果は「解雇は有効」となったのです。「注意し続けたのに改善されなかった」がポイントとなったのです。
この2つの判決から考えられるのは、「解雇の理由」と「処分の重さ」のバランスです。
○軽い理由なのに、処分が重い → 解雇は無効
○軽い理由でも繰り返される → 解雇は有効
ということです。
この2つの事例は判決という形で結論が出ました。しかし、すべてのトラブルを裁判にするのは現実的ではありません。裁判は「お金」、「時間」、「労力」を消耗します。だから、できるだけ避けた方がいいのです。
そのために会社が行うことは次のポイントです。
○遅刻、欠勤などの管理のルール化(就業規則など)
→ 例:遅刻3回で1時間の欠勤とする
○ルール違反でも合理的な理由があるかどうか
→ 合理的理由と怠慢では取扱いを変える
○無断遅刻、無断欠勤の証拠を残す(裁判などに備える)
→ タイムカードの保存
遅刻や欠勤の届出書、反省文の保存
いきなり「解雇」ではなく「指導 → 段階的処分」とする
→ 態度を改める「指導」をする
段階的処分とは「口頭注意 → 始末書 → 減給 → 自宅待機 → 解雇」など
これらを実行してください。仮にトラブルが大きくなり、裁判になっても、以上のポイントを押さえていれば問題ありません。
無断遅刻、欠勤でも解雇できる場合もあります。しかし、そのためには「ルールの整備」と「指導」が必須です。これをしないと、解雇が無効になる場合もあるのです。
次は、無能な社員を解雇するには・・・
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