Q、外回りの営業に残業代は必要?
当社は車の引き取りを営業活動と位置付けて、外回りということもあって「営業員には残業代は出しません」と決めて通知している。しかし、ある同業者からのアドバイスで「営業員に残業代を払わないのは法律違反になる。至急改善した方がいい」と言われた。本当のところはどうか教えてほしい。
A、
「営業マンには営業手当を支払えば、残業代を払わなくてもOK」、こう勘違いしている社長さんはたくさんいらっしゃいます。もちろん、営業手当があっても、残業代は発生します。しかし、営業手当を支払えば、残業代を払わなくてもいい場合もあるのです。
例えば、こんな判例があります。
<関西ソニー事件 大阪地裁 昭和63年10月>
○営業マンには営業手当を支給していた
○残業代、休日手当等は支給していない
○営業マンは残業代などの支払いを求めて、裁判を起こした
そして、裁判所の判決は、
○「営業手当 > 法律上の残業代」となっている
○違法ではない
としたのです。
だから、
○営業手当 > 法律上の残業代
または、
○営業手当 = 法律上の残業代
ならば、残業代0でもいいのです。
しかし、「この条件を満たしている = すべてOK」ではありません。なぜならば、「営業手当に何が含まれるか」が明確になっていないからです。
例えば、営業手当には、
○休日手当
○残業代のうち、深夜残業の分
なども含むのか、含まないのかということです。
具体的に、下記の条件で考えてみましょう。
○営業手当 4万円(休日出勤1日分1万円を含む)
→実質的な営業手当は3万円
○法律上の残業代 4万円
この場合、「残業代相当の営業手当3万円 < 法的な残業代4万円」となっているのです。だから、この場合は営業手当の他に1万円を支払わないと、法律違反になるのです。
具体的には、営業手当に下記の項目が含まれているかどうかを就業規則、雇用契約書等で明確にします。
○残業代
○残業代のうち深夜残業の分
○休日手当
そして、「営業手当 < 法的な残業代」となった場合の精算方法も決めておくのです。こうしておけば、誤解が生まれる可能性は小さくなります。残業代をいちいち計算することは手間がかかります。
また、営業マンの場合は、「どこからどこまでが残業か」ということが不明確の場合もあります。だから、「定額の営業手当 = 残業代」としている会社が多いのです。しかし、細かくみると、このような盲点があるのです。細かいかもしれませんが、法的には「かなり重要な項目」です。
ライター紹介
内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)
- 1
- 2