自動車整備士・整備工場の労務相談室
せいび界2011年5月号Web記事
Q、うつ病の社員を解雇できる?
ある社員を見ているとどうも様子がおかしく、病院に行くことを勧めると、うつ病であることが判明した。うつ病は対処の仕方に気を遣うことは知識として知っているので、こちらも業務に追われて気遣う余裕がない。できることなら解雇したいし、そこまでいかなくても休ませたい。具体的な対処方法を教えていただきたい。
A、うつ病をはじめとした心の病は年々増えており、うつ病による労災申請も5年前の約3倍になっています。
実際に私の所にも、
○社員がうつ病になったら、休ませてもOKなのか?
○解雇できるのか?
○具体的な対処方法は?
などのご質問がよくあります。
まず、うつ病などを理由に解雇することはできません。これは体の病気であれ、心の病気であれ、同じです。つまり、「病気は解雇理由にならない」のです。ですから、休ませることをベースに対処法を考える必要があります。
しかし、実際には解雇になる場合もあります。それは病気が理由ではなく、「働くことが続けられないから」です。 例えば、就業規則の解雇理由に、「精神または身体の故障のため、引き続き業務ができない時」と記載されていたとします。この場合は、「業務の継続不可=解雇OK」なのです。
ただし、現実として、その判定が微妙なこともよくあります。実際、私が見た医師の診断書にも「うつ症状」、「気分障害」と記載されていました。つまり、具体的な病名を特定しきれないことがあるのです。だから、会社側は就業規則に記載されている「精神の故障」を証明することが難しいのです。
そのため、会社は病名を特定するために、産業医などに診断を依頼する場合があります。多くの産業医などは内科や外科の医師である場合もあるので、「心の病」は専門外だからです。もちろん、病名はともかく、業務が滞っていれば解雇はOKです。
しかし、この場合は証拠集めが必要です。ただし、病名が特定できないことも多いため、「心の病気であることが証拠になりにくい」のです。たから、「業務が滞っている事実、データ」を記録として残す必要があります。これが証拠となって、「法的に解雇OK」となる場合もあるでしょう。
さらに、こんな方法もあります。それは、
①心の病が原因らしく、業務が滞る
②一旦、休職させる(就業規則に休職期間の定めがある)
③休職期間が終了しても、復帰できない
④復帰できないなら、解雇OK
という場合です。
この旨を就業規則に書いておくのです。つまり、「休職期間を定め、復職できなければ解雇OK」と記載するのです。これを定めてあれば、法的に問題ありません。例えば、「休職期間を6ヶ月」とします。なお、この期間は会社が自由に決められます。そして、6ヶ月後に復帰できなければ、解雇OKということです。
それから、就業規則には次のこと「も」盛り込む必要があります。それは、
○同じ理由で休職させる場合、前後の期間を通算する
→再発時の対応を木目、休職を繰り返すことを防止する
○休職期間は勤続年数に含めない
→退職金等の計算に影響するが、休職期間を勤続年数に含めてもOK
○休職期間中は無給とする
→この期間の給与の支払いを明確にする
などです。
大原則が定めてあっても、こういう細かい部分が抜けていると、結果として問題が大きくなってしまうのです。
「心の病」は治る病気ですが、再発が多いことも事実です。また、休職の倍は、お金の問題等も絡んできます。だから、ここまで盛り込む必要があるのです。しかし、「ウチの会社は大丈夫」と考えている人が多いのもまた事実です。
「危機が目の前に来ないと、人間は行動しない」のです。だから、何かあった場合には大きな問題になるのです。特に、「心の病=即解雇」とはできません。大切なことは「休職の規定とリンクさせて対応する」ということです。
次は、余剰人員になった場合の解雇について・・・
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