急病で欠勤した場合の取扱はどうするべき?
自動車整備工場経営の労務についてポイントを質問形式でご紹介
内海正人先生の労務相談室 せいび界2011年4月号Web記事
Q、急病の欠勤は有給として取扱するべきか?
先日、社員が急病で会社を休んだ。欠勤扱いとして処理しようとしていたところ、その社員が後付けで有給休暇の申請をしてきた。病気とはいえ、急に休んだのだから有給休暇としては認められない、と突っぱねたのだが、それでは違法だと言われた。有給休暇として認めなければならないのだろうか?
A、労働基準法39条の「有給休暇の取扱い」を見てみましょう。この中では、
○社員は自由に有給休暇を取ることができる
○忙しい時「など」は認めなくてもOK(会社は取る日の変更を指示できる)
○有給休暇は事前申請が必要
となっています。
ということは、「事前申請が無い=有給休暇を認めなくてもOK」なのです。では、認めないことは適法なのでしょうか?
多くの会社では「事前申請が無い=有給休暇を認めない」ではなく、急病という事情を考えて、有給休暇を充当しています。ただし、これは会社が弾力的に運用しているだけなのです。
結果として、今回の件は「違法ではない」ということになります。
例えば、こんな判例があります。
<東京貯金事務センター事件 平成5年3月 東京地裁>
○電車遅延で遅刻
○「遅刻に有給休暇を充当してほしい」と申請
○会社は認めなかった
そして、裁判所は「違法ではない」との判断をしました。病気であろうが、電車の遅延であろうが、事後申請で有給休暇の充当を認めるかどうかは「会社の自由」なのです。ただし、違法となるケースもあるので、注意が必要です。
それは「会社が事後申請による有給休暇の消化を日常的に認めている場合」です。つまり、「慣行」になっている場合です。むしろ、こういう会社の方が多いですよね。多くの会社では「急病など=有給休暇の消化」としています。もちろん、急病などは仕方がないことです。常識的にも、有給休暇の消化は妥当です。
しかし、社員がこれを悪用して有給休暇を取ろうとした場合は、
○法的に充当しなくてもOK
○「急病など=有給休暇の消化」は社員の権利ではない
と伝え、毅然とした態度で臨みましょう。
こういうことをなあなあにしていると、社内の雰囲気が乱れます。結果、組織の様々な部分にほころびが出るのです。ほころびの最初は「ほんの小さなきっかけ」なのです。だから社員が急に休んだり、遅刻したりすることが増えてきたら、注意をすべきなのです。
「雪が降っても自分の責任」、これはチャリティーセミナーの講師でもある浜口隆則さんの会社のクレド(簡単に言えば、社是)です。もちろん、労働基準法や就業規則も大切です。しかし、本当に大切なのは、
○経営者の心
○社員の心
です。
今の時代だからこそ、「心の芯」がある会社と無い会社では大きく違います。それによって、5年後には全く違う結果になっているでしょう。
次は会社の出向命令に社員は従うべきか・・・
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